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百万円もらった男 町田康 を読んで


みなさん、こんにちは。「100万分の1回のねこ」に収録されている「百万円もらった男」について感想を書いていきます。

あらすじです


男主人公はミュージシャンです。音楽仲間の評判は良かったのですが、劇場のマネージャーに嫌われ、あまり仕事がもらえませんでした。なので、年中貧乏で生活するのも精一杯でした。それでも、なんとか仕事はもらえましたが、最近仕事が全くありませんでした。蓄えていた貯金も底をつき、男はとうとう一文なしになりました。部屋の家賃も滞納しており、今月滞納すれば、宿無し生活になります。そのうえ、付き合っていた女性と半年前に別れました。女はダンサーで顔もスタイルも良く美人です。女は男の音楽は好きでしたが、実際に付き合ううちに、普段の男に愛想をつきました。自分の人生を大切にしたいから。と言って女は去っていきました。

そんな男に一本の電話が鳴り、電話主と会うことになります。電話主は八甲田大八と言い、いかにも胡散臭い男です。大八は男のギターの音に聞き惚れ「あなたの才能と私の百万円と取引してくれ」と持ち掛けました。男は大八が用意した百万円を札束を目にすると、言葉一つで取引に応じました。

目の前の札束をまじまじと見て、男はニヤニヤと笑みを浮かべます。早速、焼肉店に行き、ビールやカルビをたらふくたいらげ、明日はお寿司でも食べようかと楽しい気持ちを浮かべながら部屋に戻り、寝ます。

男は目覚めると、音楽仲間から金を借りていたことをふと思い出します。金の切れ目が縁の切れ目という考えから、男は仲間たちに金を返していきます。同じ貧乏な仲間にも利息を含んで金を返したところ、彼らは喜びました。すると「また劇場に出てくれ」と言って、仕事依頼を頂きます。お金に余裕があると、そのような気遣いをしてくれるんだと男は感心しました。

その後、男は生活必需品を買ったり、風俗に行ったり、生活費等を払って、お金が徐々に減っていきます。「俺には音楽があるんだ。それでまた稼げばいい」と思っていると、男のギターの演奏にいつもと違う感じがして・・・

感想です


自分の持っている才能を信じるか、信じないか。について考えたくなる内容でした。アーティストだけではなく、芸人、作家、クリエイターなど、人に夢を与える仕事は成功すると、名誉やお金など数々のものが手に入ると思います。しかし、その世界で成功するのは一握りです。誰にも知られず、食っていけなくなり、辞めてしまう人が多いのも、現状です。この話に出てくる男主人公は、自分の才能をお金で取引してしまいます。生活するのに必死だったのか、目の前の誘惑に負けているようでした。才能がないから、ときっぱり諦めてしまうのも一つの手ですが、地の底まで落ちても、自分に影響を与えてくれた人や物を思い出す力が少しでも残っていたら・・・あるいはその活動が好きだという、秘めた心があったのなら・・・男はその誘惑に勝っていたのか。と考えたくなりました。

みなさまはどうですか? 

もし、目の前に「あなたの才能をお金と交換しましょう。いくらでも払います」という人が現れたら・・・

自分の才能を取りますか? 

それとも

お金を取りますか?

読んで頂き、ありがとうございます。

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