IKEAに自転車で行く

前に津村記久子さんのトークショーを見に行ったのだけど、それに先だって『エヴリシング・フロウズ』を読んだ。

「IKEAに自転車で行く」という設定を知った時点で、すでにやられたという感じがしていた。津村さんの本は設定が毎回おもしろいというか、ツボだ。前の作品でも梅田のスカイビルへの地下道が大雨で水没してしまい、そこをボートで行く設定がとても良かった。ノエウチンダイとかレアな地名が出てくるのもクスッと笑ってしまう。万博とか学研都市線とか自分も行きそうな地味な場所が出てくるのもうれしい。

こういうのことは大阪に住んでいるから楽しめることなのか? 全然知らない人だとどう思うのだろう?

と思って、トークショーで「東京での反応はどうですか?」と聞いてみたら、「悪くないですよ」とのことだった。知らない土地のことでも、具体的に書けば書くほど、読者は「こういう場所知ってる」という感覚を持つみたいだ。

この『エブリシングフロウズ』は中学生が主人公なのだけど、そこに描かれている世界や感覚は、自分でいうと大学生くらいのものだなと思った。自分が中学生のころはこんなに文化度が高くなかった。地方にいたからか、他の人より何年か遅れていたと思う。自分がハードロックだベヴィメタルだとか聴いていた頃に、ツムキクはニルヴァーナとかオアシスとかレディオヘッドを聞いていたのだった。

というようなフォードバックを、実際に著者に会ったときにするべきだったかもしれない。作家にとっても読者のリアクションをじかに聞くチャンスはそんなに多くないんじゃないかと思うからだ。実際はどうなのかわからないけど。

『エヴリシング・フロウズ』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?