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4.会社の課題と、その優先順位を定期的にトップと議論し、必要に応じて自らも課題に着手する

こんにちは。

引き続き企業における参謀 = 経営企画職について、そもそも何が使命なのか、どのような観点を持つべきか、有すべき資質は何か・・・などなどを戦略参謀の仕事をベースに考えていきます。

前回の記事はコチラ

前節は、「なぜフワフワした空中戦の議論がはびこるのか」「空中戦の議論を地上戦に持ち込むにはどうすべきか」というお話でした。

今回は、経営企画職につきものの経営層とのディスカッションについての議論です。経営企画が、「机の上で数字をいじくるだけ」ではないことが非常に丁寧に説明されています。

2週間に1回程度は、全社視点の課題についてトップと確認を行う

トップの業務を補完する立場にある参謀役は、トップと同じ経営目線を持ったうえで、かつトップよりも生々しい実務上の問題を把握できます。
当時のミノルタも、今後、間違いなく現れる二番手の競合を想定した対抗策を事前に検討し、準備ができていれば、カメラブランドとして消滅するまでの事態は避けられたでしょう。トップの意思決定を補完すべく動く「参謀」役が、残念ながら機能していなかったと考えられる事例です。

中にはフランクに現場に入り込み、誰よりも実際の課題や状況を把握しているトップもいるかもしれません。しかし、大体の場合は「わかっているようでわかっていない」という状況です。

実務者の視点で考えると、「社長に時間を取ってもらうなんて恐れ多すぎる」と思ってしまうものです。いくら「うちの会社はフランクですよ」「社長室のドアはいつでも開け放ってますよ」と主張したところで、「いやいや、そんな気軽に話せるわけねーだろ」というのが本音のところです。

よって、事業に関して重要そうな変化や、すぐにでも全社で何とかしなければいけない課題があったとしても、事業部レベルでとどめるか、良くてもお化粧をしたうえで経営会議のアジェンダに載せる程度になり、手触り感のある情報は上まで届きません。

そのようなときに、「社長にはなかなか言えないけど、この人に相談してみよう」という立場になるのが参謀役である経営企画職です。逆に、「コイツに言っても何も変わらないし、現場のことが分からないのに上から目線でいろいろ言ってきてウザい」と思われてしまうと、機能不全に陥ってしまいます。

共有して議論すべき内容は、例えば、
・現時点での上位課題の重要性、緊急度合いなどの優先順位(A、B、Cなど)付け
・その見直し、変更とその理由の明確化
・現状対応中の課題の進捗状況
・新たに浮かび上がってきた課題と、その緊急性
・まだ潜在的な課題ではあるが、中長期的に対応が必要なテーマ
などになります。これらを議論していくと、社長と参謀役の間だけでも、これだけ課題への意識やとらえ方に差があるのかと思うくらい、頭の中にあるイメージが違うことに驚かされるものです。

上記で挙げられているようなトピックをトップと話し合うときに大事なことは、タイトルにもあるように「必要に応じて自らも課題に着手する」ことだと考えています。

人から聞いた情報はあくまでも「二次情報」に過ぎず、何らかの思惑や誤解が入り込む可能性が高いです。もちろんすべての現場にハンズオンで入り込むことは現実的ではありませんが、特に重要でなかなか進捗しておらず、しかもその理由もよくわからないようなケースは、事業部長のサポートもしくは自らプロジェクトリーダーとなって入り込んでいき、事実の把握と改善を推し進める必要があります。

これを実施するメリットは、「トップと話し合うときにリアルな情報を伝え、適切な経営判断をしやすくなる」ということですが、それに加えて「事業側の人たちから信頼を得て、その後の情報収集や別プロジェクトの推進がやりやすくなる」というメリットもあります。「トップの威を借るキツネ」から抜け出すためにも、特に事業側が困っているときは腕まくりをして入っていくことが必要です。

社長には自分よりも優秀な参謀を使える器量を持つことが求められる

社長は、自分よりも優秀な「参謀」を使える器量を持つことが本来必要ですが、まずは、まっとうな「参謀」役と一体化した経営体制が、トップ自身のパフォーマンス向上にもっとも有効であることに気が付いてもらうことが何より重要です。
「参謀」役が、社長の頭の中にどこまでも踏み込んでいく必要はありません。しかし、社長というものは、事業が発展するにつれ、社会や社員への影響力が増え、より公的な存在にならざるを得なくなってくるのも事実です。その際に、社長の判断の精度を上げ、その判断を「理」にかなった説明可能な状態にしていくために、トップと共に頭をひねって課題を鮮明なものにし、取り組むのが「参謀」役です。

経営企画職という仕事をやるときに大事なのは、トップとの関係性および経営企画職の重要性を深く理解してもらうことだと感じています。もし彼/彼女が「ただの資料作成マシーン」「事業部へのリマインド役」としてしか考えていない場合、まずその認識を改めてもらうところから始める必要があります。でないと、本来は全社的視点でいろいろなことを考えられる立場なのに、事業側から疎まれ続けるただの資料作成マシーンになります。それだとその先のキャリアも狭まりますし、ずっと「こんなはずでは・・・」と思いながらルーティンワークをこなすハメに陥ってしまいます。

これは経営企画職として他社に転職するときにも重要な視点です。なぜこの会社は今のタイミングで経営企画職を欲しているのか?どのようなRole & Responsibilityがあるのか?それは口だけではなく、心から思っていることなのか?

「経営企画」という名前に踊らされることなく、その職責がいったいどのようなものか、可能な限り明確にしないと、せっかくのチャンスを棒に振ることになるので、注意が必要ですね。

働き始める前に自らのRole & Responsibilityを明確にする、というのはもちろんどの職種でも重要なのですが、経営企画職は定義が会社ごとに違うケースが多いため、特に慎重になる必要があるなあと思います。また、経営企画職は「コレ!」といった専門性に繋がりづらい職種でもあるため、現状把握→課題明確化→施策立案&実施→定量的な結果・・・というサイクルを回し続け、「この人がいてくれると、こんな変化が起こるんだな」というストーリーを語れるようにすることも重要です。

次回は、戦略参謀の仕事の第一章5節の「首根っこを押さえつけてでも、事実をもとにトップと現実の認識を共有する」というテーマをベースに考えていきます。良ければそちらもお読みください!

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