国数理社英をやめて道体技会思財身精を基本的な科目にしよう

「新しい教科は何にすべきを、一話分引っ張ったからもう言うわ。新しい教科は道徳体育技術会話思考財権身体精神。以上。解散」
「ちょっと待ってください」
「なんだ。俺はこれからヨガに行くから忙しいんだが」
「あからさまな嘘をつかないでください。それよりもうちょっと詳しく説明して下さい」
「えっ、あれでわからなかったのか。まったく仕方ないなバカばっかだな」
「最近ではろくに説明できない方がバカって風潮ですけどね」
「それも一理あるな。じゃあ説明しよう」「意外と素直ですね」

「前回で『学校は全ての仕事と力を網羅した授業』をすべきって話はしたよな」
「えぇまぁ」
「じゃあ人間が持つ全ての力はなんだで教科を考えて、並べたのがこれになるんだ」
「んー。能力財力権力みたいな話ですか」
「まぁそうだな。人間が持つ力がそれだ。そこに人間そのものである身体と精神を加え、目指す目的やルールの基準となる道徳を加えたものが、どの仕事でも必要になりうる基本的な力と考えた」
「なるほど。それが道徳体育技術会話思考財権身体精神ってやつなんですね」
「そういうことだ。じゃあ個別に軽く概要を話していくぞ」
「お願いします」

 『道徳――欲望と理想と正義。そして法学』

「まず道徳の話だな」
「国が理想を押し付けていいのか、正しさを強制していいのかって話が出てきますけどね」
「何を言ってるんだかな。だったら国の法律は何だって話だよな。あれが正しさを強制していないかって話だけどな」
「だから、彼らは無法な動きをするんです。言行一致では?」
「確かに。って確かにじゃねぇよ。話が逸れたじゃねぇか」
「早く進めて下さい」
「まったく。ただでさえ長くなりかねないのに。ええと。まず倫理は目的側のものと手段側の目的のものがある。先に目的側の話だな」
「目的って何ですか?」
「欲望と理想と正義ってところかな。バラバラな欲望を幾らか束ねて共通項とする理想と、その欲望や理想へと力と手段を使い進めることが正義ってわけだな。これを個別に勉強していくことになる」
「理想ってたくさんありそうですけどね」
「まぁ自由とか多様性とか民主主義とか平和とか充足とか承認とか揉めそうなのが揃っているよな」
「それ、ちゃんと教えられるのでしょうか」
過剰と過少のバランス理論を使えばそれなりには。例えば自由についてだが、自由が過剰だと好き放題やって秩序が乱れ、自由が過少だと圧政で力を発揮できず社会が衰退する。自由はそのバランスを目指すべきという教え方ができるだろう」
「なるほど」
「他には手段のルールもあるのだけど、これは会話とか技術の個別手段で話した方がわかりやすいだろう。例えば電動のこぎり使っている時に手を近づけたりしてはいけないとか、髪を束ねて巻き込まれないようにするとかそういうやつ」
「確かにそれは大事ですが、欲望や正義や理想ってわけではないですね」
「そうだな。安全という目的を達成する為の手段だしな。で、この目的や手段である程度広く合意が取れたものとして、法学についても勉強したいと思っている。法学には基本的な道徳が詰まってるしな」
「まぁ偽証罪=嘘をつくなって話ですものね。でも、ルールにないものはやっても構わないとかなりませんかね」
「その辺りはバランスだろうな。それと有罪的な判決をする思考的手続きなものも学びたいかなと思ってる」
「ん?あぁちゃんとした証拠に基づいて、こいつが悪い悪くないを判断する態度ですね。確かに、自分が悪いと思ったから悪いと決めつける人が多いですからね」
「そういうことだな」

『体育――筋肉と戦略で運動できない生徒も活躍する授業へ』

能力を身体を使う技術と、口を使う言葉と、その両方や他のことについても扱う思考の三つに分けるまではわかるよね」
「えぇまぁ」
「それで身体を使うわけなのだけど、技術ってさいろいろあるよね」
「ん?どういうことですか」
身体を動かして走ったりスポーツしたりする技術と、手先を主に使う工学とかプログラミングと、その間くらいの物を運んだりとかする労働的なことの三つ
「なるほど。そうですね」
「だから、スポーツは今まで通り体育扱いで、運ぶとか単純労働的なものは科目以外の課外活動を通して学ぶということにして、工学や情報学を技術という科目にしたいわけ」
「まぁそれぞれ範囲がでかそうですからね。それくらいの分割でちょうどいいかも知れません」
「だな。で、その体育だが、走るとか泳ぐとかボールで遊ぶとかは今まで通りだが、少しだけ変えたいところがあるな」
「何ですか?」
「もう少し頭を使って戦略的に動く運動会の競技的なものを増やしていきたいかなと思ってる」
「あぁ、開成でしたっけ?棒倒しみたいなやつ」
「そうそう。どうも今までの体育って身体だけしか使ってないようなところが結構あるんだよ。運動ってさ、頭脳を上手く使って体を動かすってのも大事だと思うんだよね。身体が強い人だけが勝てて役立つではなく、そうでない人もやりあえるよう工夫する方法を覚えることで、文系理系側が体育会系に覚える妙な劣等感(或いは体育会系側の妙な優越感)みたいなのがなくなって、様々なことで上手く協力しあえると思うんだよね。それで戦う目標みたいなのがあれば燃えるから、運動会の種目も普段からやればいいんじゃねって話」
「なるほど。そもそも力関係ではどうにもならない戦いを、工夫で引っ繰り返してきたのが人類の歴史ですしね。諦めずに考える楽しさを得るには、体力差でなく工夫で勝てるものが必要かも知れません」

 『技術――コミュニケーション苦手で単純労働でないなら、だいたいこの仕事になってしまうのに教えないのかよ』

「次は技術ですね」
「そうだな。木工や鉄工やその他加工、中の機構や表面のデザイン的なものを頑張るハード的なものづくり、情報処理やプログラムなどをやるソフト。その二つが組み合わさった普通の製品やIT技術についてきちんと勉強するつもりだ」
「なるほど」
「より専門的にやるには高専だけどな。でも必要だろ。会話が多い商業以外の産業である農林水産業や工業は技術を使う仕事だしな。結構多くの仕事を占めているのに、そんなに教えてない現状はおかしいだろ」

 『会話――会話を教えるだって(笑)とか思わないで下さい』

「次は会話です」
「なんかさー。会話を授業で教えるって何か変って言う人がいると思うだろ」
「あー、それは多分、日常生活や友達とのやり取りで十分では?と心では思ってる人が多いからでは?」
「それとコミュニケーションの授業イメージが貧困なのかも知れないな。ハイ!エミリー。アイファンセンキュウ。アンドユー。ディスイズペンをやる気なんか?とでも思ってるよな」
「でもさ。人の目を見て挨拶もできず、雑談や自分の想いを言葉にすることもできないような人が多い現状では、絶対必要だと思うんですよね」
「そうだな。文句言うやつはどれだけ本屋にコミュニケーションの本があるのかわかってんのか!って話だな」
「それにコミュニケーションって単なる雑談ばかりでもないですしね」
「まぁな。正しい議論のやり方とか、相手に伝わるプレゼンや広告のやり方とか、相手とこちらの財を上手くやり取りする交渉の仕方とか役立ちそうなのは大量にあるしな」
「それと社会人になって無理矢理覚えさせられる敬語とかビジネスマナーとかね。急に覚えろって言われて、覚えられない人もいるんですよ!
「私怨か?」

 『思考――文系理系的な考え方を身に付ける』

「思考って何をやるんですか?」
「まぁ大きく分けて、探すことと考えることだな」
「そこらへん詳しく。まず探すから」
「探すって言っても、ネットから情報を拾うだけではなく、五感の感覚から必要なものを拾ったり、機械を使って信号や化学物質を拾ったりとかそういうことも学ぶ必要がある」
「では考えることは?」
「理屈の基礎となる語彙。文章に論理を持たせる理屈。それらを踏まえた表現を使い考えること。そういった思考を基礎にして現状のものを分析するんだ。現象や研究の成果の思考の前提にあるもの、それを作り出した思考そのもの、将来それがどうなっていくかの未来を考えていくんだ」
「うーん。でもそれ具体的にどんな現象や研究を対象にするんですか」
「文系理系二つのアプローチが必要だろうね」
「それってまさか社会と理科ですか」
「そうだな。文系の場合は社会になる。政治経済軍事外交地理の意味と流れを歴史的に学んでいくことになる」
「なるほど。現実の問題を理解するのに役立ちそうですね」
「だろ。現実と深く関わってるだろ」
「それに思考の楽しさが深まると思います。単に西暦とか名前とかで憶えていた暗記物の政経や歴史が、その意味がわかって面白くなると思います」
「別に名前なんて忘れててもいいんだよ。その理屈の構成要素や流れがわかっていれさえすれば、現実社会の分析に応用することはできるんだからさ。歴史に学ぶってそういうことだろ」
「なるほど」
「理系は仮説と計算と実験だな。どういう理屈と計算を用いて、その説を生み出し、どうやれば立証できると考え、その実験を行ったのか」
「その思考に沿うことで、理系的な考え方も身に付けられると思います」

 『財権――社会で大事なお金の話と上下関係』
「これは財力と権力の科目ですよね」
「まぁそうだな。二つ組み合わせたのは、組織論で一番大事なのは金の動きだし、まとめた方が説明しやすいかなというのと、教える分量的に合わせるのがちょうど良いかなと思ってさ」
「財力は何の話をするんですか?」
「社会全体のマクロ経済学。企業とかのミクロ経済学。それと家計や個人のお金の稼ぎ方と使い方かな。一応思考の文系の部分でも経済と書いてあるけど分量が多いから、メインはこっちでやることになるかな」
「稼ぎ方ってことは業界や仕事の話もするんですね」
「そうだな。『学校は全ての仕事と力を網羅した授業』をすべきの、全ての仕事の部分はここでやることになる。ブラック企業の見抜き方、入ってしまった場合の逃げる方法や変える方法についても教えるべきだろうな。『身体的な死から子供達を守る』。だからな」
「ふむふむ」
「次は権力の話だな」
「政治の話ですか」
「それもあるかな。独裁はどうして作られるかとか、あの圧倒的不利な場面でどうして交渉で上手く脱したのかとか、そういう話もしていきたいね」
「んーじゃあメインは何ですか?」
「組織を支えるに必要な役割とは、組織を保つに必要な適切な上下関係や外部との付き合い方はとかだな」
「なるほど。上下関係って大事ですよね」「そうだな」
どういうふうに指示をすれば、相手がきちんと仕事をしてくれるのかって、どこの組織でも悩むことですから、学ぶべきだと思うんですよね」
「まぁな。学ぶ環境を事前に用意できるなら、どうして会社という本番でいきなりやらないといけないのかと思わないといけないだろうさ」
「その本番で一生を棒に振ることがあるのに、それをしないというのは勿体ないですしね」
「古典や漢文よりずっと大事だろと俺は思うんだけど」

 『身体――健康を保つ方法はいろいろ』
「これは何をするんですか?」
「身体の外部と身体の表面と身体と身体の内側の話だな」
「意味わかりませんが」
「身体の外部=国や地域の環境、住環境。体の表面=衣服。身体=体の構造と機能。身体の内側=健康や医療ってところだな」
「どれも大切ですね。ところで機能って何ですか?」
「道具使うとか身体動かすは他で話すので除けば、あとは一つしかないな」
「それは?」
「性教育ってことだな」
「あぁなるほど」
「ちなみに健康というのは、食や睡眠や休息や運動も含まれているからな」
「んー。最新の研究や自分の状態を踏まえて、健康な体を保つ方法を考えていくことになるんでしょうか」
「そうだな。自分の健康でパフォーマンス発揮できなかったり、早死にする人がいるのだから、これを学ぶことは絶対に必要な基本的なことだろ
「確かに」

『精神――ヨガとかガチな災害訓練したいね』
「最後は精神だ」
「これは何ですか」
「まぁ自己管理とか心理学の話かな」
「自己管理?」
「感情を抑えるとか、危険を避けるとかそういうことだな」
「なるほど。感情を抑えきれずに人に迷惑を掛けたり思考がおかしくなる人がいますからねー。危険を避けるというのも、感情を抑えきれない人達による犯罪とか自然災害で倒れてしまったら、社会の中で頑張るどころの話じゃないですからね。これも基本的なことです」
「そうだな。感情を抑え管理するってのは、ヨガなどのマインドフルネスをするとか、絶望的な気持ちや状況に陥った時にどうすれば良いかの対策などを教える。危険を避けるというのは人や物との付き合い方とか、災害でのガチな訓練をしていきたいと思っている」
「えっ。ガチですか?」
「そうそう。ダラダラ避難訓練して、非常食食って終わりとかのぬるいやつじゃなく、ちゃんとシミュレーションしたり、情報を集める方法とか電気ない時の暮らし方とかいろいろやる」
「なるほど。ネット繋がるとは限らないですしね」
「一方で心理学だけど、これは環境と性格がどういう行動に移らせたとかの人の心の動きもあるけれど、こういう物や提示をされた人々が、望ましくない行動をやめてどんな良い行動をしたかという行動経済学についても学ばせたいと思ってる」
「なるほど。しかし感情を抑えるというのは危ないのでは?政府や上司の理不尽に耐えさせ、問題ある状況を野放しにしかねないのでは?
そうならないように、考える力と暫定的に正しい状態と決して避けるべき最悪への対策を、できるだけ伝えたいと思ってる。感情は過剰でも困るが過少でも困るのさ。怒りはありながらも自棄にならず自らを責めず、周りが良くなる方法を探し続けていかせたいところだね」
「なるほど。基本的ですね」

「というわけで、新しい教科の提案はどうだったでしょうか?」
「疑問や反論があるならくれよな。教育を良くする為に、不幸な子供をこれ以上生み出さない為にも、脱落する人のない楽しい社会を作る為にも、どんどん議論と実践をしていこうぜ」


 まとめたもの

 力
能力(技術(体育と労働と技術(工学情報学)に分ける)と会話と思考(文系理系→社会や理科))
財力権力
 力を扱う
身体や精神(自己管理・心理学(人・物))


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