「君たちはどう生きるか」を最近死にかけた人が見た感想

【記事本編に「君たちはどう生きるか」の具体的なネタバレはありませんがなんも情報入れたくないという方はご注意ください】

見てきました。「君たちはどう生きるか」。最近ちょっと死にかけて「どう生きよっかなー」と思ってたのでちょうどよかったです。

温度感としては「ジブリの宣伝してないやつ」「鳥の絵がいっぱいバズったやつ」「宮崎駿は引退したはずなのに新作を作ったけど引退しながら作っただけだからセーフ」くらいの情報で観に行きました。好きなジブリは豚と風です。対戦よろしくお願いします。

宮崎駿というとスーパーつよつよアニメおじいさんかつ、作品を通してちゃんと思想を出してくるタイプの貴重なご意見おじいさんであり、AIとかCGとかで極めて何か生命に対する侮辱を感じるタイプの生きろ生きねばおじいさんだと認識しています。宮崎駿のドキュメンタリーの「あーめんどくさいめんどくさい」って言いながらアニメ作ってるシーンが大好きなんですが、まあいろんな意味でめんどくさいおじいさんなんだなあと思っています。めっちゃ好きだけど絶対飲みに行ったりはしたくないタイプ。

やたら「生きろ」とかまっつぐなこと描くのは好きな部分です。多分日本でTIMの次くらいに「命」って言ってるんじゃないでしょうか。僕が昔っから「生きるとは～生命とは～」みたいな話が好きなのも幼少期に宮崎駿作品を通過した影響があるのかもしれません。幼少期に僕があまりにも「となりのトトロ」のビデオばっかり見るので母親が気が狂いそうになったことがあると聞きました。

前作「風立ちぬ」も「生きねば。」とかいう「そうですね」としか返しようのないストレートなコピーが気に入って、観に行ったらめちゃくちゃにぶっ刺さったのを覚えています。そんな駿が引退してなお「君たちはどう生きるか」とか問いかけてきた。さすがにしつこすぎると言わざるをえないでしょう。

「生きろ」「生きねば」くらいなら「そうっすよね。わかります」と流せますが、「じゃどう生きんの？　ん？　聞かせて？　具体的に」と追及してきたわけです。めんどくせージジイの極みすぎる。最高です。

「命とは」「生きるとは」みたいな表現はもはや手垢にまみれまくって犬も食いませんが、宮崎駿という垢のご本尊みたいなおじいさんが死に際に言ってくるなら煎じてがぶ飲みにしたいのが人情というものです。で、飲みました。どうだったか。

このおじいさんずーーーーーーーーーーーーーーーーーっとおんなじこと言ってるな！！！！！！！！！！！！と思いました。

こう書くと褒めてるのか貶してんのかよくわかんないかもしれません。実際僕もよくわかんないです。宮崎駿本人も「自分でもよくわかんない」と言ってたらしいので誰もわかんないんじゃないでしょうか。

ただ、なんか宮崎駿ほどの人物でも最期までおんなじこと言い続けるんだな、という事実に奇妙な迫力がありました。最近でっかい病気で死にかけた者として言うと、マジで死ぬかもしれんという瀬戸際でも本人は「お水飲みたいな」とか「お風呂入りたいな」とか思ってるし、なんかそういうの一生変わんないんだなと。

あれだ、前に医療系のドキュメンタリーでもう病気の末期で家でゆっくり亡くなっていくだけって老人のことやってて、どんどん衰弱していくんだけどヘルパーさんに体拭いてもらってるときにその老人が「あー気持ちいい」って心底幸せそうに言うんですね。それ見たときの感情に近い。それがどんな感情なのか言えよって話ですが、切ないような嬉しいような微妙な感情で、明言すると台無しになっちゃいそうなので言えない。

「もしかしたらこれが最後になるかもしれないから…」というちょっとセンチな気持ちで宮崎駿おじいちゃんのお見舞いに行ったら、昔なんべんも聞いた「戦争が～命が～愚かな人類が～」という話をまた聞かされて「まだそれ言ってるのおじいちゃん」と思った感じ。でも昔はブチ切れたり爆泣きしたりしながら話してたけど、なんだか今回は淡々としていて、もう次は会えないかもと思うとあんまり茶化したりもできず黙って聞いて帰ってきた。そんな感じでした。

作品としての感想を何にも書いてないですが、僕たちはもうジブリのあの絵で人が走ったり鳥が飛んだり飯をモリモリ食ったりするだけで細胞が喜ぶように調教されているので、それに関しては必要十分量のジブリを浴びれました。久しぶりに実家のベッドで寝たら別に最新のエアーマットレスとかじゃないのに妙に体に馴染む、みたいな感じ。

面白かったのか面白くなかったのかマジでよくわかんないですが、見といてよかったなとは思いました。宮崎駿おじいちゃん、たまに何言ってんのかわかんなかったけど気持ちはちゃんと伝わりました。これからも少しでも長くお元気で「めんどくせーめんどくせー」言いながらアニメ作ってください。こっちもめんどくせーって言いながら見に行きます。生きてれば。

（言いたいことは以上です。以下ネタバレ含む雑多な感想）