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【デットリフト】怪我をしないための教科書〜腰痛を防ぐフォームと理論〜

今回は怪我をしないためのフォーム解説「デットリフト編」を書いていきます。
「ベンチプレス」「スクワット」に続き、第3弾となります。

この記事は、床引きデットリフトの中でも「コンベンショナルデットリフト(ナロースタンス)」の解説となりますが、
・〜〜に効かすフォーム
・筋肥大のために行う理由
・デットリフトで高重量を挙げる方法
などは一切紹介しておりません。

その代わりに「柔道整復師+トレーナー」の観点から、
体の構造から考える「怪我をしないためのフォームの理論と実践」を紹介しています。

デットリフトと怪我の関係を見ると「腰痛」が最も多く、現に「床引きデットリフトは腰を痛めるからやらない」といった声も多く聞きます。

ですが僕自身は「加齢による筋力低下」を防ぐことも加味して、腰痛を防ぐベストエクササイズは※デットリフト系の種目ではないか?と考えています。
※ルーマニアンを含む

もちろんヘルニアなどの基礎疾患がある場合は注意が必要ですが、デットリフトで腰を痛めるほとんどの原因が

・フォームを保てない無理な重量を挙げる(例:腰を丸める)
・スタートポジションを作れる柔軟性が無い
・バウンドして挙上したり、根性で挙げようとする
・そもそものフォームに大きなミスがある

など、自身のトレーナー経験からも「腰痛になる原因を自ら作っている」ケースが多いと思っています。

逆にそれらを排除すると、デットリフトは体の後面全体を鍛えることが出来る種目であり、体の後面を鍛えることは今〜将来的な「腰痛予防として最も重要」といっても過言ではありません。

本編では大きく4つの項目に分かれており

①1から始めるデットリフトの基本の動きと練習方法
②デットリフトの基本のフォームとコツ
③怪我に繋がるエラー動作と改善方法
④腰の怪我、ヘルニアの症状と原因

といった形で、腰の怪我に悩む方へ「デットリフト=腰痛」というイメージを払拭したく書きました。

もちろん、これから始める初心者さん〜フォームのコツを掴めない方にも良いヒントが得られるように「怪我をしないためにずっと大切な意識」を、自分なりにわかりやすく書いたつもりなので、これからの「トレーニング人生を楽しむため」に読んでもらえると幸いです。

それでは、デットリフトで鍛えられる主な筋肉を見た後に、フォームの解説をしていきます。


◯デットリフトで鍛えられる筋肉と意識

ざっくりと見ていきますが、デットリフトで鍛えられる筋肉は「体の後面の筋肉ほぼすべて」となります。

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体の後面の筋肉は年齢と共に低下しやすく、デスクワーク姿勢に多い「猫背」「巻き肩」「ストレートネック」などの原因にもなります。

上記の不良姿勢は「慢性的な腰痛」や「ヘルニア」の原因になったり、健康状態が悪化します。
逆に上手くトレーニングを行うことで、姿勢不良を改善するための大きな一歩にもなります。

そういえば少し前に、「デットリフトで広背筋が効くのか、効かないのか?」と話題になりましたが、個人的にはそんなことはどっちでもいいと考えています。

はっきり言えるのは「広背筋が機能しないと、腰を痛める危険性が大きく上がる」ことです。

個人の意見ですが、効く効かないの定義もはっきりしないことよりも「広背筋がデットリフトでどのような役割を果たしているか?」を知るほうが重要です。
※後のフォームの項目で詳しく解説します

「体後面全体の筋肉を鍛えることができる」と言いましたが、それぞれがどのような役割や機能を持っているかを理解し「怪我を防ぎながらトレーニング」することで、本当の意味で体に還元されると思います。

次は、デットリフトに最も重要な動き「ヒップヒンジ」を見ていきましょう。



◯デットリフトに必要な動きの習得〜ヒップヒンジ〜

デットリフトの基本を学ぶには、フォームのイロハや、実際にバーを握るよ
りも先に「ヒップヒンジが出来ること」が重要です。

「ヒップヒンジは出来るよ!」という方は、次の項まで飛ばしてください

ヒップヒンジの「ヒップ」は股関節を指し、「ヒンジ」は蝶番を指します。
※蝶番は上下左右には動かず、回転だけできる支点のことです(ドアについている開け閉めするための金具のイメージ)

ヒップヒンジ2

「ヒップヒンジ=股関節を支点に動かすこと」がデットリフトにおいて重要で、この動きが出来ないと「腰が支点の動き」となり腰痛へと繋がります。

デットリフトで腰ばかり疲労する方は、ヒップヒンジが上手く出来ていない可能性が非常に高いので、これから紹介する練習方法を試してください。


ヒップヒンジの練習方法

ヒップヒンジの動きは「お尻を後ろに引きながらお辞儀する」などのイメージを持ちます。
その際に「背中はまっすぐのまま膝も曲げない」ことが重要です。

ヒップヒンジ3

このままでは少し難しいと思いますので、動きのイメージをつける「3つの練習方法」を見ていきます。


①お尻で壁タッチ

(1)壁際に背を向けて立ち、靴一足分壁から離れるように一歩前に出る
(2)お尻を後ろに引く(お辞儀)イメージで、お尻で壁にタッチする

足裏の重心「母指球、小指球、踵」に均等に乗っていることが理想ですが、慣れるまでは踵重心でも問題ありません。

ヒップヒンジ練習1

感覚が掴めない場合は、骨盤の前側に手を当て、お尻を後ろに押し込みます。

具体的に押さえる位置は「上前腸骨棘」という「骨盤の骨が出っ張っている場所」を指で押さえて、お尻を後ろに押し込んでください。

上前腸骨棘

ひぷひん

お尻を後ろに押すイメージが難しい場合は「押さえた指をお腹と大腿で挟むイメージ」でも良いです。

ヒップヒンジ練習 3

ヒップヒンジ練習4

慣れてくると壁からの距離を少しずつ離してヒップヒンジ動作を行い、お尻が届かないところまで行くと次のステップです。

ヒップヒンジ5


②棒ヒップヒンジ

次に棒を使った練習方法です。
棒はホームセンターにおいてある200〜300円の塩ビ管を用意してもらえるとフォーム練習にも約立ちます。(長さ100cm、外径26mm、HIVP20)
無い場合は100均の突っ張り棒でも構いません。

(1)棒を背中の真ん中に当て、お尻の少し上と後頭部を押さえる
(2)ヒップヒンジを行い「棒を背中から離さず」ハムストリングスが伸張する位置まで行う。

棒ヒップヒンジ

某ヒンジ1

某ヒンジ2

「失敗例」としては、棒が腰や頭から離れるパターンです。

ヒップヒンジ 失敗

本来ヒップヒンジは「股関節を支点」とした動きですが、棒が離れる場合は背中が丸まり「脊柱を支点」にして動いていることが多くなります。
これがいわゆる「背中の曲がり」になり、デットリフトの腰痛に直結します。

棒が背中から離れない状態でヒップヒンジを行い、体が床と平行に近くなるまでお辞儀することが出来るのが理想です。

出来ない場合はハムストリングスが硬い可能性が高いので、「ジャックナイフストレッチ」を行った後、ヒップヒンジをもう一度やってみてください。

ジャックナイフストレッチ

ジャックナイフ1

ジャックナイフ2

ハムストリングスの突っ張り感が少し解消され、お辞儀の角度が深くなると思います。
後に詳しく解説しますが、ハムストリングスが硬いと「デットリフトのスタートポジションが作れず、慢性的な腰痛の原因」にもなるので、日頃から取り入れてみてください。

棒ヒップヒンジが出来ると、次のステップに移ります。


③チューブヒップヒンジ

上記の2つの練習で「股関節を支点としたヒップヒンジのコツ」を掴めたと思いますので、次は元の姿勢に戻る方法です。

元の姿勢に戻るためには「股関節の伸展」といい「腰を前に突き出す動き」が重要になります。

股関節伸展

デットリフトは「股関節の伸展」で挙上し、股関節の伸展の役割は「殿筋」「ハムストリングス」が担います。
上手く出来ないと「背中を丸めて腰で挙げる」ことになり、待つ先は腰痛です。

それでは3つの練習方法を紹介します。

【レベル1】手ver
(1)上前腸骨棘に手を当て、お尻を後ろに引く
(2)押さえた手を押し出すように、腰を前に突き出す(股関節伸展)
(3)股関節伸展の際に「お尻の穴をキュッと締める」イメージ
※目線は自然と体の動きに合わせてください。

股関節伸展 手

この際に腰を反らないように注意してください。
背中は真っ直ぐをキープします。

腰椎進展


【レベル2】正座ver
(1)正座で上前腸骨棘にチューブを巻き、固定できる場所にチューブを巻く
(2)チューブに引っ張られるようにお尻を後ろに引く
(3)チューブの負荷に抵抗し、股関節の伸展を行う

チューブヒンジ2

チューブヒップヒンジ

【レベル3】立位ver
(1)立位で前腸骨棘にチューブを巻き、固定できる場所にチューブを巻く
(2)チューブに引っ張られるようにお尻を後ろに引く
(3)チューブの負荷に抵抗し、股関節の伸展を行う

立ちヒンジ

立ちヒンジ2

ここまでで「ヒップヒンジ〜股関節の伸展」の感覚を掴めたら、実際にデットリフトのフォームに入ります。


〜コンベンショナルデットリフトのフォーム解説〜

ここからフォーム紹介に入りますが、いわゆる「基本の形」を中心に、骨格の説明や筋の役割を説明します。

もちろん個人差はある部分が大きいので「大枠」として捉えてもらい、意識の持ち方は幾つものキューイングを紹介しているので、そこで自分に合いそうなものを探ってみてください。

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