"The LEPLI" ARCHIVE 130-2/『提言-平川版 "ジェロントロジィー"「人生90年」プロジェクトとは』。
文責/平川武治:
初稿/ 2015年春;
『大衆が求める”イメージ”とは、
いつの時代も、あり得るべきこれからの生活とそのスタイリングを”夢”としたものである。
ファッション産業とは、そのあり得るべき生活とそのスタイリングへときめきを与えるものに変わりはない。』
By Mirabella Grace. /「ヴォーグで見たヴォーグ」より。
○ はじめに/私案『人生、90年』プロジェクトとはなんだろう?/
20世紀が終わったように、「人生、65年」という時代観はもうすでに終わっています。
戦後の日本人が精一杯、敗戦という恥を背負って必死に一生懸命に生き抜いて来たのが
”昭和”という時代であった。ここではまだ、”ライフプラニング”や”ライフスケジュール”と
いう言葉は殆ど、存在し得なかった。
「そんなゆとりや豊かさをまず自分たちの生活に、」という時代の流れが
「人生、65年頑張れれば幸せだね。年金も貰える」だったこの70年間でした。
そしてやっと、このような戦後を生き抜いてきた世代から3世代を経て、現在の僕たちの
国の社会は表は「モノの豊かさ」を現実にし、裏では「社会保障のホコロビ」をもたらし始めたのです。
今年の新-成人世代はそんな「人生、65年」時代を生き抜いてきた彼らたちの
”第3ジェネレーション”が國家の新しい主役に参入し始めるのです。
従って、戦後の、「人生65年」という時代の社会システムそのものが無理な状態になり
綻びてきていることは昨今の多種多様な出来事としての”事件”でも理解できるでしょう。
最近では、この”システムの綻び”へ、”合衆国のエゴ”が剥き出しに入り込み始めていますね。
本プロジェクトは日本が世界に先駆けて迎えたこの「少子多老化」という時代社会への
撃つべきポジティフな一撃です。
このプロジェクトの根幹は「少子多老化社会」という”未来現実”を決して、ネガティフな
捉え方ではなく、ポジティフな視点で考え対峙し、今後の新たな「社会システム」を産業化
するまでの発想の元で考えてゆくものです。
その理由の一つには、我が国が迎える「少子高齢化社会/少子多老化社会」は今後、他の
先進国も足並みを揃えて迎えなければならない”近未来社会”の構造変化でもあるためです。
西欧先進国の戦後は今、大きく問題化されている「移民」たちを彼らたちの宗教倫理と共に受け入れたことによっての「移民問題」の諸事情の清算が最大の社会問題である故、日本よりは遅れて迎える現実状況の違いであり、いずれ世界の先進国と言われている諸国がこの
「少子多老老化社会」なる時代が来てしまうのです。
が、その先鋒を”両敗戦国”、日本とドイツが迎え始めた。という認識下で、この社会状況の先端を行く我が国はこの「少子多老老化社会」をこれからの国力と生活環境の「あり得るべき豊かさ」を創生するためのコンテキストとしてポジティブにそして、格好の契機として
これからの若い世代たちのためにも発想し、実践して行こうというプロジェクトです。
そして、この『人生、90年』プロジェクトはファッション産業が関わらなくてはならないプロジェクトの一つであり、新たな可能性の一つとして、「ファッションによる、ときめきあるクオリティオブライフ スタイリング」を提案、構築するためのファッション産業には大いに
可能なるプロジェクトなのです。そして、当然ですが、今のファッション産業の不況と腐心を拭うことの一案にもなるものです。
「閉塞感が浸漬する現状から今後の新たな”豊かさ”へ向かっての可能性が日本社会への
大いなる、有意義な先駆けをなすものである」という考えです。
そのために必要な新しい「社会システム」を検討し、開発構築し出来れば、それらを今後の新たな日本の成長産業として捉えるまでのプロジェクトを考え、提言いたします。
この現実の視点を変えてみると、これからの日本社会への新たなる国力になり得るまでの
この「少子多老老化」を”ジェロントロジー/加齢学”として、新たに社会に認知させること。
そして、それによって世界の先進国に先駆けて激しい「少子多老化社会」を迎える日本は、
この現実認識とその社会化とインフラ整備を考えることとは、”新たな国家=共同体”を構築
することであり、今後の「地域再生構想」にも大いなる可能性”の一つです。
今後、世界がこの方向へ多くの国が向かっていくのですから、これは大いなる可能性でしかありません。
主役は、高高齢者と、高齢者そして、セカンドジェネレーション、サードジェネレーションとのまた、移民外国人たちとのコラボ-プロジェクトなどがこのファッション産業が関わるべき『人生90年プロジェクト』の根幹です。
決して、倫理観乏しき、”目先のニンジン”を追いかけるプロジェクトではありません。
○『人生、90年』プロジェクトの考えられるコンテキスト。/
「日本が世界に先駆けて迎えた、「リアリティ」をポジティフに捉える眼差し。」
ジェロントロジー。
少子多老老化社会。
ポジティブな視点。
Natural Capitalism。
新たな「社会システム」の構築と産業化。
ときめきあるクオリティ オブ ライフスタイリング。
「文化的普遍性」である、”ニュースタンダード”。
スローソサエティー=スローライフ+スローファッション+スローアーキテクト。
マインドフルネス。
”サスティナブル”、”SDGs” 等など、、、
これらを”キーワード”とした、「新たなパラダイムシフト」を構築するのが本プロジェクトの
「根幹」です。
○ ”ジェロントロジー”『人生90年プロジェクト』を考える。/
”ジェロントロジー”とは、「人間の老化現象を人間に関わる、生物学、医学、社会学、
心理学、人間関係学、サイエンス、自然環境学、生活環境学そして、政策立案にいたるまで
多面的、総合的に研究する学問です。」邦訳は「老年学・加齢学」。
この ”ジェロントロジー”は、これからの高齢化の問題は一国の社会問題なのですから、
一つの領域だけで解決することは出来ない、新しい社会環境とそのためのルールとインフラ整備等など、「社会システム」に至る考察と発想であり、もう一つの新しい共同体即ち、新しい
価値創生に元ずく”コミュニティ共同体”を発想した「新-社会創生」でもあります。
高齢化・エイジングを根幹に、関わるあらゆる領域の「知」と「経験」と「関係」を結集し 課題解決に臨むことが”ジェロントロジー”の特徴であり醍醐味となるあたらしい分野です。
皆さんが「人生、90年」と思い込めれば、どのような「夢」を持つでしょうか?
どのような関係性の元で安心してより、クオリティの豊かな幸せな生活を望むのでしょうか?
そのためには、何が要らなくて、何が必要なのか?、残すものは何か?引き継ぐものは何か?
消去させるものは何か?などを”学際科学”と”産官学民”と連携しながらの実学が
”ジェロントロジー”です。
この”ジェロントロジー”の視点での『人生90年プロジェクト』は新しい価値観による、
新しい共同体をデザインするまでの”ファッションの世界”によるニュープロジェクトです。
○ 実際に現在行われ始めている”ジェロントロジー”のフィールドワークは、/
生理面/遺伝子、細胞、臓器骨格、栄養、運動ほか、
高齢者医療/慢性疾患、臨床、薬、退院支援、医療コストほか、
介護/予防、アセスメント、ケアプラン、サーヴィスモデル、公的私的保険、青年後見制ほか
心理/記憶力、性格、達成感、価値観、時間観念ほか、
死-倫理/死の定義、準備、送る側の準備、死後の諸事、尊厳死、ホスピスほか、
政治/政治への関心、投票行動、投票動機、高齢者団体の行動理論ほか、
経済/所得格差、税制、社会保障、生活保障、シニア市場、近代化理論ほか、
社会-文化/若者の高齢者観、メディアの高齢者観、公益法人制度改革、構造機能主義ほか、
生活行動/時間の使い方、余暇活動、同世代相談、生涯学習ほか、
人間関係/夫婦関係、親子関係、兄弟姉妹、友人関係ほか、
労働-退職/働くことの意味、退職と健康、定年制の是非、定年起業、ワークシアーほか、
家計/収入、支出、貯蓄動向、資産運用、相続ほか、
住居/どこに誰と住むか、買い替え、住み替え、バリアフリー、リバースモーゲージはか、
等などですが、これらは総じて、”ネガティフな発想”による、そして打算的なるものが多く
その証拠なのだろうか、ここには、ポジティフな視点での、「ファッション産業」および、
「デザイン産業」がどの様に関われるかの視点がない。
○ そこで、"ファッションの視点"から「人生、90年。ときめきのある長寿生活とは、」を
考えてみる。/
新たに迎えるはずのこの社会問題に、”ファッションの世界”から視点を定めて社会への提言が残念ながら為されていません。そして、今日までも、”ファッションの世界”は変わらず、
”20世紀の価値観”を根幹に、「人生65年」のルールと方法論による”マーケティング戦略”と最近では、”アーカイブヴィス”の諸バリエーションのリ・ユース発想の世界なのです。
この現実が昨今のアパレル産業の衰退でもあるでしょう。
作る側も、報じる側も、商売をする側もそして、教育する側も、論じる側もこの”20世紀の価値観”と”イメージング・システム”による。「ブランディング戦略」で、もう既に、30年以上が経っています。
新しさを”商ってきた”はずのファッションの人たちが、その生活意識の根幹は依然、
「人生65年」感覚でしかないのです。この期を契機として、”ファッションの世界”だから
こそ、ポジティブで楽しいときめきを感じるまでの新たな共同体を構築するという視点での『人生90年プロジェクト』が必然ではないだろうか?
戦後日本がこれほどまでの”ファッション大国”になった実力と経験と情報を駆使して、
世界が羨む”超高齢社会”と”少子多老化社会”をカッコよく築き上げるチャンスでもあります。
○ ”ジェロントロジー”『人生90年プロジェクト』をすこし、具体的に考えてみる。/
では、新たなローカリズムを根幹にした『人生90年プロジェクト』のための共同体/
コミュニティとはを、具体的に考えてみよう。
その根幹は、「マインドフルネスな”Aging in quality of life”、穏やかに、おおらかに
安心して暮らせるもう一つの共同体を考えること」でしょう。
目的は、「安心で活力ある豊かな長寿社会」”スローソサエティー”の構築。
1)『人生90年』にふさわしい「真に長寿をときめき、喜べる生き方」
/ライフデザイン分野。
→生きる目的がある事と、身体が衰えても、QOLを維持できること。
2)安心で活力ある超高齢者社会の創造、「”Aging in Place”の現実化。」
/ライフ エンヴァライメント分野。
→住み慣れた自宅や地域で最後まで自分らしく老いることができる共同体を考える。
3)健康長寿の推進と本来の安心を提供する「共同体ケア・システム」の構築。
/マインドフルネス、医療ケア分野。
→”寄り合い”システムなど、ローカリズムとしての”長屋”共同体が成し得るケアーシステムを考える。
○ ここで僕たちファッション産業人がより、直接的に関われる分野とは?/
「価値観、趣味、関係性、経験値、スキル」などで編み込まれ、重ねられた新たな環境と
しての「共同体」を構築する。そして、その「共同体」で生活すること、楽しむ事自体が
”新-市場”となるようなパラダイムを考える。
その根幹は「交流と触れ合い、学びと遊びと愉しみ、安心と穏やかさのサーヴィス &
ホスピタリティ」。即ち、”マインドフルネス”を根幹に考えた”CARE & CURE”。
そのための倫理観から生まれる”品性”や”品格”と”洗練さ”がシャワー効果となるまでの
緩やかな時間消費環境を考えたライフスタイリング、「より、少なく、より上品に。」
→男女消費/文化消費/観光消費/学習消費/CARE & CURE消費/セキュリティ-福祉消費/伝統回帰消費/ノスタルジア消費/エピソード消費/夢消費/マインドフルネス消費等など
これらをどのように”スローライフ”の根幹の元に、「ゆったりとした時間観」の中で"QOL"を
様式化、スタイリングして行く。
○ 考えるべきミッションとその順序は, /
→コミュニティ環境を構築する。
そのための共有出来る価値の創生。
→新たな消費環境を”いりこ構造化”する。
そのための新たな”風土”魅力をデザインする。
→ときめきあるQOL.のためのサーヴィス&ホスピタリティ”と”マインドフルネス”。
そのための人材エデュケーションを行う。
→『人生90年プロジェクト』のための商材編集とプロダクツディレクション。
そのためのマーケティング。
→没入感ある仮想空間を構築し、汎世界戦略を行う。
そのためのC.G.テクノロジーとデザインディレクション。
○ そこでこの新しい時代に考えるべき問題の一つが「倫理観」です。/
”お金の豊かさ”と、”物質的な豊かさ”を「生活観」の第一義としてきた戦後70年は
もう、”THE END"です。ですから、これからの「あり得るべき規範」としての”新たなる
豊かさ”を再考する「こころあるQUOLITY OF LIFE」を目指し、『人生90年プロジェクト』のための”あらたな生活や社会”にコミットさせるために、今まで置き忘れられてきた
「倫理観」を再考する時代性が今年です。
この根拠は、30数年間、パリモードを中心軸にモードに接してきた僕の経験と結論から、発想の一つに、「成熟された倫理観が洗練さを生む」という信念から生まれたものです。
○ 本プロジェクトのコンテキスト/
「倫理観ある共同体。」
→経験、スキル、資産、労働意欲、
「コミュニティ、みんなが國力。」
→高齢者が増えると集い、集まり、消費時間もスローに穏やかな流れへ。
「目ざせ、あり得るべきニュースタンダード、”クオリティオブライフ/QOL”の改善と向上。」
→生きがいと幸福感が増す。”昔取った杵ずか”の多重層異文化集約型とミルフィーユ効果。
「みんなで価値観を共有し、一体となって連携、協労することそして、マインドフルネス。」
実問題として、現実の状況を正しく認識すること。悲観的な状況であろうと、現状を出来るだけ定量的にかつ、先入観なく客観的に見ること。
そして、”課題”を明確にした上で、その解決策を立案し具体的な計画を立て、”行動”する。
○ 幾つかの現状参考数値。/
*2030年/高齢者所帯のうち、約40%が独居世帯+約30%が夫婦のみの世帯となる。
*2012年からは、高齢者が年間100万人ずつ増えている。
ということは、昼間から彼らは地域にとどまって生活をしている。
*地方社会では、地域の過疎化と高齢者による限界集落が増加。
*2005年来、出生率より死亡率が増加。
*少子化は国力の低下衰退へ繋がり、労働人口は2030年には約1000万人の低下で、
5600万人ほどになる。
*「老老介護」が現実化する。
*「空家」の増加。現在では約800万軒の空き家がある。
○ 今後の人口推移;/マクロで見ると、/
2020年には/0-14歳:14,567千人(11.7%) 2010年は16,803千人
2020年には/15-64歳: 73,408千人(59.2%) 2010年は81,031千人
2020年には/65歳以上: 36,123千人(29.1%)内75歳以上:18,790千人(15.1%)
2010年は夫々29,245千人・14,072千人
そして、2022年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります(3割以上が要介護)。
総人口は124,099千人(2010年は128,057千人)と余り減ってはいないのですが、
「少子多老老化」が猛烈なスピードで進行します。
介護・医療に要する費用だけで国の税収をほぼそのまま使い切ってしまいます。
参考文献/ 「2030年,超高齢未来 ―「ジェロントロジー」が、日本を世界の中心にする」:
東京大学高齢社会総合研究機構刊
参考サイト/
http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2012/no389.pdf
https://www.nissay.co.jp/kaisha/csr/chiiki/shakai/pdf/gerontology.pdf
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/jp/research/study_groups.html
空き家問題/
http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2014/no416.pdf
参考;
「ヴォーグで見たヴォーグ」By Mirabella Grace. :文藝春秋社:1997年発行。
文責/平川武治。
初稿/ 2015年春。
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