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ブチギレ文学・野村證券第2事業法人部

前半は野村證券時代の凄まじい営業マンとしての回顧録でウルフオブウォール・ストリートみのあるドライブ感で疾走していく。全て実名写真付きでエピソードを紹介していく凄まじさは思わず笑ってしまいそうになる。「ノルマ証券」と揶揄されるようなソルジャー証券マンの強豪校のような狂乱環境の中で頭ひとつ抜けている筆者の超人っぷり。こんだけやって手数料ビジネスなのも中々凄まじい世界である。

メインタイトルである第二事業法人部時代は野村の中でもエース部門という事もあり、バブルの時流に乗っかって色々取引の莫大さに現実感が無くなってしまうが、この熱狂は真実だったのだろう。社内の思惑や陰謀も乗っかってきて証券会社としての企業風土へ反発したりと色々サラリーマン大変過ぎだろと少し頭が痛くなってしまう。昭和から平成初期にかけてのオッサンたちはこんな鎬を削っていたのか?個人個人の兵隊力で成り立っている前提の風潮のなかデータベース化により効率的業務を唱える先見性は志半ばで絶たれてしまう。正直このノムラ文学単体でもめちゃくちゃ面白い。

で、この書籍のメインはこっからでオリンパス粉飾決算に関わった嫌疑で検察に睨まれてしまい、怒涛のブチギレで国家権力の強引さとオリンパスのスキームを恐ろしい熱量でライティングしていく。オリンパスのファンドを多重に噛ませた凄まじい手段は正直図解されても全く意味がわからない。オリンパス自体の財テクの負の遺産を隠し通そうとする徹底ぷりも凄いが、そこに完全に巻き込まれた形で徹底抗戦を貫き2年8ヶ月拘留される凄まじいメンタリティである。

特捜部(notまる見え)が手掛ける事件はいわゆる「けしからん罪」などと揶揄され、作り上げられたストーリーに乗っからないと凄まじい自体になってしまう当事者文学としては正直最高峰の部類にあたる。この問題の本質が対国家へと変容してしまうぐらいムカついてるんだろなというのがよく分かる。

色々スケールがデカ過ぎて虚構感に溢れる御伽噺のような世界だが、これ現実なのはすっごい恐ろしい。オリンパスのやり方に対するスキーム解説は齧ってない人間側からしてもアカンやろってぐらい凄まじく緻密に教えてくれるし、経済犯罪に対して取り締まる方の理解不足を嘆くなどこの人はタフネス過ぎるとしか感想が浮かばない。

勾留期間を差し引いて実刑判決で手打ちという裁判所のテヘペロ具合がなかなかズシっと来る。

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