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読書録004:誰もが人を動かせる!

読書録004です。日本を代表するマーケターである森岡毅氏のリーダーシップ本、「誰もが人を動かせる!」です。

森岡さんの本は大好きで、今までもほぼすべて読んでいます。森岡さんは、マーケターとしてももちろんすごい方ですが、組織をどう動かすか、モチベートしていくかという部分にも非常に長けている方だなと感じています。そのような方のリーダーシップ論が具体例とともにわかりやすくかつ面白く語られている本で、大変おススメです。

本書からの抜粋

  • リーダーシップ行動を定着させられるかは、そうすることが自己保存のマイナスで終わるのではなく、自己保存にとって何らかのプラスに働くという脳内回路を、どれだけ多くの成功体験を獲得して定着させられるか?ということに懸かっているのです。

  • 社長の年収が高いのも、係長が課長になったら年収が上がるのも、リーダーシップ・スキルの期待に合わせて階級ごとに値札がつけられているからです。つまり、リーダーシップ・スキルを強化すればするほど、あなたの年収はどんどん上がっていきます。それは、あなたが発揮できる"仕事の質と量"が、他人の能力や時間を取り込めることによって激増していくからです。日本社会だけで考えても、リーダーシップに優れた人が組織の上層で、その組織の平均年収とは桁違いの年収を得ています。

  • 本気で全力を尽くしたなら、討死する気分も爽快なものです。私も何百回となく、豪快な討死を繰り返してきました。キャリアの出だしはもちろんですが、最近でももちろんありますよ。誰かにめちゃくちゃ怒られたり、失敗が重なって評価がガタ落ちしたり、誰かと深刻な人間関係のトラブルを抱えたり、そんなコストならカスリ傷のようなものです。重傷を負うのは自分自身のすべてを賭けた大戦で討死することですが、そういう経験が実は最も多くの経験値をくれることを理解していれば、いずれ傷口は塞がってもっと強くなって再び歩き出すことができるようになります。

  • 日本人は人種や言語や文化の壁を越えて、リーダーシップを発揮できる人がものすごく少ないのです。だから日本人に任せられるのは日本市場だけだと。どうすれば日本文化出身者がもっとグローバル環境でリーダーシップを発揮できるようになるのか?と多くの企業が悩んでいます(大半はもう諦めています)。第二次大戦後、日本人が世界中で仕事をし始めてとっくに半世紀以上も経つのに、真の意味でのグローバル企業のトップ層まで勝ち抜いた日本人マネジメントがほとんど皆無であることからも、その問題の深刻さは想像できるでしょう。

  • リーダーシップ経験を積むという観点からは、自分が長期間にわたって強い劣等感に沈むほどの"あまりに優秀な集団"に属することは決して良くないのです。

    • もちろん多少の差ならば追い上げることはできます。しかもその差が単なる経験の差であればさほど大きな問題ではありません。例えば、新入社員ならば当初は周囲と比べて圧倒的な能力不足ですが、それは主に経験の差であり、根源的なTやCやLの能力ポテンシャルの差ではない。これならば、その新入社員がどん欲に経験を積んでいけば遠からず自分なりの特徴を生かしたリーダーシップを発揮できる環境に身を置くことになるでしょう。

    • しかし、それがファンダメンタルな能力の差であった場合、その差は経験では埋まりません。そんな場合は、自分の特徴をよく認識して、その特徴を活かすことで組織に対して自分なりの貢献ができるか?それをよくよく考えることをオススメします。自分の特徴を活かして自分が貢献できるユニークな領域があると思えるならば、その領域で誰よりも詳しくなって専門性を積みながら、リーダーシップ経験を蓄積していくことを目指すべきです。しかし、もしも自分の特徴を活かしたとしても周囲にあまりにも太刀打ちできないならば、自分が組織に貢献できずにむしろ足を引っ張っているかのような罪悪感や劣等感に見舞われるのであれば、リーダーシップ経験を積む目的から判断すると、環境を変えることが正しいと私は思います。

  • 私は常に「花よりも実を取る」ことにしています。これは私自身のキャリアの指針の一つです。自分が勤めている企業や携わっているプロジェクトの規模ではなく、実際に自分が携わる職責のスコープの大きさを重視して職場を選びます。それは、自分自身を強くする経験をくれるのは、企業名でもプロジェクト名でもなく、自分の職能を強くする経験そのものであり、自分の視野を拡げて視座を高くするリーダーシップ経験の蓄積だと確信しているからです。しかし世の中には、名刺の肩書や役職をすごく気にして生きている人が多いですよね?私にはそれが不思議でたまりません。私は名刺の肩書などは本当にどうでもよいです。だから名刺自体も持ち歩くのをしょっちゅう忘れてしまいます。私は猟師の端くれですが、銃を選ぶ時も気にするのは「命中精度」です。見た目やブランドでは獲物は倒せないのと同じ話です。

  • パワフルに人を動かすということは、動かす人と、動かされる人という能動⇒受動の関係をつくることではないと私は思っているのです。相手に、どうやって自分事として「やらされる」のではなく「やりたい」ことの"主体"になってもらうのか?そこがキモです。そのために、人間の中にある「人の役に立ちたい」という社会性動物ならではの強い欲求を衝きつつ、その相手と自分の間に、上下関係ではなく、その人の主体性を喚起させるために必要な"対等な関係"を構築すべきなのです。端的に言えば、自分が、その人を活かす存在になればよいだけなのです。

  • リーダーとしてあるべきマインドセットは「共同体のためにリスクを取って粉骨砕身することが自身の喜びになる」ことです。しかし、かつての私はそれが逆転していたのです。「自分の目的(達成感)のために、手段として共同体を勝たせることに執着する」人間でした。それでも共同体を勝たせることを目指すので、それなりによく働きますし、結果も出します。しかしギリギリのところで、自分の目的に執着してしまうので、共同体全体の利害や他人を顧みる余裕がありません。自分が先頭を走ることに異常にこだわるのもそれです。それではギリギリのところで仲間と深い信頼を築くことはできません。

  • 私にとってのリーダーシップをできるだけシンプルに捉えると、その本質は「人を本気にさせる力」だと私は考えています。人々が達成したくなるワクワクするような未来の完成形を描き出し、それが絵空事ではなく本当に実現できそうだと信じさせる力。そして、その物語の中でその人ならではの特別な役割を演じられると相手に信じさせる力。その2つがあれば、目的のために人々が本気になり、仲間になってくれます。困難な挑戦でも一緒に立ち向かってくれます。10人いれば10通りのスタイルがあるでしょうが、私の場合、自分の特徴を活かして磨いてきたスタイルは、相手が演じてみたくなる物語を構想して人を巻き込んでいく"ストーリーテリング"の能力だと言えるかもしれません。

  • 自分が望む未来を本気で欲すること、そしてそのために本気で行動し続けること、王道はこれしかありません。自分の人生という"荒馬に乗れるか?" そもそも"乗りこなしたいのか?" そこに明確な意志を持つところからすべてが始まるのだと私は確信しています。

感想など

実体験に裏打ちされた圧倒的な説得力、森岡さんが目の前で語りかけてくれているような臨場感がある、非常に熱くなる良書でした。読書体験の質は「どれだけ感情が揺さぶられたか」に大きく左右されます。いかに名著とされていても、なにも思うところがなければ、自分自身にとってはあまり意味がありません。そういう意味では、この本ととても質の高い読書体験をすることができました。

リーダーとして組織を率いる人はぜひ一度読んでみてほしいと思います。リーダーシップとは何なのか、どのように身に着けていけばいいのか…そういう悩みへのヒントが得られるはずです。

森岡さんと自分を比べるのは僭越ですが、若干似たような経験をされているな…とも感じました。若手のときは「誰も自分の前を走らせない」「絶対に負けない」というスタイルで、とにかくゴリゴリ猪突猛進で仕事をこなされていたとのことです。もちろんこのスタイルでも結果は出るものの、なぜか後味があまりよくない…森岡さんはこのリーダーシップを「暗黒のリーダーシップ」と名付けていました。その後、紆余曲折ありながらリーダーシップへの知見を深めていかれ、最終的には「リーダーシップ = 人を本気にさせる力」というマインドになったとのことです。

この流れは、おそらくコンサルタントから事業会社のマネジメントへ転身された人も頷くところが多いのではないでしょうか。コンサルティングファームでは、基本的にみなプロフェッショナル意識が高く、ゴリゴリに働いてくれる人たちばかりなので、「人を本気にさせる」というポイントについて、そこまで深く悩むことはないのではないかと思います。それよりも、お客様との論点設計、スコープ管理、プロジェクトマネジメント、プレゼンテーション…というようなコンサルティング特有の各種マネジメントに腐心することが多いかと思います。

一方、事業会社のマネジメントの仕事の一丁目一番地はまさにこの「人を本気にさせる力」なのではないかと思っています。もちろん、コンサルタント時代に培った能力は引き続き重要ですが、それだけで長期的に繁栄する企業を作るのは正直難しいのではないか…と思っています。いかに企業が掲げるビジョンを自分事として捉えていただき、かつそこに対して「自分も貢献できる!!!」と心から信じていただけるか…ここが非常に重要になってくるポイントなのでしょう。恥ずかしながらまだまだ力不足だと思っていますが、そうとも言っていられない状況なので、「リーダーシップ = 人を本気にさせる力」の醸成にも今年は取り組んでいきます!

誰もが人を動かせる!」、とてもおすすめなのでぜひ読んでみてください!

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