見出し画像

忠誠葛藤に配慮し間接交流の原審を直接交流に覆した審判例

「別居親である抗告人(父)が、同居親である相手方(母)に対し、前件調停事件の調停条項にもとづく面会交流が実施されなくなったとして、未成年者らとの面会交流を求めた事案において、間接交流のみを認めた原審判を変更し、従前の父子関係、直接交流時の状況、未成年者らの心情等からすると、直接交流を禁止すべき事由は見当たらず、これを速やかに再会することが未成年者らの福祉にかなうとして直接交流を認めた事例」(判例時報2447号より)

子の監護に関する処分(面会交流)審判に対する抗告事件、大阪高裁令1(ラ)1036号、令1.11.8民事部決定、変更(確定)

原審神戸家裁令1(家)571号ほか、令1.7.19審判

【主文】

1 原審判を次のとおり変更する。

2 当事者間の(略)について、(略)に成立した調停の料亭条項中、抗告人と未成年者らの面会交流に関する調停条項5項を次のとおり変更する。

3 相手方は、抗告人に対し、本決定が確定した日の属する月の翌月以降、別紙面会交流記載の容量により、未成年者と面会交流させよ。

4(略)

【理由】(抜粋)

(略)長女は、抗告人に会いたいと思う一方、相手方の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており、この状態が続けば、長女に過度の精神的負担を強いることになる。したがって、抗告人と未成年者らの直接交流を速やかに再会することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当である。(略)

(略)相手方は、心身の不調を理由に間接交流に止めるべきであると主張する。(略)直接交流に応じることによって健康状態が悪化し、未成年者らの監護に支障を来たしたり、未成年者らに不安を与えたりする状態に至るとは考えられない。また、相手方は、抗告人との接触を避けることが望ましいと診断されているが、未成年者らの年齢(9歳、6歳)や発達状況から察すると、当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば、受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから、相手方と抗告人が直接対面することなく未成年者らの受け渡しができないわけではない。したがって、相手方の心身の不調は、直接交流を禁止、制限すべき事由にはならない。相手方の主張は採用すべきではない。(略)

裁判長裁判官 松田亨 裁判官 上田日出子 裁判官 惣脇美奈子

★参考★ 面会交流を直接交流から間接交流に変更させ、その後に抗告審で覆された家裁の原審判

【理由】(抜粋)

(略)相手方は、申立人が現状に至る経緯について十分に説明していないとして不信感を募らせ、主治医から、心身の不調を来す原因となる申立人との接触を避けることが望ましいと診断されたことを併せ考慮すると、当面は申立人と未成年者らとの面会交流を実施することは相当ではない。(略)

裁判官(部総括判事) 永井尚子


本業の他に,子育て支援員や面会交流支援員など家族問題に関わる社会活動をしております。 https://tarokojima.themedia.jp/