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1.企業における「参謀」の役割 - 事業/経営目線の課題対応

こんにちは。

ぼくはコンサルティング会社にトータルで約8年半、その後スタートアップに転職して約1年2ヶ月というキャリアを積んでいます。

今後どうなるかはわかりませんが、「今このときにやるべきことに集中し、楽しみ、自分の血肉とする」というのを基本的なスタンスとしています。そこで、今の「経営企画」という仕事について、キチンと先人の知恵を活かしていきたいと思いました。

経営企画という職種に関しては、実は書籍はあまり多くありません。事業再生やコンサルティングプロジェクトの説明をしているものが近いでしょうか。その中でも、ぼくは稲田将人さんの一連の書籍が非常に好きです。非常に興味深く読め、かつとても実践的です。

戦略参謀

経営参謀

経営トップの仕事

戦略参謀の仕事

PDCAプロフェッショナル

この中でも、特に「戦略参謀の仕事」はエッセンスがギュッと詰まっており、非常に勉強になります。この本を読みながら考えたこと、感じたことを日々の業務と紐づけて説明していければと思います。

「経営企画ってどんなことをするの?」「興味はあるけど、面白いの?」「自分に向いてるかな?」などなどの疑問をお持ちの方には、楽しく読んでいただけるのではないかと思います。

戦略立案や問題解決が仕事?

企業の参謀役に求められるものとは、何でしょうか?
おそらく多くの読者の皆さんが想像されるのは、問題解決力、戦略思考力、事業構想力などの戦略立案や問題解決に関する能力ではないかと思います。確かに参謀役を、プラニング専任のための役割と位置付けるならばその通りなのですが、現実の企業や組織の参謀役には、それら以外の重要な役割と能力が求められます。

参謀というと、三国志でいうところの諸葛亮的な立ち位置を想像します。事前に兵を配置し、敵の出方を読み、ワナを張り、自軍を勝利に導く・・・それが「参謀」のイメージでしょう。ただ、ここで稲田さんが書いているようにそれはあくまでもごく一部で、他にも重要なことはあるよなー、と感じます。

「経営企画 = 参謀 = 計画立案だけ」という定義で仕事にまい進している方もいるかもしれませんが、各事業部から上がってくる数字を取りまとめたり、二次情報から現場感のないゴール設定をするだけだと、目に見える成果を出すことは難しいのではないかと思います。

企業の規模が大きくなってくると、経営企画部や社長室の仕事は、「数字の取りまとめ」「ゴール設定」「KPIトラッキング」あたりがメインにならざるを得ない、ということは理解できますが、それだけだと現場の信頼は得られませんし、シンプルに楽しくなさそうな気がします。

もちろん上記の仕事は非常に重要です。全社的になんの数字を追いかけていくべきか、その進捗は予定通りなのか、遅れているのか、その原因は何か、それらがわかりやすく全ステークホルダーに伝わる仕組みを構築できているのか。直接的に事業をドライブするわけではないにせよ、これらをファクトとして見える化し、「インサイト = つまり何が言えるのか」を抽出することで、組織全体の動きがスムーズになります。

ただ、これらの業務を進める際のことを考えても、「後ろのほうで椅子に座りながら考えているだけ」ではインパクトは出ないですし、あまり楽しくもないかなと思います。

では、どのような立ち位置であれば、「実際にインパクトが出る」かつ「やり甲斐があって楽しい」という形になるのでしょうか。

経営企画に求められる資質 = 事業感と経営視点のハイブリッド

経営トップを適切に補佐する「参謀」機能の有無で、トップのパフォーマンスには、天と地ほどの差が出ます。
企業における「参謀」の役割は、現状の実態把握や方向性出し、様々な課題発見や対応などを含めた、全社や事業目線での業務や課題の分業であり、その一部の代行です。
トップ業務の分担という視点で、多くの場合に必要となる代表的な参謀業務のテーマを「堅い」表現を使って記述すると、たとえば次のようなものになります。
・全社視点での課題の特定と、それらの優先順位の明確化
・部門をまたぐ全社視点、事業視点の課題プロジェクトの推進役
・各部門が健全に組織のPDCAを廻し、事業力を高めるための適切な検証と方針立案の支援と指導
・事業の現状の適切な把握のための情報収集と分析、戦略や方針の起案
これらの業務に、現場の肌感覚、言い換えれば事業感を持ったうえで、経営の視点を持ち、自らイニシアティブを発揮し、事業や会社をあるべき形に持っていくために、各局面での課題に取り組むのが「参謀」役の仕事です。

上記で、稲田さんは細かく参謀の仕事について解説を加えてくれています。わかりやすく対比すると、以下のようになるでしょうか。

×プラニング(計画立案とトラッキング)だけ
〇現状の実態把握や方向性出し、様々な課題発見や対応などを含めた、全社や事業目線での業務や課題の分業

経営企画について、「後ろのほうで座りながら電卓をたたいている」という静的なイメージではなく、「全体像を把握しながらも一緒に走り、止まっているところがあればグッと入り込んでいく」という動的なイメージで捉えたほうが、インパクトが出せるようになるかなと実感として思います。

企業サイズが小さければ、あえてこのような役割を作る必要はありません。すべて社長が考え、困っている部署があれば入り込んでボトルネックを取り除き、目先の数字を出しつつ夢のあるビジョンを掲げて組織を鼓舞し続ければいいのです。

ただ、組織が大きくなっていくと、社長一人でそれをやっていくことはほぼ不可能になります。じっくり腰を据えて将来のことを考えたり、なんとか直近のPLを改善したいと思っていても、たびたび持ち込まれるトラブルや投資家をはじめとするステークホルダー対応にいっぱいいっぱいになってしまうのです。

本来社長がやりたいと思っていた現状の把握や問題点の抽出、さらにその推進を含めたすべてを肩代わりしていくのが経営企画のミッションだととらえるのが正しいでしょう。机上の戦略作りや電卓叩きも大事ですが、あくまでも「全社目線を持ちつつ、自ら事業を前に進める」という目的を忘れてはならないのです。

組織を動かせる経営企画の資質

「自分は社長(あるいは事業部長)の代行である。よって自分の言うことは社長の言葉ととらえるように」
このような言い方で他人を動かそうとしても、そのような組織ではまず通用しません。
虎の威を借りることなく、自身への信頼と問題解決力で最適解に導く。これをやり切ることができれば、「うるさ方」揃いの部門長たちからも、その腕を認められ、その上に立つことのできる「切符」を手にすることになるのです。

これは本当に痛感することなのですが、人や組織は簡単には動きません。今までのキャリアがキラキラだろうが、現職での地位が高かろうが、有名MBA卒業だろうが、ほぼ関係ありません。もちろん、上司-部下の関係がある場合は、指示を聞いてもらえないことはないでしょう。

しかし、指示する側に事業に対するコミットが見られなかったり、適切な判断ができなかったり、言っていることとやっていることに差分があるとすると、「コイツのいうことなんか聞いてられんな」となり、組織はバラバラになっていきます。組織を動かすためには「信頼」「問題解決力」が必要である、という稲田さんの言葉は重く響きますね。

せっかく有能なのにも関わらず、この「信頼を得る方法」を理解しておらず、うまくいかなくなってしまったケースはよく見ます。方法はいろいろあると思うのですが、ぼくは「リーダー = フォロワーがいる人」「フォロワーを作るためには、まず他人に貢献する」という考え方がシンプルで好きです。

いくら組織図上で「社長」「事業部長」などの肩書があったとしても、それはリーダーとして信頼を得ていることとイコールではありません。「この人のためなら頑張れる」、そう思っている人(=フォロワー)が多い人こそが、真のリーダーとして組織を動かせます。肩書や経歴で威嚇するのは完全に逆効果です。

ではどうすればいいかというと、「まずは相手の困りごとを聞き、それを解決する」に尽きます。「会社をどうしたいか?」と大上段に聞かれても、そこに対して明確な解を持っている人は多くありませんが、「今何に困っていますか?」という質問に対しては、答えられない人はまずいないでしょう。小さなことから大きなことまで、みんな困りごとは持っています。

もしリーダーとして組織を動かしたいのであれば、まず困りごとを聞くこと、そしてそれを「聞いて終わり」にせず、実際に解決すること。そうすることで、組織内にフォロワーが増えてきて、考えた構想の実現が容易になってきます。

そして、なるべくそれを自らの手足を動かし、汗をかいて実施することも重要です。「自分の時間単価は高いから」と嘯き、「やらせること」こそマネジメントの仕事という考えもありますが、信頼を得ていない状況からそれをやってしまうと、「あの人、何もやってないよね」という空気ができてしまいます。もちろんすべての業務を自ら実施する必要はないですが、緊急性も重要度も高い業務については、ハンズオンで入っていってガシガシ解決する気概も必要なのではないかと思っています。

ぼくはまだまだこの奥が深いロールの表面を削っている段階なのですが、日々の業務に集中しつつ、インプットや言語化も実施していくことで、しっかり深いところまで刻み付けていきたいと思っています。

次回の記事:参謀役が果たすべき3つの役割

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