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体験型広告付き銭湯 ハラカド訪問記2‐1

ハラカドの入居テナントで一番異質に見えるのは、おそらく小杉湯であろう。先進的な取り組みで有名な銭湯とはいえ、高円寺のローカル銭湯である。物価高と一般家庭への風呂の普及による需要減から町の銭湯は廃業が続く中で、銭湯が新規の再開発ビルに入り、不動産として経営的に成り立つと考えられたのはとても驚いた。

筆者撮影 ハラカドのB1に入居する小杉湯 原宿

この記事では、①なぜ商業ビルに銭湯が入居するのが難しいのか、②ハラカドではどのような工夫で銭湯を不動産としてビジネス上成り立たせているか、の2点について考えていきたいと思う

①なぜ商業ビルに銭湯が入居するのが難しいのか

言ってしまえば儲からないからである。実はいわゆる銭湯(一般公衆浴場)は上限の料金が自治体によって決まっている。東京都なら2024年現在で520円である。これは、銭湯は人々の生活に必要な公共性の高い施設であるという認識のもと、物価が統制されているからである。その分、燃料代の補助や設備更新の補助、入浴券の買い取り&高齢者への配布などで行政補助が入っているのだが、実態としては赤字の施設が多く、都内において2022年には過去15年で施設数が半減するほど廃業が続いている(注1)。
まぁ念のため補足しておくと、廃業理由の筆頭は設備の老朽化ではあるが、後継者難・経営者の高齢化も上位にくるため、経営難のみを理由に銭湯が減少しているとはいえないけどね。

もちろん、入浴料の値段を上げればマーケットに乗る。再開発ビルに温浴施設が入ったり、新しい施設(サウナを含む)が誕生したりしないわけではない。施設の規模やサービスの質にもよるが、おおむね1回の料金は3,000円以上くらいであればビジネス的には成り立ちそうである。大手町のグランキューブ内にある温浴施設はビジター1回150分で3,300円だし、2022年に渋谷に竣工・オープンした渋谷SAUNASは休日150分で3,500円である。なお、羽田イノベーションシティとか、ミナカ小田原とか、足湯だけなら無料のところが多い印象ではある。

筆者撮影 渋谷SAUNAS 渋谷の一等地に新しくサウナ専用の建物が建つとは、これもかなり特殊なケースだと思う。

ということで、銭湯という業態はこれまでの再開発ではみられないかなり異質なテナントなのである。一人3,000円以上の入浴料をとるスーパー銭湯や温浴施設、最近だとサウナが再開発ビルのテナントに入居するのであればまだしも、小杉湯原宿は520円の銭湯である。ビジネスとして成り立つはずがない。大家の東急不動産が大損をこいて道楽でやるのであれば話は別であるが、東急不動産も株式会社である。株主に足を向けては寝られぬ。
ということは、何かしらのトリックが隠されているわけである。さてそれは、、、というところでいい感じの文字量になったので、続きは次回で。

なお補足しておくとハラカドにオープンした小杉湯は、いわゆる町の銭湯と同じ”一般公衆浴場”ではなく、ラクーアや大江戸温泉とかと同じ”その他の公衆浴場”に位置づけられるらしいので、正確にいうと物価統制の影響は受けないため、520円で営業する法的な必要性はない(注2)。もしかしたら将来的な値上げの余地を残したのかもしれないね。


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