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東大ロボAI研究者から見た偏差値に影響する要素は何か?AI VS.教科書が読めない子どもたち

子ども向けオンライン動画制作教室「FULMA Online(フルマオンライン)」を運営するフルマの齊藤です。

東大ロボと名付けた人工知能を我が子のように育ててきた数学者の新井紀子さんが書いた本が「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」です。
(記事下部にリンクを掲載させていただきました。)

よく「AIが神になる」「シンギュラリティが到来する」と言われたりしますが、人工知能の第一線で活躍している新井さんはキッパリと否定しています。

ただ、仕事がAIにとって代わられるか、という点については、否定できないと考えており、その理由は教育現場を見ていて感じるそうです。

なぜそう感じるのか、私たちが気づいていない課題について触れられています。

東大ロボの開発理由

東大ロボを開発した理由は、AI技術を使い、東京大学に入れることを証明したいわけではなく、AIはどこまでのことができるようになり、どうしてもできないことは何かを把握することでした。
それが今後AI時代が到来したときに、AIに仕事を奪われないために人間はどのような能力が必要なのかを自ずと明らかになります。
そのために、AIのさまざまな技術とその研究者の粋を結集させて検証しようとしたのが東大ロボの開発背景です。

東大ロボは既にMARCHに合格、論述でも偏差値76に

プロジェクト開始当初は、受験生の平均点にも達していなかった東大ロボですが、3年後にはMARCHの合格80%圏内まで到達しました。
さらに東大プレの数学2時試験では、6問中4問を関東市、偏差値は76.2まで上がり、全受験者のトップ1%に入る成績になりました。

もちろん科目が限定されているということはありますが、労働力としてライバルになる可能のあるAIが既にMARCHや関関同立に合格できるレベルだとすると、私たちの社会はどう変わり、人間はどんな力が必要になってくるのでしょうか。

基礎読解力は人生を左右する

基礎読解力があった方がいいのは分かるけど、人生を左右するというのは騒ぎすぎじゃない?
と思う人もいると思います。

しかし、読解能力値と偏差値の相関は「身長と体重」「駅からの距離と家賃」と同じぐらい、滅多にお目にかかれないほどの相関があることがわかっています。

そんなに重要な基礎読解力ですが、全国2万5千人を対象にした調査で、中学校を卒業する段階で約3割の子が内容理解を伴わない表彰的な読解ができていないことがわかっています。
また学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできないのです。進学率100%の進学校でも正答率は50%という現実を受け止めなければなりません。
つまり教科書をちゃんと読めている生徒が驚くほど少ないという現実を直視する必要があるのです。

興味深いのは、偏差値の高い高校にいる生徒の読解基礎力が高いのは、
A「偏差値の高い学校に通った結果、基礎読解力が高くなったのか」
B「基礎読解力が高かったから、偏差値の高い学校に入れたのか」
についての調査でした。
結論としては、Bであり、基礎読解力がもともと高い人を集めているから、高校としての偏差値が高い、という結果になりました。

また「御三家」と呼ばれるような超有名私立中高一貫校の教育方針は、教育改革をする上で何の参考にならないこともわかりました。
なぜなら、そもそもそのような学校は、12歳の段階で、公立進学校の高校3年生程度の読解能力値がある生徒を入試でふるいにかけているからです。

そもそも、そのような入試をパスできる能力があれば、各学校の教育方針に関係なく、教科書も問題集も「読めば分かる」という状態であり、スタートの時点でそもそも東大に入れる可能性が他の生徒よりも圧倒的に高いのです。

何が基礎読解力を決定するのか

ここまで読むと、では何か基礎読解力を向上させるのか、身につくのかと気になると思います。

まず思いつくのが読書ですよね。
読書の好き嫌い、読み始めた年齢、ジャンルなど細かく調査した結果、基礎読解力との相関は見当たりませんでした。著者自身も仮説と違いショックを受けたといいます。

続いて学習習慣。
1日の勉強量、習い事の内容、塾や家庭教師の有無についても調べましたが、これも基礎読解力との相関は見られませんでした。

では、得意科目の種類はどうでしょう。スマートフォンの使用時間はどうでしょう。性別はどうでしょう。
どれも基礎読解力との相関はみられませんでした。

残念ですが、明確に基礎読解力との相関がある要素というのは、現時点で発見されていないのです。

ただし、マイナスの相関がある項目はわかっています。
それが「就学補助率」です。
つまり経済的な理由などで就学困難な状況に陥っている生徒かいなか、つまり貧困は基礎読解力にマイナスの影響が出ることがわかりました。

基礎読解力を向上される要素として希望の光があるとすれば、教える側が質問内容以前に、文章をちゃんと読めていないかもしれない、という前提で工夫をする努力ができるか、という点です。
これは埼玉県戸田市が独自に先生たちが集まり、どうすれば読めるようになるのか授業の中で毎週のように検討した結果、これまで埼玉県で中位だったテストが、中学校1位、小学校2位に急浮上したのです。
まだ因果関係の検証も必要ですが、一つの可能性を示唆したともいえます。

さいごに

今回は著書の中で、特に子どもたちにとって必要な力である「基礎読解力」の重要性についてフォーカスを当ててまとめてみました。

子どもの点数が全然伸びない、とお悩みの親御さんは
そもそも文章を読めているのか、内容が理解できているのかを質問したり、聞いてみるとよいのではないでしょうか。

この本には東大ロボの研究を通じて、AI技術を使いどのように問題を解こうと試みてきたかについて、非常に詳細にかかれています。特に科目ごとにバラバラのアプローチで試験に挑みながらも、その限界を感じる理由について分かりやすく解説されているので、研究内容も含めて知りたい方はぜひ本を読んでいただきたいと思います。AI研究の最前線にいる研究者が考える未来図も描かれているので興味がある方はぜひ!



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