東京での暮らし
ふたり暮らし 東京へ来たが、なかなか職が決まらず気持ちが沈む。
地元から一緒にこっちに来た大学院生の同居人は、あっけらかんで少しネジが抜けているところがある。
東京へ来て1ヶ月、浮浪人の俺はあまりに余った時間を潰すため、ある日の夕方、カレーを作っていた。そこに帰宅した同居人が
「何か作ってるの?」
ときた。
「カレー作ってんだ。」
そしてルーを入れる前の鍋を覗き、煮込まれている具材達を見るなり、
「ほぉ、いい匂い。これにシチュー入れたらシチューができそう。」
と言った。カレーと言っているのにシチューときたこと、的外れな至極当然の事を真顔で言ってきたことで脳内が一瞬固まった。
正直めちゃくちゃ面白かったが、彼にはそのまま軽やかに生きていてほしいので、あえて笑わずに
「そりゃそうだ」
と一言。これでいい。
正直なところ気持ちが落ち込んでいるとき、同居人が放つこの類いのアホ発言には少し救われる。鍋の中でおたまを滑らせ灰汁を掬いながら韻をふんだ。
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