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国内子ども向けプリペイドカード戦争の考察

子ども向けオンライン動画制作教室「FULMA Online(フルマオンライン)」を運営するフルマの齊藤です。

本日スマートバンクさんがB/43ジュニアカードを発表しました。
個人的には「ついに本命がきたか」という印象だったのですが、国内の子ども向けデビットカードを提供する各社を比較しながら、今後起こりうることを考察していきたいと思います。

国内でサービスを提供しているベンチャー企業

子どもと親の為のお金のアプリケーション「manimo」

株式会社MEMEさんが提供しているのが「manimo」です。

2021年に設立された会社で、2022年2月にサービスサイトがリリースされています。国内のベンチャー企業で子ども向けにデビットカードを提供する会社として僕が認識したのはmanimoさんが初めてで、金融教育の文脈から起業されている点も含めてとても素敵だなと思いました。

親子で良いお金の習慣が身につく、子ども向けプリペイドカード「シャトルペイ」

シャトル株式会社さんが提供しているのが「シャトルペイ」です。

2019年に設立された会社で、2022年7月にサービスがリリースされています。(2022年1月にβ版がリリースされていたようです。)
代表の見原さんが元メルペイ出身だったり、リリースと同時に5.5億調達の発表がされたり、三菱UFJをはじめとする金融機関を巻き込んでいたりと、大人の戦い方をされていて、すごい。と思ったのが初めの印象でした。

子供・学生のためのお小遣い帳アプリB/43ジュニアカード

株式会社スマートバンクさんが提供しているのが「B/43ジュニアカード」です。

2019年に設立された会社で、2022年11月にサービスがリリースされました。正確には、現在事前登録受付状態であり、今年の冬に期間限定でテストユーザーになれるようです。スマートバンクさんはB/43というプリペイドカードを既に提供しており、新しいサービスとして子ども向けにも提供が始まるようです。2021年に10億円の資金調達が完了しており、何よりも経営陣が強いので、今後の動向が非常に気になります。

海外の成功事例

Greenlight

一番有名な子ども向けデビットカードの事例はGreenlightです。

2017年のサービス開始以来、2022年までにアメリカ国内の500万人以上が利用登録しているといわれており、ユーザーは月々4.99ドルで家族5人分までデビットカードを作ることができます。貯金だけでなく、親がお小遣いを渡したり、お手伝いしたらお金を渡したり、貯めたお金に金利をつけられたり、投資まですることが可能です。
2021年時点で評価額は23億ドルにもなっていることからも注目の高さが伝わってきます。
世界のトップランナーを走る存在として、国内の子ども向けプリペイドカードを提供している会社は一つのベンチマークにしているのではないかと思います。

今後の行方と登り方の考察

今回紹介したベンチャー企業はいずれも2019年〜2021年に設立されており、コロナ前後という点も面白いですよね。フィンテック領域はガバナンスやセキュリティ周りのハードルも高く、サービス提供者のみなさまに対しては本当に尊敬の念が溢れます。

これらのサービス以前にも、三井住友が子どものおこづかい管理の悩みを解決する「かぞくのさいふ」など、いくつか子ども向けプリペイドカードもありました。そんなに爆伸びしている印象はありませんが、どうなんでしょう。

もしベンチャー各社が伸びているとなれば、さらに市場に入ってくる企業が増えることも想定されますが、まずは現段階でどんな未来が想定されるかを考えてみたいと思います。

まず、競争を勝ち抜くためには大きく3つの方法考えられます。
(もっといろんな戦略があるとは思うのですが、僕が勝手に3つ方法を考えてみました。またプロダクトが最重要な前提ではありますが、それ以外の側面から考えてみました。)

圧倒的な資金調達を行い、早い段階からマーケティングを大胆にしかけて登るパターン

ママコミュニティや子どもたちの中で、初めて持つカードは○○!という第一想起を取ることができれば、大きく抜け出せるわけですが、そうなると多額の費用が必要になります。

また、現段階でアプリを使ってお小遣いを管理できる保護者の層、さらにそこにお金を払う、という層はまだまだ限定的な可能性もあります。
そのため、獲得単価をどう抑えながら、マスに広げていくかが重要になります。

またフィンテック領域のため、ガバナンスやセキュリティ面でもコストがかかるため、資金的な体力は必須になるのではないでしょうか。

教育領域から登る戦い方

今年から高校で金融教育が必修化されました。
よって文科省をはじめ、教育現場でも金融教育分野はホットトピックです。
うまく文科省や経産省と組むことができ、学校現場に入って、学校経由でサービスが提供できるようになると、最強かなと思います。
もちろんハードルは高いですが、一度築いた壁ができると、他社はなかなか参入できなくなります。
よって無償でも学校に配りまくり、金融教育も頑張り、現場に入り込んでいき、最終的に使ってもらうところまでもっていく、というのは一つの登り方になるのではないでしょうか。

交通系電子マネーから登る戦い方

これは完全に事業提携ありきな話ですが、首都圏など人口の多い地域から広げていく前提に立った場合、交通系電子マネーが一番子どもに対してカードを渡すのが現実的なシーンだと思います。
あってもなくてもいい状態よりも、必要なシーンにドンピシャで渡すことができれば、結構強いと思うんですよね。
もちろん全国隅々までとなるとハードルは高いですが、電車やバスを使っている子どもたちとその保護者をターゲットにして、一気に広げることが可能になる可能性もあります。

感想

現状はスマートバンクさんが強そう

個人的にはスマートバンクさんが子ども向けデビットカードに本気で力を入れ始めたら一番つよそうだなという印象で、理由は2つあります。

一つは、マスに広めるにしろ、教育から登るにしろ、一定の資本体力が必要な領域であり、資金調達力は圧倒的にスマートバンクさんが強い印象だからです。経営陣の過去のトラフィックとスキルを考えると、一つ頭が抜けている印象があり、なかなかその壁を超えるのは大変そうだなと。

もう一つはスマートバンクさんは既にペアカードを提供しており、10年〜20年後に既存ユーザーに子どもができた場合、彼らがユーザーになる未来があるだろうなぁと思います。
10年〜20年経てば、現在のデジタルネイティブ世代が親になっているので、マーケティングコストも下がる可能性もあり、そのぐらいの時間軸でみると面白いなぁと思ったります。

逆に他の事業者が勝つとなると、どこか大きな資本を味方につけ、教育文脈で尖り切るぐらいしかパッとは思いつかないですね。。。
スマートバンクさんは他にも投資したい領域があると思うので、ベンチャーVS大企業の新規事業室、のような構図ができ、全集中で伸ばせば勝ち切る未来もあるかもしれません。

大企業の参入があるか

あとは大企業が入ってくるかどうかですが、ここは正直わかりません。
子どもの数自体は減少しているので、将来的な子ども教育市場と見れば、自分達でやるよりも、どこかを勝たせるために協力した方が楽だなと思うかもしれません。

ただ、当たり前ですが、子どもは将来大人になるので、潜在顧客を育てる、未来の顧客を先に獲得する文脈だとすると、十分魅力的なマーケットではあります。

おそらく既存のベンチャーが参入されて嫌な企業ランキングトップ2は、
PayPay×LINE連合と楽天連合だと思います。

その二社が本気で参入してきたら、いよいよ戦国時代です。
その前に、買収するしかないと思わせるか、勝てないと思わせるか、、、
いずれにせよスピードが求められる領域なので、大変ではあります。

もう一つ教育企業系で参入されたら嫌だと思いそうなのは、リクルートかベネッセあたりでしょうか。
リクルートはスタサプがあるので、学校とのパイプが既にあること。さらに営業力も強い。
ベネッセは圧倒的な顧客基盤、特に進研ゼミは小学生600万人中130万人が使うサービスです。本気で一気にやれば一定のシェアは取れそうに思います。

paypay、楽天、リクルート、ベネッセあたりは、顧客IDを手に入れることができ、かつ決済も抑えられるとなると、一気に魅力的に思う可能性もあり、生涯LTVから逆算すると、ただでサービスを提供する、みたいな大胆な事業者が出てきてもおかしくありません。こわいですね、いや、楽しみです。

個人な想い

ビシネス的な視点で書いてみたものの、自分は教育事業者として、子どもたちには正しいお金の知識や経験をして欲しいと考えており、お金を学ぶ生きた経験として一人1枚子どもがカードを持つ未来って素敵だなと考えています。
おかねの教育はタブー感も少し前はありましたが、今ではだいぶ改善されてきたように思います。
各社の競争は今後激化していく可能性もありますが、結果として子どもたちにとっても親にとっても魅力あるサービスが溢れたらいいですね。

ぼくには子どもがいないので、上記のサービスを使ってみることができないのが残念ですが、ぜひ使った方は感想を教えてください!

今後の動向が楽しみです!

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