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台風予報:風速予報はもうカラーマップ表示に変更してはどうだろうか〜検証から分かる、予測数値の正確性と具体性

今回の令和2年台風10号は、未曾有の風速となるとされ、南大東島では80メートルの、また九州では60〜70メートルの最大瞬間風速と予報されていた。

台風が通過したのは、2020年9月6日(日)の夜 〜 翌朝までであるが、これに先立つこと約半日前のWindyのカラーマップで、各地の最大瞬間風速(予測)を読み取ってみた。

この読み取り結果と、実際の結果を比べて見よう。

6日(日)19時の発表(どのように皆に伝えられたか)

そのまえに、どのように皆に伝えられていたかを検証しよう。

6日(日)午後7時のNHKニュースは、気象庁の発表をもとに、以下のような、従来からある「ざっくりした」表示を行っていた。

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風速で表示されている情報はこれだけである。

よく見てほしい。最大瞬間風速は、九州南部、九州北部・奄美、と分けて書いてあるが、「全部60メートル」だ。

” 九州全体で、最大瞬間風速60メートルを警戒!”

ということしか分からない。

ホントですか? と、聞きたくなる。
広い九州全体で、全員が、60メートルを警戒するべきなのか。

どの県の、どの町のあたりが強く吹くのか、という情報は、一切具体的ではないことが分かる。

だから、窓にテープを貼ろうとか、立体駐車場に車を避難させようとか、そういうことをするべきか、しなくて良いのかが、全く分からない。だから、する人もいれば、しない人もいる。九州全域で。

「なんだかすごい風が吹くらしい、すごい風で寝れなかった、映像では屋根が飛んでいた」そんな感想や経験が得られても、「何メートルで、このぐらいだ」という経験値が極めて得にくい。

用意していて、うまく対応できれば「ほらね(準備が大切)」と思うだろうし、用意しないで何も起こらなければ「ほらね(やりすぎなくてよかった)」と思う。

でも、それは「九州全体で60メートルを警戒!」というざっくり予報なので、当たるも八卦、、、的なフィードバックでしかない。

一方、雨量や河川氾濫の危険に関しては、カラーマップを使用して、あまり氾濫が起こっていない実況を示していたのをご覧になった方も多いと思う。

つまり、雨量や河川の情報に比較して、風速の予報はものすごく大雑把であるということだ。

6日(日)12時での Windyデータの読み取り

Windyは、雨量や風速などを表示するウェブサービスである。だれでも表示できて、「エキスパートモード」に入ると、瞬間最大風速を地図上に表示する機能がある。

この予測は、代表的な2つの予測機関である、欧州(ECWMF*/末尾に脚注)と、米国(GFS**)の両者の予測を切り替えて表示できるので、双方に違いがあるときには予想が難しそうだと分かるし、一致していれば信頼度の高い情報だなとユーザーに分かる。

以下はECWMFでの予測を基に1時間毎の動画にしたものだ。

九州の西岸を中心に強風が吹くが、よく見ると長崎〜佐賀〜福岡は、九州北部でもとくに危険なことがわかる。

また山口はかなり台風の中心から離れているが、かなりの強風で注意しなくてはならないことがわかる。カラーマップだから、圧倒的にその強弱が具体的だ。

上の動画で黄色いところは最大瞬間風速50メートル、白いところは同40メートルである。

ただし、「ECWMFモデルは瞬間最大風速を過大評価する」という注意書きが書いてあった。また南大東島の実際の最大瞬間風速の出方が小さかった(51メートル)。

事前に読み取った値は実際の強弱をよく表していた。

この2つを考慮して、より数値が小さく実際に近い値を表示していたGFSモデルにおける瞬間最大風速のカラーマップを、1時間毎のスクリーンショットにした上で、以下のようにFaceBookに書き込んだ(6日(日)12:00頃)

[ ] 内の数値は、後で実測された数値である。

これを見ると、最大瞬間風速という、従来はものすごくあやふやだったものに対して、極めて高い精度でその強弱を示している事がわかる。

もう一度書く。気象庁は「九州全体で(最大で)最大瞬間風速60メートル」という表示しかしていないことに比べてほしい。

これは驚くべきことだ。

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自分のミスにより、長崎市だけ表示して、長崎半島の先端「野母崎」に旗を立てて数値を事前に読み取っていないので、全国で最も大きな最大瞬間風速を示した地点を読めなかったことが心残りだが、それにしても他の地点の予測値は極めて実態に近かった***。

注目すべきは、この予報は、NHKの夜のニュースより遥かに早い、6日(日)12時のものであることだ。18時ぐらいのものを使えば、さらに正確に表示できたであろうことが期待される。

最大瞬間風速は、とくに停電との関連が高い。

だから、最大瞬間風速の強弱を伝えることはとても大切だ。

今回、山口で停電が多かったことは、NHKの7時のニュースを見ている限りでは、まったくわからないことだったと思う。60メートルより低いという漠然とした印象しか形成しないのではないだろうか。

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ぜひ今後、風速についても、カラーマップで示してもらいたいものだと思う。

最後に、6日(日)12時にスクショした、Windy(GFSモデル)の画像を貼っておく。

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ECWMF: The European Centre for Medium-Range Weather Forecasts(欧州中期予報センター)

** GFS: The Global Forecast System(アメリカ海洋大気庁)

*** ただし、最大瞬間風速を記録した時刻は、かなり前後した。

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