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端折ってるけど1兆8千億返してるの凄くね?・起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男

リクルート事件という存在は自分の中ではロッキード事件とかと同じジャンルの歴史上の出来事で、過去のなんか如何わしい疑獄ぐらいの漠然としたイメージでいた。特捜部という正義の鉄槌文学ということで読み始めたが、リクルートという企業の勃興からの最早商売における脳汁中毒としか思えない江副氏のバイタリティは凄まじい。

インターネット以前の世界で寡占気味であった巨大資本に弓を引くような「情報の民主化」ビジネスでぶち上がり、土地開発にてバブルの中凄まじい利益を叩き出していく姿は成り上がりものとして楽しく読める。リクルートの自律的な社風は江副氏退場後もイズムとして浸透しまくっており、今日の日本に置いても偉大な影響を保持し続けている企業なのは凄い。どちらかというとリクルート事件以降のリクルート社の負債返済物語の方が凄過ぎてもうちょいフォーカスして読みたくなった。(余談だがフォーカス重役の「君たち人殺しの顔が見たくないのか?」はパンチライン過ぎる)

検察はリクルート事件に対して事件化出来ないと判断して一旦手を引いた後、商売敵でもある朝日新聞の独自の調査報道で明るみに出たというのはマスメディアのパワーを感じさせるし、マスメディアのシノギに介入するようなビジネスはちゃんと成敗されてしまうのだなと改めて思ってしまう。そして未公開株を買ってもらうという行為は当時は挨拶程度のカルチャーであり、グレーな思惑が見え隠れするが特に問題ではないという認識が意外だった。

大人のマジ喧嘩というか既得権とイノベーターの殴り合いはやっぱり見てる側からすると楽しいし、通信事業の民営化に伴う今日の携帯キャリアの勃興に江副氏が噛んでいた事や、今は亡きダイエー中内氏のリクルート再建時のホワイトナイトさはなんでそんな密室の話が隣にいるように書けるのかというほどドラマチックである。「東大卒が100人以上手に入ったから500億は安いもんや」はカッコいい。

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