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次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その15「9. スマートビルに必要な要素技術」日本のゼネコンの取組み


9. スマートビルに必要な要素技術

 本章では、スマートビルを構成するそれぞれの要素技術について紹介する。要素技術を知ることで、それらの組み合わせでスマートなビルになるはず。

9.1. 日本のゼネコンにおける取組み

 日本の大手ゼネコン各社では、独自に都市・建物OSを導入するなど、スマートビルの要素技術を磨いている。
ここでは、そのいくつかの事例について、紹介する。

9.1.1. 大林組「Wellness BOX」

 大林組では、自社開発のオフィスビルにて、ワーカーの好みの温度や明るさに自動で設定できるようなシステムを開発し、試行している。

ア テナントの健康増進活動につながる自動制御技術の提供

・建物設備に標準装備された6,000点のセンサー情報を収集
・ユーザーにビーコンを装着させ、個人認識を行い、照明、空調の個人制御を1m単位で実施し、人にやさしい環境を構築
・トイレ利用状況、清掃状況をスマホで確認可能
・室内環境の現状(温度、照度、自然光の有無)をスマホで確認可能

図 69 大林組 Wellness Box

イ ビル管理情報の積極的な提供

・AI、セキュリティーカメラを活用し、不審行動を検知し、管理センターへ自動通知
・地震直後の建物被害の自動推定をAIが行い、テナントへ通知する仕組みを構築
・画像センサーによるエレベーター乗降者情報の取得と通知
・テナントごとにエネルギー消費量を見える化

ウ BASを設置し、こられの情報をクラウド上に開放

 大手ゼネコンの施工により、各社のビル情報のAPIを開放し、共通プラットフォーム(クラウド上)で管理

エ BIMモデルを活用した建物情報プラットフォーム

「BIM WILL」と共有し機器の劣化状況及び更新時期を推定し、予防保全、メンテナンス等の効率化

オ 大林グループの大林新星和不動産「oak神田鍛冶町ビル」で実装

 ゼネコンシステムであるため、オープン化にハードルあるものの、基本的考え方は他の不動産開発でも応用可能である。

カ 超概算額

 通常のオフィスビルに導入した場合の超概算額は、全体工事費に対する費用増の割合は1%程度。

図 70 大林組 Wellness Boxで実装したIoT・AI技術
図 71 大林組 Wellness Boxのユーザー側における携帯端末での操作

Wellness BOXの機能

(1)表示操作機能

 温冷分布表示機能
 明るさ分布表示機能
 トイレ空き状況表示機能
 自然光利用状況表示機能
 ビーコン位置情報表示機能(オプション機能)・・・oak神田鍛冶町ビルでは1フロアのみ導入。
 滞留時間表示機能(オプション機能)

(2)制御機能

 温冷感申告による温度制御
 明るさ感申告による照度制御
 人感センサーによる不在時空調停止制御
 人感センサーとビーコン(オプション)による在エリア周辺照度制御
 ビーコン数による照明照度設定制御(オプション)

9.1.2. 竹中工務店(ビルコミ・ソトコミ)

 竹中工務店では、ビルの中だけでなく、都市でも活用可能なシステムを開発し、商業施設での活用などを試行している。

ア ビルコミとは

照明、空調、エネルギー制御からウェルネス、各種分析及びオンライン申請等、ビル管理に必要なサービスのクラウドプラットフォーム型システム。(※ Microsoft Azureを活用)

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