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タロウと山へ

1060文字

夫は毎朝リードを持って、(タロウと)散歩に行きます。

リードを持っていつものように散歩に行くけれど、散歩道はタロウとの思い出がいっぱいありすぎて辛くて、まだまだ相当応えているみたいです。

きのうのこと、そんな夫に「きょうは、タロウの写真を持って出かけよう」って提案しました。

車に乗るのは大好きだったけれど、カミカミ犬だったタロウが出先で人を咬んでしまった時のことが心配で遠くへ連れて行ってあげたことはありませんでした。タロウにとって車の外出は病院か狂犬病の予防注射くらいで、楽しい思い出はなかったと思います。だからこれからはタロウをいろんなところへ連れて行って、いっぱい楽しませてあげよう!

行きは夫が運転したので、私は助手席でタロウの写真を窓の外へ向けて、「タロちゃん、きょうは出かけるよ~」「きょうは楽しいけんな~」って言いました。

昨年は台風がたくさん来て、紅葉する葉っぱも風で揉まれてきれいに紅葉しなかったのが、今年の山の風景は見事に紅葉していて、「タロウ、見える?きれいやなぁ✨」って車窓から一緒に見ました。

夫も少し気持ちが和んだようでした。でも帰りはやっぱり早く帰ってあげなんだらいかんって気持ちになったみたいで、夕方暗くなってタロウが独りぼっちで待ってるような気がするって言います。

私は夫の気持ちも分かるけれど、「それはタロウの気持ちじゃなくて、どうしようもなく寂しい『あなたの気持ち』だと思う」って少し厳しく夫に言いました。

タロウを想う気持ちは解る。でもそうやって落ち込んでいる姿をタロウは喜ぶだろうか。

「タロウは、車に乗る時は嫌な思い出しかなかったでしょ。だからこうやってタロウの写真と一緒にドライブすることで、タロウ自身の嫌な思い出を楽しい思い出に上書きしているんだよ、私たちも同じ。悲しい気持ちを楽しい気持ちに上書きしようよ」って夫に言いました。

夫は、「そうやなぁ・・・」としんみりと言っていました。私も辛いです。

私は母が亡くなった時も、ずっと沈んでいる私の姿を母は心配するだろう。私が幸せそうな顔をしていたらきっと母も喜んでくれる。そう思って自分の気持ちを奮い立たせました。

夫の心に私の言葉が響いたかどうかはわかりません。でもこれからは行けなかったところへタロウを連れて行ってあげよう。いろんなところへ連れて行ってもらっている自分を、タロウも天国から見て喜んでくれると思うよ。

寂しい沈んだ顔をタロウは望んでないからね。だから私たちも元気出そうよ✨😊


最後までお読みいただきありがとうございます。

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