アニサキス症 ~刺身を食べる際に注意~
すっかり冷え込み、秋を感じるようになりました。
秋ではサンマやサバといった魚を食べることが多くなる季節です。
今回は魚を食べる際に気を付けるべき疾患、アニサキス症をまとめてみました。
病態・疫学
アニサキスはサバやイカ、サケなどの魚類を媒介する寄生虫です
アニサキスが含まれている魚類を摂取した後に発症します
基本的にスーパーで生食用で売られているものは問題ありませんが、市場や自分で釣ったものには生きたアニサキスが含まれることがあります
消化管内に入ったアニサキスが胃や腸の粘膜に侵入し症状を呈します
臨床症状
アニサキスでは胃アニサキス症、腸管内アニサキス症に大きく分かれます
胃アニサキス症では数時間で発症し、心窩部や上腹部の激痛、嘔吐を伴います
全例ではなく2割ほどは無症状であったという報告もあります(BMC Gastroenterol. 2023;23(1):243. PMID: 37464307)
腸管内アニサキス症では5-7日ほどで発症し、腹痛、腹部膨満感、便秘を伴います
アニサキス症を診断するには
アニサキス症の診断は嘔吐物に含まれる虫体の確認、内視鏡検査で行われます 内視鏡で見つけた場合にはそのまま治療に移ります
エコーでは胃の壁肥厚が確認できます
CTでは粘膜の浮腫や肥厚が確認されます 稀に腸管壁を損傷した場合には周囲に膿瘍を形成する場合があります
CTでは似た症状をきたす疾患である腸閉塞や虫垂炎、腸炎といった鑑別に有用です
IgE、好酸球の上昇は診断の補助になります
治療方針
アニサキス症は直接切除することで治癒します
体内で数日~1週間しか生息できないため、切除できない場合には鎮痛を行い死滅するのを待ちます
多くは腸管内にとどまりますが、まれに腸管を損傷し腸管外にも影響する場合があります その際には手術となることがあります
どのように予防するか
・酢漬けするだけでは死滅しないとされています
・「よく噛めば大丈夫」といわれますが、根拠のあるものではありません
・70度まで調理、もしくは-20℃まで冷凍することで死滅します
・2㎝ほどの大きさであり注意深く除去すれば避けることができます ただし慣れていないと完全に除去することは難しいです
終わりに
今回はアニサキス症に関してまとめてみました
非常に強い痛みを伴うため、ならないに越したことがありません
刺身を摂取する際、特に釣った魚では注意深く確認する 可能なら調理したものを摂取するようにしましょう。
参考文献
・農林水産省.”海の幸を安全に楽しむために ~アニサキス症の予防~”.https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/anisakis.html(参照 2024-10-17)