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【連載】スローイン・ファストアウト 2


前作


○○はおいくつですか。
意を決して聞いてみた。
この日は○○があまりにもプライベートな話をするものだから、合わせて私も調子に乗ってみた。
いつもより饒舌な○○は、表情は変わらないが少し楽しそうだったから。

「いくつに見えると思いますか、といつも聞くんです。」と○○は言う。
聞かれ慣れてる質問なんだと感じた。
爪痕を残したいのに浅はかだったなと軽く反省した。
「私、人を見る目がないんです。」と伏線を張る。
「とりあえず言ってみてください。」と言われたものの本当にわからないから返答に困ってしまった。
たかが年齢を当てるだけなのに手に汗握るほど焦る。
とにかくアガり症なのだ。
「じゃあ…29、かな?」
…の部分はかなりもごもごと、他にも言い訳がましいことを言った気がするが、要約するとこんな感じだったはず。
「ふーんいい線いってますね。」と○○。
「28です。大人の方はそこそこ当ててきますね。なんだか、面白くないですね。」
面白くないと言われてしまったのが少しショックだった。
むぅ、と膨れっ面したいのを抑え○○の表情をチラ見すると、頬杖しながら楽しそうににやにやとしてた。
落ち込んだ気持ちが半分くらい去っていった。私の心は随分素直だな。
「24ですか、とか、学生さんは二十歳とか言うんですよ。」
前述したがこちらは相当見る目がないので、まあ二十歳に見えなくないというのは黙っておいた。これ以上ショックは受けたくなかったので自衛ってやつだ。
別れた後、もっとユーモアを効かせた返答をしたかったと反省しつつも、
今日も○○が好きだなと思った。

* * *

今日は○○が一つ年下という収穫があった。頑張った甲斐がある。
(私にはこれっぽっちも容易にできないのだ。悲しい哉)
私は今まで年下にからかわれていたのか、と気付いてしまったが全く嫌ではない。
むしろ二十歳じゃなくてよかった。
それだけ年が違うとなると、今までかなりしごかれてきたので、無駄にプライドの高い私はさらにショックを受けただろうな。



云寺

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