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ゆらめき IN THE AIR

映画Fishmansを見た

佐藤伸治の生き様を見た

圧倒的エネルギーを前にして打ちのめされることは本当にある

鑑賞中、心拍数が上がり、呼吸が荒くなり、体がどんどん熱くなっていくのが分かった

苦しくて抜け出したいとさえ思った

音楽に愛され、音楽に取り憑かれ、音楽に蝕まれて、それでも音楽しか愛せなかった人の一生がそこにあった

時を追うごとに彼の表情は変化する

もともと細い身体がみるみるうちにやせ細り、頬はこけ、魂が抜け出していく

とても儚くてとろけそうに陶酔した顔、虚ろでありながら輝きだけは増していくような瞳が脳裏に焼き付いて離れない

人は死んだら伝説になる

必要以上に神格化されるし現実以上に大きな才能をもてはやされる

特に単純な私は病的なものにあこがれやすいし、後付けの話なのかもしれない

それでもそこにあったのは紛れもなく、痛々しくて神々しいまでの死の気配だった

晩年の彼はろくに眠らず高熱が続いても曲を作り続け、酸素を吸入しながら歌い続けた

エンジニアは言葉通り目から血を流しながらミックスをした

躁状態の熱量は途方もなく、何かを生むという行為は異常なことのように感じた

天才が若くして死ぬのは悲しいけれどある意味で当然かもしれない

彼らは人が60年、70年で使うエネルギーを瞬間ですり減らし、使い果たしてしまうから

だから私たちは感動する

刹那の輝きほど美しいものを私は知らないし、きっとみんながどこかでそれを求めている

最後のライブを見た人はあの景色を、空間を、音を忘れることはないだろうと思った




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