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古民家と外界の音

 古民家に住んで一般的な住宅と違う点は多くあるけど、一番「これまでの家と違う!」と思ったのが「音」だった。外界の音が丸聞こえなのだ。家の前を歩いている人の話し声がとにかくクリアに聞こえて筒抜け。でも「これが古い家のデメリットか」とは思わなかった。むしろすごく気に入っている。

 そもそも古民家が残っているくらいの地域なので、家の前をビュンビュン車が通ったりとか、若者が騒いでいたり、酔っ払いが徘徊していたりなんてことは一切なく、基本的にはいつもとてもとても静か。だからたまに外界の音や近所の人の声が聞こえるくらいなんの問題もない。

 大家さんと大家さんの息子が親子喧嘩する声、大家さんと近所の人の世間話(何を話しているかはっきり聞き取れる)。「うわーかわいい家〜住んでみたい〜」とか「梅が咲いてるね」など、うちの前を通った人の会話。隣の人が帰宅して玄関のドアを開け閉めする音。近所の子供達が遊ぶ声。

 これらの音が聞こえると、むしろ結構ホッとする。他人の生活の隙間に入り込んだようなスリルも少し感じる。

 それから、雨音、鳥のさえずり、風の音、動物や虫の声など自然界の音が聞こえるのも、とてもいい。
 特に晩夏から秋にかけての日が暮れた後の鈴虫の声は胸に響く。鈴虫の音色は、もちろんそれまでも聞いたことはあったけど、盛大な合唱が、まるで野原で寝てるような聞こえっぷり。そして、音色に癒されるだけでなく、自分が自然界や地球の一員であることを体感したし、なんというかこう「1人じゃないんだな」と思えて、胸の中に小さなあかりが灯ったような気持ちになった。古民家は、自然との距離が、近い。

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