「岩妻」の解説

「なんで無視するの？」とあなたは言うが
これは、暴言を我慢しているのであって、
キレて泣きわめくのを我慢しているのであって、
無視ではない

産後１年ほどたつと、妻たちの中に、
顔がこわばって岩のように固まった「岩妻」が
一定の割合で出現する

真面目で頑張り屋で正義感があり
限界まで自分がやればとふんばってしまえて
夫婦の間の本質的な愛と信頼を大切にしたいと願っていて
もともと夫のことを人間的にリスペクトしていた
そんな妻がなることが多い

岩妻になるのは、闘って、抗って
分かりあおうとした、そして破れた
成れの果てである
誇り高き落ち武者である

やっと訪れた休日の家族の時間
本当は嬉しいし楽しみたい気持ちはある
でもそれを見せたくない
悔しいからだ
１週間ワンオペの労をねぎらってもらいたいのに
その間のやりとりでまだすごく怒ってるのに
ひとこと物申したいのに
そのまま事が進んで行く
あれはどこ？昼ごはんどうする？とか
どうでもいいことなのに
子供たちのことは待った無しで
なし崩し的に進んで
便宜上、業務的会話をしてるうちに
うやむやになっていく

そして一日が終わり、
早々に寝てしまう寝顔を見るのも嫌で居間に残り一人
そうやって思いが腐って沈殿する
それがずっとずっと溜まる
もっともっと前の段階で吐き出せて謝ってもらえたらと思う
でもきっと悪くないからと謝ってはくれない
論破できない
そうしてどうしようもなく
妻たちは岩になっていく

心を閉ざし
感情を殺し
作り笑いしかできず
目さえ合わせることもできず
瞳の奥には悲しみと軽蔑と怒り

それを見て夫は嘆く「あんなに可愛かったのに」と
そして怒る「人としておかしいだろ」と
そして別の女に癒しを求める
あなたがブスにしたのにね