角野桃花

1996年生。東京大学教養学部卒。2021すばるクリティーク賞最終候補(「サブカルチャ…

角野桃花

1996年生。東京大学教養学部卒。2021すばるクリティーク賞最終候補(「サブカルチャーの〈娘〉とその〈母〉と〈父〉――『キルラキル』を通じて)。第65回群像新人評論賞最終候補(「「ママ」をもう一度人間にするために――『約束のネバーランド』と『かか』において」)。

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そうはいっても『鬼滅の刃』が好きです

※『鬼滅の刃』の最終話までのネタバレがあります。  一番好きな漫画は何かと聞かれたら、今の私はきっと『鬼滅の刃』と答える。もちろん、作品として批判されるべき点があるのもわかっている。これだけ売れたのは作品の力だけによらないのも、私は知っている。  ただ、私は『鬼滅の刃』と社会の関わり方に興味があるというより、自分の個人的な事情があって強くこの作品にこだわっている。 1:怒りを忘れないこと これは家族を殺され、鬼になった妹の命乞いをする炭治郎に鬼殺隊の冨岡義勇がかけた言葉

    • 実家と記憶の話

       私は実家に帰るのが嫌いだ。  それは、もちろん家族との仲があまりよろしくないというのも大きな理由だけど、なにより過去というものは不確かなくせに私を孤独に追い込んでくると痛烈に感じるから。  うちは、精神疾患を持つ母を抱えていた。そして、母いわくモラハラの父から逃れて母の実家でくらしていた。母はしばしば鬼になった。  私はいまさら過去の傷を並べることはしたくない。語るのは本当に疲れるから。繰り返す語れば語るほど、自分に起きたことが陳腐に思えるのもよく知っている。記憶は語る

      • 「ママ」をもう一度人間にするために―『約束のネバーランド』と『かか』より(2/2)

        第65回群像新人評論賞最終候補に残った「「ママ」をもう一度人間にするために―『約束のネバーランド』と『かか』より」の後半です。 前半はこちらから▶https://note.com/taohuasumino/n/n3add51580498?sub_rt=share_pw ===================== ◯子どもは「ママ」の神様  次に、「ママ」が鬼の世界で育てる食用児は一体何を象徴するのかについて論じていく。端的に言うと、「ママ」は私的領域で自分が生き延びるため

        • 「ママ」をもう一度人間にするために―『約束のネバーランド』と『かか』より(1/2)

          第65回群像新人評論賞最終候補に残った「「ママ」をもう一度人間にするために―『約束のネバーランド』と『かか』より」の前半です。 ===================== 「ママ」をもう一度人間にするために―『約束のネバーランド』と『かか』より (1/2) 角野桃花 文学はいつも「ママ」をいないことにしている。  頓狂なことを言い出したと思うだろうか。たしかに、母というひとりの人間の身体に縫い付けられた「母性」という概念については、文学は饒舌だった。  文学と「母性」といえ

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