コミュニケーションとは、さらにクリエイティブな若手と根回し上手なオヤジのタッグを

当記事では、厚生労働省のメンタルヘルス対策支援事業の登録相談機関等である株式会社セーフティネットが、ストレスチェックを受託している企業における従業員の回答データを分析した調査結果が話題となっている。調査結果では、ストレスの高低は仕事について相談できる人が周りにいるかどうかが要因となるとされている。そのため、「職場のコミュニケーション支援がストレス対策に有効だ」と説明されている。

たとえば、職場におけるコミュニケーションは雑談等が考えられるだろう。組織がイノベーションを起こすためには、「なるべく自分から離れた遠くの知を幅広く探し、今自分の持っている知と新しく組み合わせる」という「知の探索」が第一歩となる。さらに、組み合わせた知が収益性のあるビジネス等になりそうなら、当然それは深掘りする必要がある。これは「知の深化」である。組織は知の深化に傾斜し、探索をなおざりにする傾向があるとされる。すなわち、知の深化が得意な人や組織及び探索が得意な人や組織を結びつける必要があるのだ。そのため、クリエイティブな若手と根回し上手なオヤジがタッグを組むための仕掛けが必要だろう。この仕掛けとして雑談等のコミュニケーションが活用できる可能性が考えられる。

組織論ではトランザクティブ・メモリーという考えもある。トランザクティブ・メモリーとは、組織の学習効果、パフォーマンスを高めるために重要なのは、「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバーが「ほかのメンバーの誰が何を知っているのか」を知っておくことである」というものである。このトランザクティブ・メモリーの仕掛けとして挙げられるものに、たとえば「たばこ部屋」や「飲みニケーション」がある。しかし、たばこ部屋や飲みニケーションに変わる新しい仕掛けをつくっていくことも大切だろう。たとえば、金曜日の昼休み時間を通常より長くする事でランチタイムミーティングを充実させることも方法かもしれない(この場合、昼休み時間を長くした分は休憩時間としなくても良いのではないだろうか)。また、株式会社ニューズピックスのNewsPicks for Businessを社内コミュニケーションの活性化に活用する方法も考えられるだろう。将来的には社内コミュニケーションが社内仮想コインの付与等にも発展する可能性もあるだろう。

https://www.uzabase.com/company/news/newspicks-for-business/

このように、雑談等のコミュニケーションは組織のイノベーションに繋がる可能性も考えられるだろう。野中郁次郎教授らは、ナレッジ・マネジメント(*1)においてSECIモデルを提示した。SECIモデルは、(1)共同化(暗黙知から暗黙知へ)、(2)表出化(暗黙知から形式知へ)、(3)連結化(形式知から形式知へ)、(4)内面化(形式知から暗黙知へ)、という4つの段階に分け、これらの段階をスパイラルさせて組織として戦略的に知識を創造し、マネジメントすることを目標とする。暗黙知を形式知とすることは、日本企業の空気を読むというハイコンテクストな働き方から、知を誰にでも分かりやすく共有することというメリット等が考えられる。ナレッジ・マネジメントにおいても、雑談等のコミュニケーションの有効性は見出すことができるだろう。

さらに、昨今の組織論ではホラクラシー型組織やティール組織等も議論されている。このホラクラシー型組織を導入したことで有名な企業に米国のザッポスがある。ホラクラシー型組織の特徴として、上司や部下という階層構造を無くした、フラットな構造で役割ベースの組織運営が挙げられる。要するに、自立型組織だろう。また、組織論だけでなく働き方の議論では、アジャイルな働き方も提案されている。アジャイルな働き方とは、所謂「走りながら考える」だろうか。孫子の有名な言葉に「巧遅は拙速に如かず」というものがあるが、アジャイルな働き方は走りながら考え、修正を繰り返すものだろう。

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2841704022032018000000

このように雑談等のコミュニケーションはストレスを低下させることになるだけでなく、組織のイノベーションや働き方改革にも繋がる可能性が考えられる。組織の風通しを良くするためにコミュニケーションを活性化させ、若手とオヤジだけでなく、組織全体でタッグを組み、働くことを楽しくしていくことも重要だろう。

(*1)ナレッジ・マネジメントとは、生産管理、販売管理(マーケティング)、財務管理、人的資源管理、情報管理に続く第6の管理領域。個人のもつ暗黙知を形式知に変換することにより、知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法をいう。(Wikipediaより引用)

(参考文献)

野中郁次郎、竹内弘高著『知識創造企業』

入山章栄著『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36743820R21C18A0CR8000/

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