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未来の建設業を考える:「イノベーティブな建設産業の創造へ」

「改革」という言葉

 「改革」という言葉が政治や経済など、さまざまなところで聞かれる今日この頃である。

ドラスティックな改革には、イノベーションが必要

 ドラスティックな改革には、イノベーションが必要であるが、このイノベーションとは、米イノベーション・イニシアティブ(イノベーティブ・アメリカ(Innovative America))のとりまとめ役でIBM会長のパルミサーノ氏によれば、「インベンション(発明)とインサイト(先見性のある洞察力)の融合」であるとし、単なる発明ではなく、発明による新市場の開拓や市場構造の改革を促すものが本当のイノベーションと指摘している。

イノベーションの生みの親とされるシュンペーター

 また、イノベーションの生みの親とされるシュンペーターは、1912年、彼の著作「経済発展の理論」に中で、経済にとって最も大切なのは、企業者の供給サイドの要素を技術と組織の革新によって能動的に発展させる過程としての「イノベーション」であるとし、新製品や新たなサービスによる新市場の創設と経営のプロセスマネジメントにより、経済均衡を破る創造的革新=「創造的破壊」が経済利潤をもたらすために必要不可欠であることを指摘している。

建設産業にはイノベーションが存在したであろうか?

 果たして、建設産業にはイノベーションが存在したであろうか?素材は時代により異なるものの、空間を確保するための技術は、数千年前と同じ技術と手法で空間を構成しているのが現実ではなかろうか?確かにプレハブ技術の発展により、効率化は進んだかもしれない。しかし、それは改善であり、創造的破壊につながる技術とは言えないのではないか。
 先の報告書では、21世紀の世界において、コンペティティブ・エッジ(競争の優位性)を授けてくれるのは、イノベーション以外にはないと結論づけている。そこでは、イノベーション・インフラ整備のひとつである製造業の能力強化のために、共有施設やコンソーシアムを含めた「優良生産センター(Centers for Production Excellence)の創設や中小企業を第一線の製造パートナーに引き上げるための「イノベーション普及センター(Innovation Extension Center)」を創設することが求められるなど、産業構造の改革を製造業レベルで展開すべきとの提言がなされている。

真にイノベーティブな建設産業へ

 これまで製造業としての建設産業はそれぞれ単体の改革は実施してきたが、専門工事も含めた産業全体の構造改革に至ることがなかった。
 政府も含め、専門工事業者の育成や独立に対して深い理解が生まれている今こそ、建設産業自ら、専門工事業者も含めた産業界全体の製造力をドラスティックに高めるイノベーションが必要であろう。
 シュンペーターは、供給構造改革の長期ビジョンなしに、有効需要操作という短期の視点のみの施策を行うことだけでは、本当のイノベーションは生まれないと指摘する。
 供給側としての建設産業が、従来の技術や慣習を超えて、専門工事業者をパートナーとして高められるような真にイノベーティブな建設産業となることが、建設産業における構造改革につながるのではなかろうか。

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