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我々はどこに向かうのか。ということを【合成生物学の衝撃】で妄想した。

面白いというか、怖いというか、未来はどうなっちゃうの、というか。そんなことを感じずにはいられない「合成生物学」という分野のアメリカの最先端を取材した本。


クレイグ・ベンダーまたでてきた。



2017年年末現在、一から化学合成したゲノムを持つ微生物の作成に成功しているのは、クレイグ・ベンダーの研究チームだけ。p53

ここでまた、クレイグ・ベンダーが出てくる。また、というのは前回の本にもクレイグ・ベンダーが出てきた。ベンダーさん、あまり知られてないけど、まじすごい人。


ベンダーさんは、ヒトゲノム解析をはじめて成功させた人で。その続編研究とも言えるこの分野でまた、誰も成功していない研究の成果をだした。(2017年時点って書いてあったから、もしかしたら今は他にも成功したチームがあるかも)

この動画がminimal-cell ミニマルセルと呼ばれる、人工的につくられた親細胞がいない、全く新しい生物なんだけれど。

僕には、これを見てテンションぶちあげられるほどの教養はない。

アートの世界と似ている。歴史や人物、文化や背景がわからないと、その絵に、どれほどの価値があるのかがわからないように。

サイエンス分野でも、例えば何も知らずに、この動画を見たとこで 

SO WHAT??? だから何????

としかならない。そのSO WHAT???を少しでも それを埋めてくれるのが、こういう本で。水先案内人みたいな、いい本に出会えると感謝の気持ちが訪れてくる。

ということで、どうも、ありがとうございます!!


著者の須田さんの情熱と誠実さがすごい

動画でミニマルセルを見たところで「だから何??」という気持ちは変わらないが、この衝撃が、本を書く動機になるのだから、それはすごいことだとは、わかる。そして、本では著者の須田桃子さんの情熱と誠実さがものすごく伝わってくる。

物語としても超面白かった。新聞記者の須田さんが一年間の留学取材ののちに書き上げた本なんだけど、一次情報としての当事者インタビューが沢山載っているし、その描写も、かっこいい。


話をしている間のポポフは、学内の個室の研究室で話を聞いた一度目での落ち着いた様子とは明らかに違っていた。
誰か怪しい者がいないか、会話を聞かれていないかを警戒するかのように、頻繁に鋭い視線を周囲に走らせる。
 それが具体的な恐れというより、むしろ長年の習慣から来ている無意識の仕草だと気づいたとき、彼が極秘研究に従事した年月の重みが急にリアリティを伴って迫ってきた。(p79)

須田さんに迫ってきたリアリティが、僕の脳細胞にも、バシバシ迫ってくる感じが、もうね。次の一口が止まらなくなる、お菓子みたい。例えが小学生並だけれど、この本は、みんな読んで欲しい!!

ここに描かれているポポフは、ロシアがソ連だったときの、超極秘機密研究をしていた人で。まずポポフに須田さんが出会えることもすごいけれど。

ポポフの話も「マジかよ!!!」っていう嘘みたいな話がでてくる。ポポフのやっていた研究は、その研究が秘密すぎて、誰にも相談できない、記録も残せない、同僚が何やっているかさえ知らない。そんな状況で進んでいくから、まったく非効率で研究が進まなかったとか。


去年の今頃に、「来年パンデミックくるから、まじで覚悟した方がいいよ」と誰かに言われたとて、信じられないように。

僕の生活と続いている、同じ世界とは想像できない、嘘みたいな本当(真実は闇の中だけど)の話が、登場人物が、たくさん出てくる。

言われたとて、信じられなかったであろう、パンデミックがやってきているように、「合成生物学」を中心とした未来がやってくることは、ほぼ確実だと思うので、これは入門編として、読めてよかった一冊となった。


ミニマルセルのすごさ


で、このミニマルセル-合成生物のすごさは、一言で言えば「いままでの生命の定義に当てはまらない生物」をつくったこと。

いろいろすっとばして、ざっくりと書くと【はじめて親がいない生物をつくれた】ということだ。【親からの繁殖で、親の遺伝子を受け継いでいくのが生命】というのが、ひとつの普遍的な生命の定義なのだけれど、その定義からはずれた【生物】を、人工的につくれる時代になったのだ。

なったと言っても、ベンダーさんだけが成功しているんだけど。

ということで。この研究の先にあるものは、、、というと、治療や医療の定義も変わるし、兵器や薬のあり方も変わる。指標が変わる世界がやってくる。

あるいは、生命の起源をたどる手がかりにもなる(もともと生命ではないものから生命ができたというところで。)。

で。この合成生物学分野の一番のパトロンとなっている組織が、DARPAという国の研究組織。

ちなみに、ネットフリックスの創業者ヘイスティングスのおじいちゃんが、このDARPAの前身研究所をつくったということが、ネットフリックスという本に書いてあった。


いろいろ、つながっていますな。

未来はDARPAがつくっているのかと思ってしまう。



DARPA(ダーパ)という組織は、日本語では国防高等研究計画局と訳されている。軍事テクノロジーの開発をになっている組織だ。1970年代〜のDARPAは


・communication(通信)
・command(指揮)
・control(統制)

をコンセプトとして、軍事テクノロジーを飛躍的に進化させて。それが今、インターネットやGPSという機能として、民間利用できるようになっている。

インターネットやGPSをはじめ、DARPAが現代社会に欠かせない数々の革新的な技術を生み出してきたのは事実だが、それらは例外なく、軍事目的に開発された技術を民生利用に転移したことによる副次的な結果だ。(p114)

 技術はそれ自身に善悪はなく、使い方次第でどっちにも転がる側面があるという意味の「デュアルユース」という言葉をこの本で知った。テクノロジーは、医療にも殺人にもつかえるし、防衛にも攻撃にも使えるということだ。

で、1970〜における研究と技術革新の結果、現在はもう、インターネットやGPSがない暮らしは、成り立たない世界になったことは、実体験として感じることができる。

それを生み出したDARPAが、超激烈猛プッシュしているのが、合成生物学分野で。だから、その結果として起こることは、、、、。

インターネットやGPSの普及並みに、世界が変わる。と思っているし、もはや変わりつつあることを、この本が、警告してくれている。

良し悪しに関係なく、DARPAのお金の使い道が、この世界の舵取りをしているように感じてしまう。ただ、DARPAの予算は、全部トレースできるわけではなくて。ーblack budget黒い予算ーと呼ばれている謎の予算でどのくらいの投資がなされているかは、誰にもわからない。

世界の舵取りは、自分にはできないけれど。せめて

where are we going??
我々はどこに向かうのか。

とうことを、これから、リアルタイムで感じておくべきだなと思った。

インターネットやGPS時代の変化には、確実に乗り遅れた。その間、僕は何をやっていたかと言えば、鮨握っていただけだ。それはそれで、いい時間だったけど。


今回の変化は、追いかけて行きたいなと思っている。なんとなく。

一段飛ばしで、この辺の領域に関わる活動がしたい!!!!!

というのが、もっぱら、僕の妄想テーマ。

我々はどこに向かうのか。
ということも大切なのだが、今、自分にとって大切なのは、我々ではなく、我はどこに向かうのか。という個人的な問題だ。個人ではあるけれど、個人は「我々の行方」にも、大きく左右される。

「我々の中のちっぽけなひとり」には変わりはないし、大きな流れも変えられない。だから、流れに乗っかるしかない部分が大きい。
乗っかるには、観察と認知と分析と予測が必要で。その材料を、今、時間があるうちに、集めようと思う。


新たな治療や技術に不安になることもなく、情報に煽られることなく。まっすぐ立っていたい。

そんな思考の材料になりました。このNOTEも、読んでくれてありがとうございます。





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