見出し画像

MBSDDM補講① リキッド、ブランド、シミュレーショニズム

「リキッドとブランドの関係をどう考えますか?」

2020AWの最終日に質問を受けて、そもそも「リキッド消費」なるものをきちんと勉強したことなく、よく答えられず、どっかで気になっていたのだが、一旦分かったような気になったので、まとめてみる。

まずは、「デジタル社会におけるブランド戦略」↓を読んでみた。

「暖かくなったので、お洒落して、お出かけしたい」

しばらくそのままほっておいたが、暖気とともに、「この気持ち」を掴めたことで、絡まった結び目がほぐれてきた。

画像1

これ↑が、その気持ちの結果(表出)である。この写真のイコノロジー的説明は後述する。これは、D2C(ダイレクトツーコンシューマー)、コミュニティ、ブランドをめぐるテーマである。

ブランド的消費の現在

コロナ禍を約一年生活してみた今の気分。ハイブランド志向の消滅。リアルさの渇望。与えられた価値への感謝。緊急事態下で絞られた特定の消費活動への帰属感。生産(労務)活動は、参加所属型へ。

モノから、コト(意味)、トキ(ターゲティング)、そして、ヒト(つながり)へ。

個人情報が分散管理される時代では、ヒトとヒト、ヒトとモノ、モノとモノとの交信履歴(縁起)のマッチング・アルゴリズムによって、ビジネスモデルが創られる。それは消費の文脈では、「ブランドコミュニティ」として認識される。デジタル技術の分散化バイアスによって、消費者を分断、孤立化させるのではなく、消費(価値交換)により、ヒトを「連帯」させる方向に向かわせるのが、ブランド「パーパス」の役割である。

また、リキッド消費(動物化)を肯定し、「消費者にとって買いやすさ」×「生活の中に溶け込む」の打ち手は、サービスデザインの思想とも呼応する。「心地よい取引」に、離反することを忘れてしまう「心地よい関係」という武器。以下「デジタル社会におけるブランド戦略」より引用する。

裾野を広げる戦略とは,リキッド消費におけるブラン ド・スイッチング傾向の高さを肯定的に捉えたうえで, 消費者にとって買いやすい状態を提供し,より多くの消費者を自社ブランドのユーザーとして獲得しようとする ものであった。生活の中に溶け込む戦略とは,相互作用 を通じて消費者に関する理解を深め,パーソナライズさ れた対応を提供することで,消費者の生活になじみ,一 体化していこうとするものであった。したがって,裾野 を広げる戦略が「心地よい取引」を武器として,より広 い範囲から顧客を獲得しようとする「幅」の戦略である のに対して,生活の中に溶け込む戦略は,離反すること を忘れてしまう「心地よい関係」を武器として,顧客と の関係を深化させていく「深さ」の戦略である。

「お洒落」と「ブランド」

前掲のスナップ写真に戻る。イコノロジー(iconology)とは、図像を記述・解釈する技術であり、図像を生み出した社会や文化全体と関連づけて解釈するために発展した研究手法である。ブランディング/サービスデザインの手法である「ムードボード」の原型でもある。ここでは次の二つのブランド(識別子)に注目する。

鎌倉ブランド。ドレープな素材。ユニセックス。ブラックネス。80年代にISSEY MIYAKEが出てきた衝撃を思いだす。でも、全てがリアル(タイム)な感じ。知り合いが薦めてくれ、コレクションを購入(アーティストの表現がどう変わっていくかを長年追っかけ、気に入れば作品を買う感覚に近い)

"WORLD PEACE 2020" が刺繍された帽子。開店してまだ数年だが、すでに僕の中では、故郷の町を愛する理由のひとつにまで、ブランド化してるコーヒーショップ。しかも、イーストエンドロンドンのエクペリエンタル・アンダーグランドシーンとつながっている感じがするのが、また良い。マーチャンダイズは献金の気分。DACへの思いについては↓

好きなものを好きなように組み合わせる。これが「お洒落」の価値である。ここでは、上記のD2C的なアーシー・ブランド(ニューエイジとサービスデザインを通過した後のブランド群)に、ザラ、ユニクロ、アリババ(で買ったモノ)といった、マス系ブランドを組み合わせている。これらをTPOとかトレンドとかの「意味性」からできるだけニュートラルに配置しようとすると、多様性とか包括化してる気分で、権力性からフリーな感じが、心地よい。ただし、同時に、これまで以上に、奇想、奇抜へと、引き寄せられる。同じような話を前に聞いたことがあったなと思ったら、学部の時にはまったく理解できなかった美術史の授業

ここから、秩序と運動の矛盾を超越するための大胆な試みが始まる。後年、極めて不完全な丸さを持つ真珠、転じて悪ふざけの意味から「バロック」と称される芸術活動の当事者達は、自らをギリシャ・ローマレペゼンの「古典主義者」と、考えていたらしい。破壊と変容の時代の、移ろい行く相のもとで、その一日の花を摘む(“CARPE DIEM”な)感性が育まれる。

過去のさまざまな素材がアーカイブ化され、機械(AI)によって交換価値の最適化される社会がやって来る。サンプリング素材とn次制作で覆い尽くされ、リキッド(液状)化した世界で、「ブランド」は、本歌取りのような創造と流通の場における「連帯」のシンボル(真珠)として、再生することとなるだろう。

データドリブンでネーバーエンディングなラーニングのために


来年度は、4半期フォーマット(週2コマ連続、3か月)への移行実験をします。講義(6限)ー実習(7限)だと、取り扱うテーマ数は半分。テーマの選定、理解深化ためのコンテンツ、実習用フレームワーク、授業内外インタラクション手法の整備開発が必要。講義(6限)+自習時間(7限)で講義テーマを掴むためのBGM提供という案。これなら4半期2回どころか4回やっても良いと思いつつ、少なくともWSらしい体裁はつくらないと洒落にならないので、そこは継続検討。例えばこの補講だとこんな感じ↓

内容としては、「B2Bデータドリブンマーケティング」について実務者を招いて日本企業向けに理論的な整理をするタイミングだと思ったり、「社会性と事業性を両立するデジタル技術適用」を主語に、マーケティング(イノベーション)の社会的機能を考えてみたいとも思っています。

またテーマの進捗があったら、アップデートします。

 山之口 援

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?