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相手の立場に立って考える。

近々、私のコミュニティで「具体と抽象」をテーマにした講義を控えています。

それに向けて『具体と抽象』を読み直しているのですが、確か3年ほど前に読んだ時と比べて、解釈の仕方や入ってくる内容が大きく変わっていると感じました。


今回は、人の意識における具体抽象レベルについて、感じたことを共有していきます。


立場によって「具体抽象レベル」は異なる。

「人に話が伝わらない」という経験は、誰しもあると思います。

以前、「説明下手を解決する」というテーマで記事を書いたのですが、今振り返るとその当時に書いた内容に、大きな要素が欠けていたと猛省している次第です。

上記の記事では「相手のことを考える」という抽象度の高い考え方が重要だと伝えていて、その要素で「相手の情報量」のみにフォーカスしていましたが、相手の「具体抽象レベル」がもっと重要だと感じました。


というのも、情報量が同じでも、具体抽象レベルが異なれば、話は伝わりません。


よくある話で、上司と部下の仕事の依頼の仕方の例を挙げます。

「今の一連の業務を効率化したい」という課題があり、部下がその効率化の施策を行うことを頼まれたとします。


ここで、上司と部下の立場の違いを考えてみましょう。

もしも、部下が上司の言葉を受け取って、そのまま業務効率化を図ろうとすると、「自分が担当している範囲」の効率化しか行えません。これは、部下にとっては当然のことで、見えていない世界を見ることはできないからです。

反対に、業務全体を俯瞰してみて、自分が担当している範囲以外の業務にも目を向けることができれば、上司により近い目線で考えることができ、全体的な効率化につながるでしょう。


前者の人間は、具体レベルが高い人で、
後者の人間は、抽象レベルが高い人です。

これは、どちらが良い悪いではなく、その人の立場によって求められる具体抽象レベルが異なります。

具体レベルの高い人は、すぐに効率化に取り掛かります。
対して、抽象レベルが高い人は、俯瞰して物事を考えてみたりします。

これも、どちらが良い悪いではなく、場面によって一長一短です。

例えば、具体が必要な場面で抽象しか語らない人は、目の前で生死の境を彷徨っている人がいるにも関わらず、なぜそういう状態になってしまったかを分析するようなイメージです。

「早くなんとかしろよ!」ってなりますよね。

このように、場面に応じて、具体思考と抽象思考のどちらが重要かを判断し、使い分けることが重要です。


相手の「具体抽象レベル」を意識して伝える。

先述した、具体と抽象の使い分けができるようになると、(特に、ビジネスシーンにおける)コミュニケーションはグッと楽になります。

というのも、認識の齟齬や話が伝わらない理由の1つが具体・抽象レベルの違いだからです。


相手が具体寄りなのか、抽象寄りなのか。
それによって伝え方を変えていく必要があります。

例えば、よく仕事のシーンで見かける上司と部下の会話で、部下から報告するときのことです。

部下になる人は、とにかく具体的に報告する傾向にあります。というのも、これは当然のことで、部下は直接的にそのプロジェクトに必要な仕事をしているからです。

だからこそ、目の前で自分が取り組んでいる内容に逐一報告できてしまうが故に、自分が持っている情報をたくさん並べてしまいがちです。


ですが、上司はそんな情報を知りたいわけではありません。

いわゆる、結論先行で話せと言われる所以はここにあります。


上司は、抽象度の高いテーマで仕事をしていることが多いです。そのプロジェクトの目的や会社の方針などを意識しながら仕事を進めていく必要があります。

つまり「解釈が人それぞれ」の話題を扱っているわけです。

逆に言うと、それぞれ個別の具体をあまり知らないというのが上司です。

だからこそ、部下の仕事の詳細な説明をされても何を言っているのか分からないことも少なくありません。

その結果、「それってつまりどういうこと?」と抽象度を上げてまとめることを求められてしまいます。


ここで大事なのは、部下も上司もお互いに「具体抽象レベル」を相手に合わせる努力をする必要があります。

部下目線で言うと、視座を上げると言うことです。
上司目線で言うと、指示や質問を具体化することです。

「この仕事どう?」とだけ聞かれても、部活は何を求められているのか分からず(というより、瞬時にその判断をできて考えられる人はほとんどいない)に、目の前の状況を話してしまうわけです。

部下から的確に情報を吸い上げたいのなら、自分自身の具体レベルを上げる必要があります。


反対に、部下自身も「相手はどのレベルの情報を求めているのだろうか?」ということを考えながら、上司とのコミュニケーションを取る必要があります。

とはいえ、立場も経験も分からない相手の具体抽象レベルを正確に測ることは、容易ではありません。

だからこそ、分からないのであれば聞き返して、具体抽象レベルをチューニングしていくことも意識する必要があります。


コミュニケーション1つ取ってもこれだけ奥深いものです。



相手に物事を伝える際には、第一に「相手のことを考える」というのは、どんな場面でも変わりません。

今回は、少し具体度を高めて「具体抽象レベル」に焦点を当てました。

ぜひ意識して、伝わるコミュニケーションを取れるようにしましょう。
仕事もプライベートも、きっとより良くなるでしょう。

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