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本を地図に旅したい

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書評というより、本を読んで自分の生活や考えが具体的にどう変わったか、みたいなことを書こうと思っています。
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#コラム

日本に発酵食品があるのは灰のおかげ

小泉武夫著『灰の文化誌』を読んだ。発酵と灰の関わりは深い。日本の発酵食品に使われている「麹菌」を分離できたのは、灰があったおかげだ。

雑菌の多くはアルカリ性に弱く、アルカリ性である灰よって死滅させることができる。ところが麹菌はアルカリ性に強いため、灰の中で生き延びることができ、その性質を利用することで純粋培養が可能になる。そうやって手に入った質の高い麹菌を使って、味噌、醤油、日本酒といった日本独

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IKEAに自転車で行く

前に津村記久子さんのトークショーを見に行ったのだけど、それに先だって『エヴリシング・フロウズ』を読んだ。

「IKEAに自転車で行く」という設定を知った時点で、すでにやられたという感じがしていた。津村さんの本は設定が毎回おもしろいというか、ツボだ。前の作品でも梅田のスカイビルへの地下道が大雨で水没してしまい、そこをボートで行く設定がとても良かった。ノエウチンダイとかレアな地名が出てくるのもクスッと

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体得する感じを体験したい

高橋秀実さんの『はい、泳げません』を読んだ。

泳ぎ方を解説したり、手ほどきしたりする本は世の中にたくさんある。でもこの本がユニークなのは、著者自身がまったく泳げないこと。そこからのスタートなのだ。水が怖い、という状態から著者は水泳教室に通い、一進一退を繰り返しながら、少しずつ泳ぎを体得していく。

つまり「ずっと泳げなかった人が泳ぎをマスターしようとするとどうなるのか」という体験ルポだ。泳げない

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