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『デデデデ』後章は「闇のドラえもん」の完成形で“あした地球がこなごなになってほしい人”のための映画だった

浅野いにおに愛憎を抱いている亡霊です。先日苦しみながら絶賛寄りの記事を書いてしまった映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の後章を見てきました。

あんだけ言ったわりに忙しくて見に行くのがだいぶ遅くなってしまった。公開から結構経つのである程度ネタバレ気味のことも含みます。


結論:めちゃくちゃよかった

この映画は以前から浅野いにおによる「原作とは違うラスト」が描かれると発表されていました。言うたら僕みたいないにおファンチはそのラストのお手並みを拝見するために後方腕組みベガ座りでスクリーンを凝視してたわけですが、そのラストがびっくりするくらいサイコーでその場でおしっこを漏らしてへたりこんでしまいました。

詳細は後述しますがあのラスト、めっちゃいいと同時に「いにおのそういうとこが見ててめっちゃ恥ずかしいんだよ!」でもあった。でもめっちゃいいと思ってしまった。それがめっちゃ恥ずかしかった。そういう複雑なサブカルこじれ感情が渦巻いておしっこジョバジョバでした。まさに「すっげードキドキしちゃったじゃねーかクソがー!」という気持ちでした。

このセリフもめっちゃいにお的

「闇のドラえもん」としての完成形

『デデデデ』は“もしも浅野いにおがドラえもんを描いたら”という作品です(登場人物の名前も藤子F不二雄キャラのもじり)。後章では人類や侵略者側のスケールのでかいいろんな思惑が明かされていって日常モノとセカイ系の合いの子感がいや増しますが、基本的には「闇のドラえもん」をやってるんだな、と思って見ると理解がスムーズになるかと思います。「地球がクソやばい」というシンプルなSF設定に現代人の当たり前の悩みを持ち込んだお話。円盤は「地球はかいばくだん」ですよね。

デデデデというか浅野いにお作品の特徴ですが、どのキャラにもちょっとずつ人間の醜悪さみたいなものが含まれています。NAVERまとめを参考にしてデートプラン立てる門出とか、田舎から出てきてキラキラした正義感でデモ参加してるふたばとか。

そういうちょっとした“毒”が積み重なって麻痺していくことで、空に何年も巨大UFOが浮いてて異星人が野良猫みたいにうろついてる異常な日常で「なんか毎日しんどいから世界滅びね~かな~」ってなるような人物たちができあがる。そいつらの無責任で自己中心的で等身大な凡人っぷりが染みるんだ。

「宇宙からの侵略者が人類より弱い」みたいなのもいにお的リアリズムを感じる。悪そうなやつのいい部分や、いいやつの中の嫌な部分を描く、という浅野いにおのトロの部分を存分に楽しめます。

ラストで全てが浄化されそうでされなくてちょっとされる映画

まあでもそういうごちゃごちゃした論評が全部どうでもよくなるくらいラストがよかったです。原作読んでた勢としては「あ、ここで終わるんだ!ええやん!」という感想。本来は「その後」にあたる部分が最終12巻で色々描かれるんだけど、ここやるの時間的にも映画の構成的にもどうなんだって感じだったので納得ではありました。

こっちはこっちで面白いです。ここまでちゃんと描くのは浅野いにおのえらいところな気もする

前章からクソデカ予告演出されていた「人類滅亡まであと○日」のその瞬間がちゃんと訪れる(パチンコ化したら絶対使われるカウントダウン演出)。そこででんぱ組の「あした地球がこなごなになっても」が流れて世界や人が爽やかに消し飛んでいく。

この曲は浅野いにおが2015年に作詞したものですが、この映画のために作ったとしか思えない完璧なテーマソングになっています。これも旧ドラえもん映画で毎回海援隊の主題歌が劇中に挿入されるアレのオマージュなんでしょう。むちゃくちゃに美しい数分間のスクリーン体験でした。

で、「全部ぶっ壊して胸糞バッドエンド」にするのかと思ったら、そうではなかった。そうしてたら僕は浅野いにおの反転アンチに逆戻りしてたと思いますが、ちゃんと他の登場人物の思いや頑張りが少なからず反映される形になっていて、クソみたいな毎日はこれからも続く、地獄でなぜ悪い!といった感じの結末になっていて、僕は「こんなの……最高じゃん!」とただのいにおファンに戻ってしまいました。LOVE FOREVER……。

という感じで映画『デデデデ』、意外と言ったら失礼ですがほんとにすごいよかったです。人によって好みはあると思いますが、クオリティは間違いないし、IPに力があればとんでもなく絶賛されてておかしくない傑作だと思う。

前章でも言いましたが原作より映画のほうがテンポや構成がスッキリしており、めちゃくちゃ上質な映像化なのでいにお成分が苦手な人ほど見てほしい。なんかマジで売れすぎない程度に売れてほしい作品だなと思った。究極、前章見ないで後章だけ見てもらうでもいいです。話とか多分雰囲気でわかります。

個人的おすすめとしては映画の前後編を見て、漫画の11、12巻(映画のラストと続きの部分)を読む、というコースはどうかなと思います。それで気に入ったらあらためて漫画1巻から読んだらいい。サブスクとかきてからでもいいので、よかったら『デデデデ』をどうぞよろしくお願いいたします。いにおのファンより。

以下、完全ネタバレでの思ったことあれこれ。

ネタバレ小ネタ

・大葉の中身怖すぎ問題

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