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広告本コピー写経 #8『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』篇

広告業界の歴代の先輩方が、ご自身の本で紹介されていたコピーをまとめ、学びを得る【広告本コピー写経】
#8伊藤公一さんの『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』篇です。

広告本コピー写経

知的で大人なコピー

恋は、遠い日の花火ではない。
CL:サントリー/サントリーニューオールド C:小野田隆雄さん
20歳までに、僕はいくつ河を渡るだろうか。
CL:パイオニアランナウエイ C:秋山晶さん
その先の日本へ。
CL:JR東日本 C:秋山晶さん

胸ぐらをつかむコピー

私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生みだしています。
CL:ボルボ・カーズ・ジャパン C:廣澤廉優さん
拳骨で読め。乳房で読め。
CL:新潮社/新潮文庫 C:糸井重里さん
日本人にもっと毒を。
CL:宝島社 C:前田 知巳さん

威風堂々としたコピー

地図に残る仕事。
CL:大成建設 C:安藤寛志さん
なにも足さない。なにも引かない。
CL:サントリーピュアモルトウイスキー山崎 C:西村佳也さん
想像力と数百円
CL:新潮社/新潮文庫 C:糸井重里さん

優しいコピー

年賀状は、贈り物だと思う。
CL:郵便事業 C:岩崎俊一さん・岡本欣也さん
モノより思い出。
CL:日産/セレナ C:小西利行さん
さくさくさく、ぱちん。
CL:国際羊毛事務局 C:西村佳也さん

いいやつなコピー

男ですいません。
CL:日本コカ・コーラジョージア C:斉藤賢司さん
近道なんか、なかったぜ。
CL:サントリー/サントリーオールド C:小野田隆雄さん
このろくでもない、すばらしき世界
CL:サントリー/BOSS C:照井晶博さん
このままじゃ、私、可愛いだけだ。
CL:朝日新聞社 C:吉岡虎太郎さん

①異物との結合

プール冷えてます
CL:としまえん C:岡田直也さん
メカニズムはロマンスだ。
CL:キヤノン/キヤノンA−1 C:秋山晶さん・田村定さん
人生は、よくかんで。
CL:日本生命 C:伊藤公一さん

②元素分解してみる

美と力。
CL:ホンダ/オデッセイ
セダン愛。
CL:ホンダ/アコード C:伊藤公一さん

メモ:実は選ぶべきコピーの人格はターゲットの人格そのものである事が多い

③誰かになって書いてみる

ただ一度のものが、僕は好きだ。
CL:キヤノン/キヤノンAE−1 C:秋山晶さん

④逆を言う

おじいちゃんにも、セックスを。
CL:宝島社 C:前田知巳さん
時代なんかパッと変わる。
CL:サントリー/サントリーリザーブ C:秋山晶さん
ちっちゃな本がでかいこと言うじゃないか。
CL:講談社文庫 C:
僕は弱いけど強い。
CL:みずほフィナンシャルグループ C:佐藤澄子さん
信じられないことは、信じることから生まれる。
CL:三井住友銀行

メモ:言葉の意味としての「逆」と、起こる可能性がない・低いことが起こるというい意味での「逆」

⑤目と耳を意識して書く

ハエハエカカカ、キンチョール
CL:大日本除虫菊/キンチョール C:川崎 徹さん
カリッとサクッとおいしいスコーン
CL:湖池屋
でっかいどお。北海道
CL:全日本空輸 C:眞木準さん

⑥事実をエモーショナルに

服は、肌より先に抱きしめられる。
CL:西武百貨店 C:岩崎俊一さん
父親の席は、花嫁から一番遠くにある。
CL:キヤノン/PowerShotS1IS C:近藤 慎一郎さん(第42回宣伝会議賞グランプリ)
四十才は二度目のハタチ。
CL:伊勢丹 C:眞木準さん

⑦永遠の定理を発見する

一瞬も一生も美しく
CL:資生堂 C:国井美果さん
愛とか、勇気とか、見えないものも乗せている。
CL:JR九州 C:仲畑貴志さん
このろくでもない、すばらしき世界
CL:サントリー/BOSS C:照井晶博さん

①ボディコピーはエモーションを残すものである

疑問は夕食の後、唐突におとずれた。
例えば、私が今つかっているツマ楊枝は
いったい誰が発明したのだ。
ソレそこに転がっている割りばしは、
いったいどんな経緯で世に出でしか。
愕然である。無知である。
日ごろあたり前のように接していながら、
実は名前の他は何も知らなかった、という「物」
たちの何と多いことか。
迂闊である、不勉強である。
缶コーヒーも、そうではないか。
この日本で最も飲まれている清涼飲料は、
いったい誰がどんな具合に発明したのか。
私の知識欲にメラっと火がついた。

(以下本書参照)
CL:UCC

②ボディコピーは精密なプラモデルだと考える

いろんな人と話をして
あなたも私も育ってきた
そしてこれからも
いろんな人と話をして
あなたも私も育っていく
ちょっとずつ恩がえししながらね

CL:DDI(現KDDI) C:

④書き出しと終わりに神経を

ディスティラリー(ウイスキー蒸溜所)とは、
人類にとってひとつの希望である。
それは暗い池の底で鈍い光を放つ銀貨に似ている。

ディスティラリーが評価に値するウイスキーを生みだすためには、良質で潤沢な水資源と、無垢であり、なおかつ厳しい風土を必要とする。
ディスティラリーの存在は、地球がまだ健康な肉体を保っていることの証しにほかならない。
そして、ディスティラリーが要求する、ウイスキーを熟成させるために必要な10年、15年、という時間は、人類が必ずしも効率だけを優先させるわけではない、つまり未来を信じるという私たちの美徳のひとつがまだ失われていないことを示している。

繁栄と破壊の20世紀が終り、新しい100年を迎えようとしている今、ディスティラリーとはやはり人類にとってひとつの希望である。

ウイスキーを、巧みな広告戦略で大量に売りさばいていくマスプロダクツとして考えていると、こういったディスティラリーの本当の意義は永久に見えてこない。そして母体であるディスティラリーの認識が稀薄であると、ウイスキーが本来もっている知的で深い歓びも伝えることができない。今、まさに地球という規模で、ディスティラリーの実力を評価するべき時がやってきた。

「日本のウイスキーの悪口を言う連中に対し、私はニッカの余市ディスティラリーのウイスキーを試してみたかどうか尋ねることにしている。もし他の全ての日本のウイスキーが、ここのモルトの品質の75%のレベルに達したならば、スコットランド人は強烈な危機意識を持たなくてはならない。(中略)
例えば余市ディスティラリーの10年ものは8年ものに比べピートが少し増量され、バランスは完璧に近い。リンゴ、レーズン、草っぽさが鼻に入り、口蓋で甘さが強まり、モルトとピートが余韻の中で戦う第一級の作品である。
ここのディスティラリーでうまれたウイスキーは、ウイスキーの王冠の宝石ではなく、王冠そのものである。まさにこの蒸溜所は、日本だけでなく世界の偉大な財産なのである。」

このニッカのディスティラリーに対する記述は、世界的なウイスキーライターであるジム・マーレイ氏の、現代ウイスキーのバイブルともいえる著作「コンプリート・ブック・オブ・ウイスキー」(日本では未訳)から抜粋させてもらったものである。いささか面映くはあるが、決して意外な評価だとも思ってはいない。ウイスキーのクオリティにとって、ディスティラリーの能力の差は、残酷なほど決定的な意味をもつ。ニッカウヰスキーはこの一年、ウイスキーをディスティラリーから語っていこうと思っている。

最後にひとつ提案がある。もし機会があったら、ぜひニッカのディスティラリーを訪れてみて欲しい。そして、そこで育ったモルトたちを味わってみて欲しい。ウイスキーを育ててきた土地の風に吹かれてモルトを口に含む。
きっと、仄暗い池の底で銀貨が放つ、鈍い光を見ることができるはずだ。

CL:ニッカウヰスキー

メモ:構造でいうとA+B+A

⑤書き手のキャラクターを設定する

その年のNYは記録的な寒波にみまわれていた。
クリスマス目前のロックフェラーセンターは、スケートリンクからあがる歓声と、身の丈20mはあろうかという巨大なツリーに飾られた2万個以上のイルミネーションで、さんざめいていた。
旅行者の私は、そんな幸せな風景から少しはなれて、日本に残してきた家族のことをぼんやりと考えていた。
タイムズスクエアの方から、長く尾をひく消防車のサイレンが聞えてきたのはその時だった。
どうやら、火事で、ある。
火災は言うまでもなく、住宅の大敵である。私たち住む側としては、かなり真剣に、「家と火災の関係」を研究しなくてはならない。
三井ホームの耐火性については、ふたつのポイントで語られる。
ひとつは、使われている素材の持つ耐火性。
この場合の主役は、壁や天井を覆っている厚い石膏ボードである。この石膏ボードには約21%もの結晶水が含まれている。
火災の時には、これが熱分解により水蒸気に姿を変え、火災の進行を遅らせる。
まあ、言ってみれば、壁や天井全体からの水蒸気がスプリンクラーの役目をするといったところか。
またツーバイフォー工法独特の構造材の組み方にも高い耐火性の秘密がある。
通常、火は壁の裏側や屋根裏を伝わって建物全体を舐め尽くそうとする。ファイアーストップ構造とは、その火の通り道を構造材で遮断してしまおうという考え方。何度か実施された実物大の火災実験でも、三井ホームのツーバイフォー住宅は抜群の耐火性能が実証されたと聞いている。
一九九一年、東京。
ひさしぶりに見るわが家のクリスマスツリーは、ロックフェラーセンターのそれの1/20ほどの大きさだが、私は随分と、仄仄とした気分になれる。
「メリークリスマス」、「メリークリスマス」。
おそらく今夜、家族の声にせきたてられて、私は蝋燭に火をともす。


CL:三井ホーム

次回【広告本コピー写経】#9は岡本欣也さんの『ステートメント宣言』篇です。

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