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虫よけできる日焼け止めだけに頼ってはいけない!話

こんにちは、化粧品技術者の たろ です。
暑くなってきて日焼け止めとともに虫よけも準備しなきゃいけない時期です。近年、日焼け止めと虫よけを兼ねたオールインワン製品を見ることがあり、いいじゃん!と思って使ったら結構刺されました。(体験談)
当時はなんだー残念、としか思わなかったのですが、化粧品の研究所に勤務して、この問題を理解できる能力ができたので解説します。
 虫よけできる日焼け止めだけに頼ってはいけません。必ず虫よけ剤を併用しましょう。 

【おススメ】
医薬品の虫よけは有効成分のディートを30%まで配合できます。
医薬部外品(~10%)に比べ持続性が高くコスパも良いのでおススメできます。
ただし、「12歳未満の小児には使用しないこと」との表記がありますのでご注意ください。

薬事的な話 法律は?

(2020/5/14リライト)
日焼け止めは薬用化粧品ではなく一般化粧品であるとコメントをいただき、訂正いたしました。先のnoteでは薬用の日焼け止めは医薬部外品の効果効能に、一般化粧品である日焼け止めとしての効果効能を加えたハイブリッドなものを想定しておりました。特殊な例を一般化して書いてしまったので誤解を招く表現でしたのでお詫び申し上げます。

現在の薬機法では虫除け(忌避剤)と日焼け止め(一般化粧品もしくは薬用化粧品)はそれぞれ別カテゴリーとして認められていますが、ダブルで同時に標榜することは認められていません
そのための虫よけができる日焼け止めというのは法律上、日本の市場には存在しないことになります。しかし検索してみると結構製品が出ております。
さらにまとめ記事も多く存在し、堂々と紹介されています。
僕はこれにやられました。どういう仕組みなのでしょうか見てみます。

図9

簡単にまとめるとこのようになります。
緑とそれ以外をまたぐことはできないので、虫よけを謳うとSPF表示ができない日焼け止めにするとディートを配合できない等の問題が生じます。

メーカーはどう標榜しているの?

日焼け止めに虫よけできます!と書くと薬機法違反になってしまうので、製品のメーカーは「夏の外敵」など間接的な表現をしています。
直接虫よけできるとは書いていません。あくまで虫が飛んでいる絵が描いてあるだけで、これが外敵であると消費者が想起してくれるようなパッケージになっています。また、虫が積極的に逃げていくような絵は描かれていません。うーん苦しい。。。

また、中には直接的に虫よけ効果を謳っているPR記事やメディアがありますが、薬機法違反です。そういうところは必ず消費者の利益よりも優先すべき何かを抱えています。信じてはいけません。

虫よけの有効成分 ディートやイカリジン

代表的な虫よけの有効成分はディートです。
ディート(DEET)とは、昆虫などの忌避剤(虫よけ剤)として用いられる化合物です。
詳しくはwikipediaをご覧ください。

>ディートの濃度5%では約90分、10%で2時間、30%で8時間、100%では10時間虫よけ効果が持続する。
>日本で製剤中のディート濃度は最高30%、医薬部外品では10%以下(wikipediaより)
つまり虫よけには10%~30%の配合が認められています。
繰り返しになりますが、日焼け止めには配合できません。

日焼け止めに入れられる虫よけ成分 メンタンジオールやユーカリ、レモングラス

次に、日焼け止めに入れられる虫よけ成分を見てみるとメンタンジオールが有名です。天然成分としてはユーカリやレモングラスなどのハーブから抽出した虫が嫌がるエキスが有名ですが、化学物質的な本質はメンタンジオールだったりします。ハーブから抽出するので特徴的ないい香りがします。

肝心なメンタンジオールの虫よけ効果はどれほどなんでしょうか。
実はディートよりも効果がある、というメーカー資料がありました。

図2

メンタンジオール1%配合でディートの約180%程度、10%配合で約105%程度の忌避効果がありそうです。すごいじゃん!
ぶっちゃけ、法律上標榜できなくても消費者に利益があれば目をつむることもできます。規制にまけずイノベーションを起こす企業ってかっこいいですよね。
ではなぜ僕は虫に刺されてしまったのか!?

配合量が足りない

答えはシンプルに配合量が足りないせいだと思います。
仮にメンタンジオールを10%入れた日焼け止めがあれば、恐らく全成分表示の2番目か3番目に表示されます。
市場にあるものはどうでしょう?

図3

図4

製品Aは1%以下、製品Bも2%です。
成分がメンタンジオール以外のレモングラス油やユーカリエキスでも同じと考えられます。
製剤化技術の観点から、日焼け止めにメンタンジオールを10%入れて高SPFを維持するのはかなり難しいと思われます。他にも香りが強すぎるかもしれない、刺激が強いのかもしれない、コストが高すぎるかもしれない、等々の理由が考えられ、現実的にメンタンジオールを10%以上入れた高SPFの日焼け止めというのは成り立たないと考えられます。
いかにメンタンジオールが優れていても、量が10倍も違うと敵いません。

結論:虫よけと日焼け止めを併用しましょう

虫よけ効果を謳った日焼け止めでは肝心の虫よけ効果が不十分であることが分かりました。僕が刺された理由はシンプルに量が足りなかったんです!
ではどうすべきか、シンプルに虫よけと日焼け止めを併用しましょう。

アメリカ疾病予防管理センター (CDC)では夏場など、日焼け止めと併用する場合は、日焼け止めを最初に塗り、その上に虫よけ剤を塗ることを推奨しています。そしてどちらも小まめに塗りなおしましょう。

ただし、乳幼児に使用する場合は注意してください。
厚生労働省からディートの安全性に関しての目安が提示されていますので参考にしてください。

まとめ

・虫よけ効果と日焼け止め効果を同時に標榜することはNG
・日焼け止めには虫よけ効果のある成分を十分に配合できない
・虫よけと日焼け止めは併用し、小まめに塗りなおす

コロナが収束し外で元気に遊べる日が来たら、虫よけと日焼け止めを忘れずに。早くそうなる日が来ることを願います。

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