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ピープルアナリティクスと倫理感

最近ピープルアナリティクスに関するプロジェクトを多く扱うようになって、倫理観の議論を内部でもする機会が激増したと感じる

 リクルートキャリアが就活生の内定辞退率予測を企業に提供したことが大問題となった「リクナビ事件」や、日本IBMのAIを活用した賃金決定に対して労働組合が情報開示を求めた事例は以下の記事の中でも取り上げられている通り、ピープルアナリティクスの分野が抱える問題の一端に過ぎない。

私が働いていたあるファームで「会社が私のデータを盗んでいる」と言い出した社員がいた。海外の有名大学や日本国内の大学院でアナリティクスを学んだ優秀な経歴の持ち主で、ある種の被害妄想であったのだが、単なる妄想とも言い難い部分もあった。

確かに企業側は多くの形でデータを取得し、それらを分析しており、それは従業員の利益に資するものばかりではないのもまた事実であるからだ。

個人情報の取得における本人同意やオプトアウトがきちんと行われるように私が従事しているプロジェクトでは徹底して弁護士見解も入れて対応しているが、そこが疎かになっている会社も非常に多いように思う。

人事データを扱うことは、人間を扱うことと同じであり、法的・倫理的側面に留意する必要がある。データを取得する側とされる側の両者の立場に立って公正なデータの取り扱いを学ぶ必要があるのだろう。

日本は人事の領域では、労働者側よりも経営者側の論理が優先される傾向があると思っている。日本人の賃金が上がらないのも、成果主義が失敗したのも、ホワイトカラー・エグゼンプションの議論が正しい方向にいかなかったのも、経営側の論理の優先にあったと個人的には感じている。

ピープルアナリティクスについても、労働者側の利益に資する事を真剣に考えていかないと不信感を生むだけに終わり、本当の意味での人事のデータドリブン経営は根付かないのではないかと思っている。

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