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ラスト・チャンス(45) 〜ゲームの主人公に転生したら、どのルートもバッドエンドだったんですが!?〜

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第45話 ガールズトーク

 事件も解決して二年目の授業にも慣れ、アカデミーは……と言うか、私の周りは平穏を取り戻していた。一年以上一緒のクラスで過ごしていると仲間意識も芽生え、今まで以上に皆と親しくなった気がする。三王子たちはもちろん、カーラやシアーラ、それに他のクラスメイトともね。

 放課後には特に仲の良いメンバーと集まってティータイムを楽しむことも多い。これは大学生だった前世でも同じ様な感じだったなあ。授業が終わったらみんなでファミレスやカフェに行ってたもんね。今日もカーラとシアーラ、それにドロシーと一緒に食堂へ。

「カーラはユージーンと上手くやってるの? 婚約した後もあんまり変わった感じしないけど」
「うーん、婚約したのは嬉しいけど、彼との関係は今まで通りって感じかな。ずっと一緒にいるからね。でも、充実はしてるわよ」
「そう。何よりだわ」

 従姉妹と分かって以来、彼女とは以前よりもっとフランクに話し合える様になった。二人きりの時はちょっとエッチな内容も喋ってくれるもんね。前の扉の中でエマが会った時はちょっと不機嫌そうな女性だったけれど、付き合ってみると普通のカワイイ女性。そして、こっち側。恋愛小説やファンタジーものの小説が大好きで、こっそり結構なコレクションを所持しているそう。一度ラッシュブルックの彼女の部屋に訪問する必要がありそうだわ。そりゃマシューとサイモンの仲に食い付いて当然ね。

「エマは婚約者候補、どうするの? アカデミーを卒業したら婚約するつもり?」
「うーん、そんなに急がなくてもいい気がするけど。第一相手もいないし」
「え? エマはマシュー王子と付き合ってるんじゃないの?」

 カーラと話していると、ドロシーが少し驚いた様子で聞いてくる。ああ、そうか。ドロシーはマシューとサイモンのことは知らなかったわね。剣術の練習で良く王宮の騎士団の元には来ているから、私とマシューの噂を聞いたのかしら。

「マシューにはお相手がいるのよ」
「そうなんだ」

 カーラとシアーラも頷いている。知らないのが自分だけと分かって、ドロシーもそのお相手を知りたい様子。

「アカデミーでは女性といるところを見たことないけど……」
「いつも一緒にいるじゃない」
「いつも? 彼がいつも一緒にいるのってサイモンよね。女性じゃない……って、えっ!?」

 シーッ! 声がでかい! 皆に注意されて、慌てて手で口を抑えるドロシー。

「お、男同士ってこと!?」

 周りが頷いているのを見て、信じられない様子のドロシー。BLや百合はダメな派か?

「そ、そう言うことって本当にあるのね。噂だけは聞いたことあったけど」
「小説では結構あるわよ。今度貸そうか?」

 カーラにそう言われて無言で頷くドロシー。なんだ! 興味あるんじゃない!

「と、ところで男性同士の恋愛と言うのは、どんな感じなのかしら」
「どんな感じか? うーん、そうね……」

 今度は私が彼女に耳打ち。ごにょごにょ……と、『一般的な』BLの世界を少し教えてあげると、見る見る真っ赤になって俯いてしまった。

「エマ、あなた王女なんだから、そう言うことは知らないことにしておきなさいよ」
「えー、普通の女子は興味あるでしょう。シアーラは興味ないの?」
「フフフ」

 意味深に薄っすら笑ったシアーラ。興味あるんじゃない! でもシアーラって酸いも甘いも噛み分けたって感じよね。落ち着きがあると言うか、貫禄があると言うか。イーサクルの古文書を見てるときは子供っぽいけど。

「シアーラってさあ、今、幾つなの?」
「私? えーっと、百五十ぐらいだったかしら?」
「!?」

 全員が紅茶を吹き出しそうになる。百五十!? 五十じゃなくて!? いや、五十でもびっくりだけど。

「ひ、人じゃないの!?」
「私たちの種族は人と外見こそ似ているけれど、人よりもずっと長命なのよ。イーサクルを扱う者も多いわ」

 エルフみたいなもんか。でも耳は長くないから、この世界にはエルフなんて種族はいないのかもね。魔法っぽいイーサなんてものがあるから彼女みたいな種族がいてもおかしくはないけど、私はてっきり二十五ぐらいかと思ってた。

「それだけ長く生きていれば、王宮の古文書は見たことあるんじゃないの?」
「あそこには旧王国時代やそれ以前の三百~五百年前のものもあるの。私たちの間でも失われた知識と言っても良いものなのよ。だからエマには感謝してる」

 ここ一年ぐらいで一番びっくりしたなあ。めっちゃ年上だからもっと敬語使った方がいいのかと思ったけど、今更か。その後も皆でワイワイ盛り上がっていると、再び恋愛の話になった。

「エマはレジナルドと婚約するつもりはないの?」
「インファンテの第一王子ですからね。アナスタシア様のお眼鏡に適うのは大変でしょう?」
「そうねー」

 カーラが頷く中、ちょっと『ヤバイ』って感じの顔をしたドロシー。他の三人がそれを見逃すはずがない。

「ドロシーはアナスタシア様にお会いしたことは?」
「な、ないけど……」
「そう言えば騎士団の練習でレジナルドと一緒になることも多いんじゃないの?」
「ええ、まあ……」

 レジナルドの名前を聞いてモジモジしだすドロシー。私を含めカーラもシアーラもニヤニヤしている……ドロシー、わっかりやすいなー。前の扉の中ではエマとレジナルドは婚約していたわけだけど、ドロシーの様な女騎士の方がレジナルドには合っているかもね。

「で? 好きなの?」
「えっ!? いや、その、騎士として尊敬していると言うか」
「そう言うのはいいのよ」

 ニコニコしながらカーラが言うとたじたじのドロシー。剣を持ったときの凛々しい彼女はどこへ行ったのやら。カーラの圧力に負けたかの様に、顔を真っ赤にしながら俯き加減に頷くドロシー。

「でも、私の片思いだろうし、彼とはホント身分も違うし!」
「そう? じゃあ、私が先に婚約してしまおうかしら。アナスタシア様とは懇意にさせて頂いているし」
「そんな!」

 まあ、冗談だけどね。第一王子のレジナルドが私の王配になるなんてアナスタシア妃が許してくれるはずがない。前の扉の中では暗示の効果があったとは言え、それでエマが殺されちゃったんだから。

「フフフ、レジナルドの気持ちは聞いてみた?」
「いえ、時々王宮騎士団の練習場で一緒になって少し喋るぐらいだけだし」
「なら、もう少し落ち着いて喋れる場所を作って上げましょうか? 幸い、騎士団には私の知り合いがいるのよ、レオって言うんだけど」

 レオに協力してもらって、練習上がりの二人を誘うぐらい造作もないこと。王宮にはシアーラも居るし、従姉妹ってことでカーラも呼べる。ああ、友達の恋愛に協力するってなんて楽しいの! もちろん私のコネでアナスタシア妃に会うことも可能よ。王女たる私が全力でバックアップしてあげる!

 しかし、これで私の婚約者となるはずだった三王子は皆パートナーができたことになるわね。やっぱこの世界線じゃ、私の結婚は難しいかな? まあ、私的にはイーサラムの研究ができれば結婚できないまま女王になったとしても問題ないんだけど。

「それで、エマはどうするわけ? 三王子と婚約できなくても問題ないの?」

と、シアーラ。あなたこそ……と思ったが、百五十歳ならもうそんなことは超越しちゃってるのかも。

「三王子だけが男性ではないですからね。その時が来たら誰か探すとしましょうか」
「レオはどうなの? 離宮でエマが姉さんを助けてくれた時、抱きしめられてたじゃない?」
「レオかあ……幼馴染だし、いつも護衛してくれてるし、嫌いじゃないわよ。でも、恋愛対象かと聞かれるとそうじゃない気もするし」
「はぁ……」

 カーラやシアーラだけでなく、ドロシーにまで呆れられてしまった。

「レオが気の毒だわ」
「ホントねえ。エマ、イーサグラムばっかり作ってないで、たまにはレオの気持ちも察してあげなさい。いつも工房に付いてきてもらってるでしょう?」
「うーん、身近にいすぎてもう姉弟みたいな感覚なのよね。そうだ! 一回キスでも!」
「そういう所よ!」

 怒られてしまった。どうも皆は私とレオをくっつけたいみたいだなあ。まあ、三王子との婚約がなくなった今、一番近くにいるのはレオだしね。もちろん、レオが私のことを好きでいてくれることは分かってる。あれだけキツく抱きしめられたら、鈍感な私でも気付くって。

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