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二千円札と魔法陣グルグル

西暦2000年、沖縄サミットをきっかけに二千円札が発行されたとき、私は小学生だった。

新しいお金が登場する!と盛り上がる世の中。
発行されるやいなや、父が私たち家族4人に1人1枚ずつ、ぴかぴかの二千円札をもらってきてくれた。

記憶はあいまいだが、「2000年に発行された二千円札はきっと後々レアになるぞ」なんていうことを父から言われたような気がする。


当時の私はというと、日々少しずつおこづかいを貯めて漫画を買い集めることに必死だった。同世代の方に共感してもらえると嬉しいが、「ペンギンブラザーズ」「ファイブ」「ギャルズ」といった少女漫画に夢中になっていたのはいい思い出である。

少女漫画を買うのでカツカツだった私のおこづかい。そんな中、「魔法陣グルグル」というどうしようもないギャグ漫画の存在を知る。

「ただし魔法は尻から出る」「となりのババアは良いババア」「ゴチ〇コの修行場」など、思い返せば返すほど思い出は下ネタばかりなのだが、当時学校では謎のグルグルブームが巻き起こった。

面白い漫画を買いたい、けれどおこづかいは少女漫画で使ってしまう……。


そこで思いあたったのが二千円札だった。
当時だと漫画は1冊400円前後だったような気がする。5冊も買えれば御の字だ。

「二千円札、使ってもいいかな?」と母に相談した。母はあっさり、「いいんじゃない、ピン札なら銀行に行けばもらえるし」と。私も母も、まさか20年後にほとんど見かけなくなる紙幣だとは思わずに。

二千円札を使ってしまったことを(おまけに使い道がしょうもないギャグ漫画だということを)父に打ち明けたかどうかは記憶にない。

それでも、20年が経った今もまだ私の中に「二千円札で漫画を買った」という記憶が鮮明に残っているのだから、あの2000円は私の人生の中でも特に意味のある2000円だったような気がしている。

先日、沖縄へ出張に出向いた夫が「見て見て」と二千円札を2枚もらってきた。沖縄の方と現金で食事の会計をした際に受け取ったのだそうだ。(沖縄では二千円札は珍しくないと言われたそうだが、あくまで個人的な意見かもしれない)

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二千円札を手に取ったのはいつぶりだろうか。

「二千円札があっても自販機ではじかれたりするからなぁ」と困り顔の夫に、「使うの?とっておこうよ」と思わず言ってしまった私。

とっておいたところで、私はこの二千円札2枚をどうするつもりだろうか。結局手元にあっても仕方ない、と 20年経った今ふたたび しょうもないものを買うのかもしれない。

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夫が沖縄みやげに買ってきてくれたピンクパインに包丁を入れながら、2枚の二千円札の使い道を熟考していたのだがすぐには思い当たらない。10万円給付金の使い道を考えるより難しいと笑いながら、今夜の食卓を囲んだのだった。


2020/06/16 こさいたろ


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