個人事業 いつ 法人化するの?

起業家サポーター 税理士の河合です。

個人事業で商売をしている方からよく聞かれます。

「どれくらいの売上になれば、法人にしたらいいですか?」


「〇〇〇〇円です!」

と言えたらよいのですが、明確に〇〇〇円ということは言えないです。

申し訳ない( ;∀;)

やっている事業の売上と利益ができる仕組み、その金額の大きさ、社員がいるかいないか、社員は何人かなど、考えるべき要素が多いんです。

ただ、一般的によく言われているのが、売上が1,000万円を超えたら、法人にした方がよいと言われています。

それは、消費税という税金のルールがそうなっているからです。

今の消費税のルールでは、2年前のその年の売上が1,000万円を超えるか、超えないかで、消費税を払わなければいけないかそうでないかを決めます。

つまり、開業1年目から、売上が1,000万円を超えたとしても、1年目と2年目は消費税を納めなくてもよいということです。
(特定期間(その年の前の年の前半6か月)の売上が1,000万円を超えた場合、その次の年から消費税を納めないといけないという特殊ケースもあります。)

ここで消費税というのは

①1,000円(税抜き)の商品を購入した。 
 この時、消費税10%をプラスした1,100円をお店に支払います。

②①の商品をAに1,500円(税抜き)で販売した。
 この時、Aからもらうのは、消費税10%をプラスした1,650円です。

③消費税は、①②のような取引を1年間続けて、②で預かった消費税と、①で払った消費税の差額が、プラスだったら消費税を納め、逆にマイナスだったら、その分の消費税を返してもらうという手続きを取ります。
※今の消費税のルールでは、消費税を取引先に請求をしてもよいことになっています。

つまり、2年前の売上が1,000万円を超えなかったら、③の消費税がプラスだったとしても、消費税を納める必要はないのです。

消費税は2年前の1年間の売上が1,000万円を超えたら、今年、消費税を納めないといけないルールになっています。
消費税を納める人になるかどうかは
2年前の売上で判断する=すぐに消費税を納めないといけないわけではない。
売上が1,000万円を超えたら、次の次の年には消費税を納めないといけないと理解しておくことが大切です。

そこに法人化の検討がなぜ入ってくるのか?


個人事業から法人化することを「法人成り(ほうじんなり)」と言います。

個人事業をやっている本人からすると、同じ事業をそのまま継続してやる。事業をやる箱が「個人」から「法人」に変わっただけという感覚だと思います。

しかし、法律上、「個人」と「法人」は別物なんです。

消費税という税金のルールも、「個人」と「法人」は別々に考えます。

「個人」で2年前の1年間の売上が1,000万円を超えていても、法人成りをして、「個人」の事業を「法人」に移せば、「法人」には、2年前の売上はない。
「個人」の1年間の売上が1,000万円を超えたら、2年後に「法人」をつくって、個人事業を法人成りすることで、消費税を納めなくてもよい期間を延ばしていくという節税の方法をとられるケースが多いです。
(注意:法人をつくるときに資本金というのを株主が出すのですが
その資本金の額が1,000万円以上の場合は、1期目、2期目は無条件に消費税を納めることになります。)

いままでは、個人で2年、法人で2年の合計4年間消費税を納めることを免れるということができていました。

が、これももうすぐ、できなくなります。

消費税という税金のルールが変わります。

令和5年10月1日から、「適格請求書保存方式」という制度が始まります。

2年前の1年間の売上が1,000万円を超えるか、超えたら、その2年後は消費税を国に納めないといけないというルールは変わらないです。

日々の取引について、取引先に請求書を発行するときのルールに「適格請求書保存方式」という新しいルールが追加されます。

2年前の売上が1,000万円を超えていない、消費税を納めなくてもよい人も、今までは、取引先などへ出す請求書には消費税分を加算していました。
しかし、「適格請求書保存方式」が始まると、消消費税を納めなくてもよい人は、取引先への請求書に消費税を加算して請求することができなくなります。

①1,000円(税抜き)の商品を購入した。 
 この時、消費税10%をプラスした1,100円をお店に支払います。

②①の商品をAに1,500円(税抜き)で販売した。
 この時、Aからもらうのは、消費税10%をプラスした1,650円です。

③消費税は、①②のような取引を1年間続けて、②で預かった消費税と、①で払った消費税の差額が、プラスだったら消費税を国に納め、逆にマイナスだったら国から返してもらうという手続きを取ります。

消費税を納めなくてもよい人は
②で請求していた消費税10%分 150円が請求できなくなります。

個人事業側から見ると
いままでは
A 売上 1,650円 仕入 1,100円 利益 550円 だったものが
B 売上 1,500円 仕入 1,100円 利益 400円 となってします。
これを解消するために、売上1,500円を、消費税なくても、その販売金額を1,650円にしようとします。
そうると利益はAと同様、550円確保できますが

半面、取引先からみると
A 仕入 1,500円 消費税 150円 
だったものが
B 仕入 1,650円 消費税  0円
となります。

取引先が商品を購入する時点での支払金額は1,650円で変わりませんが
消費税を年度で支払うタイミング③で

③消費税は、①②のような取引を1年間続けて、②で預かった消費税と、①で払った消費税の差額が、プラスだったら消費税を納め、逆にマイナスだったら国から返してもらうという手続きを取ります。

Aの場合には、150円を差引支払う消費税からマイナスできますが
Bの場合には、それができません。消費税が0円だからです。
つまり取引先においては、新しい消費税のルールが始まった場合に、Aの場合だと損をしてしまうケースが発生してしまいます。
消費税を納めなくてもよい人との取引は、取引先が損してしまうケースがあるので、やらないという選択をするケースが増えてくるといわれています。
(これには、一定期間、消費税0円請求書でも消費税を差し引けるという、ソフトランディングのルールがあります。)

消費税を納めなくてもよい人は、取引先との商売を今まで通り続けたいと思うため、今までできたメリット(消費税を納めなくてもよい人)を捨てることを迫られます。
消費税を納めなくてもよい人は、自ら宣言することで、消費税を納める人になることができます。 
こうすることで、取引先への請求書に消費税を加算できるようになります。

令和5年10月1日からはじまる、消費税のルール変更によって、消費税を納めなくてもよい節税の手法は、かなり制限がかかる、いや実質的には使えなくなります。

いますぐに起業して、個人事業を始めた人が
たとえば
令和2年9月に個人事業を立ち上げて
1年目売上が1,000万円を超えた
その2年後、令和4年9月に法人成りしても、令和5年10月1日に「適格請求書保存方式」がはじまるので、節税メリットを受けれるのは、1年。
個人事業 2年 法人 1年 の計 3年程度となります。

結果、今まで言われていた消費税の節税メリットはなくなるので、起業するときの個人事業 or 法人 の判断は

自分は何がしたいか?、自分はどうなりたいか?

で判断するんでええやん!と思っています。
消費税以外の法人成りの判断については、また投稿しますね(^^)/

※細かい税法のルールなどを説明していない部分がありますので、実際にご自身の事業などでご判断される際には、税理士等の専門家にご相談ください。

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