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【生命の起源はどこまでわかったか】で、人生の短さと、追求するべき指標の大切さを知る。

生命の起源はどこまでわかったか。

という、震える命題。「すべてが わかっている わけではない」ということが、大前提なタイトルが、問いに対する誠実な姿勢を感じられてグッときてしまう。


タイトルの通り、日本の「生命起源に関する研究」について「誰が、どこで、なにをしていて、どんなことに、ワクワクしているか」ということが、ひしひし、伝わってくる。超面白い本!!!!!!!

数学と物理と化学が苦手なので、論文、数理モデル、数式、グラフを見て「うわぁ!!めちゃくちゃすごい発見じゃん!!!」という体験が、残念ながらできない。

数式やグラフから、現実を想像できる科学者や研究者、あるいはそういう知的訓練を受けてきた人たちに、憧れる。そして、論文が読めなくとも、知識がなくともその面白さを伝えてくれる、こういう解説本を作ってくれている人たちには、感謝の気持ちしかない。どうもありがとうございます。

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生きている間に、完全な答えにたどり付けないと知りつつも、答えに近づこうとしている「夢を追いかける物語」だ

この本でわかったことは、

生きている間に答えがでるものではない。

ということだ。大きな発見、限りなく真に近づく実験や検証が行われることは、これから起きてくるだろうけれど。

「ほんとうのこと」「これから何億年も変わらない真実」として、それが残り続けるかは、別の問題だと言うことがわかった。

宇宙の広さ、地球の年齢、それに比べて、いかに自分の生きている時間が短いかを知る。その短き時間の中で、どんな時間をすごせばよいのか。大切なことを教えてくれる。

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生きている間に答えが見つからない。そんな問いを追いかけることは、幸せなのか、不幸なのか。それは、個人の感じることだろうけれど。「一生探究し続けられる問い」の中に居続けられることは、ものすごく貴重なことだし、幸せなことだと、僕は思う。


生きている間に答えを出せない、という条件下で大切なことは「どこまで」あるいは「どこに、どうやって」辿り着いたか。「なにがわかったか」ということだ。

「そこに」たどり着くまでの動機は、知的好奇心。そして、それを一番大切にしないでどうするのか。ということを、編者の高井研さんが、本の中で述べている。

アストロバイオロジーの存在意義は唯一、人類の知的好奇心です。アリストテレスが生命の自然発生説を唱えて以来、2400年近くも解けなかった生命の起源の問題が解けるかもしれない。(p134)
なぜ、自分が面白い、知りたいと思うことを追求する営みを重要な活動だと考えないのでしょうか。なんとなく世間的にそういわれているから重要なのではないかと思っているだけかも知れません。(p135)

こういう問いは、科学者であるとか、生命探究をしているかどうかは関係ない。どんな仕事をするにしても、これが中心になっている人は、強い。


先日、聴講した、ELSIの藤島さんも本の中にでてきた。

藤島さんについて、僕は何かを知っているわけではない。ただ、一度の講義を見ただけ。そんな距離感の人でも、本に登場してくるだけで、親近感を覚えるのが不思議だ。
(動画の力ってすごいね。「同じ時代に生きている人が、動いて話している」という体験と、それに伴う、脳内の意味付けってものすごい。)

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あと、この本で、個人的にめちゃくちゃグッときたシーンがこちら。

関根さんから「エンケラドスのプルーム由来のナノシリカが見つかったようです。これは何を意味すると多いますか」と聞かれ、「熱源がありますね」と即答しました」と、JAMSTEC研究員の渋谷さんは2009年当時を振り返る。(p86)

なんのことか、初めは全くわからないんだけど。2度目に読んだ時は、とても大切なことが書いてあることが、わかるようになる。

言葉の解説をすると。
・エンケラドスは土星の第二惑星
・プルームはエンケラドスを覆う氷の割れ目から吹き出している、氷や水蒸気
・ナノシリカは二酸化ケイ素からなる微粒子。地球上ではありふれた物質だが、宇宙ではまれな物質。

ということを踏まえ。

「エンケラドスに熱源あるでしょ」と想像できると言う話が、なぜ紹介されているかというと。

「熱源があるなら、そこから生命が産まれる可能性あるよね??」と言う仮説が立てられているから。そして。その仮説をもとに

「プルームの粒子とか、熱源近くの海水、採ってこれないかな??分析できんかな??」

ということを実現可能にしていくことが、アストロバイオロジストの仕事だということが、わかった。(詳しくは、本をぜひ、読んでください。理系の勉強、すべてすっ飛ばしてきた僕でも読めました。)

マジで激アツ。

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「ちょっと熱海に海水汲みに行ってくるわー」の感じで、太陽と地球の距離の約10倍もの距離まで探索しにいく計画を立てるのだから。人間の好奇心と、それを実現する行動力は、ほんとにすごい。

仕事探すのもそうだけれど。自分の知的好奇心のありか、探さないとだ。

jaxaの土星の惑星のページの写真も綺麗。

あと。エンケラドスは地球と同じくらい、45億年生きていることがわかった。↓↓わからないことは、とりあえずここで検索。地球からの距離も、星の年齢も全て計算してくれるすごいサイト。

本を読んでるだけでは、何者かになれるわけではないけれど。それでも、本が与えてくれる力は、ものすごいなーと思いました。


ということで、読んでいただきありがとうございました。




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