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同僚が、会社を辞めた。(あるいはエイリアン論)

同僚が、会社を辞めた。

会社では三年以上先輩に当たり、学年では二つ下の、お互いに三社目として入った会社の同僚が。転職組には社歴も年齢もあまり関係ない。彼は、新型コロナで自宅勤務となるまで、よく昼を共にするメンバーの一人だった。友人というのが一番近しい表現かもしれない。彼は隣の部署で、僕と近いような遠いような仕事をしていた。大きな括りでは同じだったけれど、求められるスキルはかなり異なるし、負荷のかかり方の波やプレッシャーの質、プロジェクトにおいて深く関係する人間の多さも相当に違う仕事をしていた。

僕は、自分のアンテナの広さは人並み以上だと思っている。時間さえ許せば日経新聞やビジネス誌を一紙/号読み切るのにワクワクしながら一時間かけられる(ビジネス誌に一時間は嘘かも)。元々好きだった家電やエレキ系に加え、新卒就活の時に目指した化学や素材系、キャリアの中で通ってきた鉄道やIT、洗剤などの日用品なども、僕の広くて浅いアンテナが反応する分野だ。

会社を辞める彼は、僕よりも広いアンテナを持っていた。その守備範囲にはよく驚かされたものだ。そして彼の本領は、その広さよりも深さにある。アンテナが広いうえに、これと決めたものに関しては深く深く潜っていくのだ。従来型のジェネラリストになるのではなく専門性も兼ね備えろ、という文脈でT字型だのΠ型だのという人材のタイプが出てくるが、彼の嗜好は横幅も広ければ下に伸び出た足も多くそして長い、いい喩えが思いつかないがエイリアン型とでも表せるようなタイプなのだ。深さも実に粘っこく(誉め言葉)、実践を重視するところが素晴らしい。そのエイリアンぽさ(誉め言葉)は自然と漏れ出て、日常の言動にも表れ、それでいて嫌味ではない。彼は自らについて陰キャという表現を使うが、僕から見たらとんだ陽キャのマルチヲタ(いうまでもなく誉め言葉)である。人を惹きつけてやまないキャラクターの持ち主なのだ。

二年ほど前だろうか、彼はワークでもライフでも厳しい状況にあった。そのどちらをも乗り越え、自らの糧とした彼は、エイリアンみも成長させた。この二年でまた一本、二本と新たな足を増やし、傍から見るとそんなに? と驚くほどにニョキニョキと育てた。具体的に書けないのがもどかしい。そして、今回の転職も、彼は糧とするだろう。リアルで気兼ねなく会えるようになるころには、新たな職場・同僚・仕事の中でアンテナが活性化され、見たことのない立派な足が増えているに違いない。

同僚が、会社を辞めた。バイバイ、またね。

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