見出し画像

血液を若返らせる?最新の老化防止研究を紹介!~腸活ラボマガジンVol.31~


はじめに

老化は、多くの慢性病の主要な原因となります。世界中で人口の高齢化が進む中、老化の影響を和らげる方法が見つかれば、人々の健康な寿命が延び、全体的な幸福や経済、社会に大きな影響を与える可能性があります。多くの老化関連の病気や体の機能低下は、血液中の幹細胞の健康状態と関係しています。RossらがNature誌に報告した研究では、異常な幹細胞を減らす抗体療法が、老化したマウスの免疫システムを若返らせることが示されました[1]。

造血幹細胞とは?

造血幹細胞(HSC)は、一生を通じて血液細胞を作り続けます(図1)。若い人の多くのHSCは、様々な種類の血液細胞に成長する能力を持っていますが、年を取ると特定の種類の血液細胞、特にミエロイド系細胞(赤血球、血小板、免疫細胞など)を作りやすくなります[2,3]。このミエロイド系細胞の増加は、高齢者の免疫力の低下や慢性炎症、血液のがんのリスク増加と関連しています。HSCの機能を回復させることで、免疫力を高め、慢性病を減らし、血液の病気を予防できるかもしれません。

図1 骨髄にいる造血幹細胞の働き。自分も分裂しながら、血液成分への分化も担います。https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=2

老化した幹細胞を減らす?

老化によってミエロイド系のHSCが増える原因として、細胞内外での変化が報告されていますが、その詳細なメカニズムはまだ完全にはわかっていません[4]。そのため、Rossらの研究では、抗体療法を用いて老化したマウスのミエロイド系HSCを標的にし、残った若々しいHSCが免疫を強化し、血液細胞のバランスを取り戻し、体全体の炎症を減らすことを目指しています(図2,3)。

ここから先は

2,808字 / 2画像
この記事のみ ¥ 300

いただいたサポートは、腸活ラボの運営や調査のために大切に使わせていただきます。