コーチ物語 クライアント29「桜、散る」その7
時計はもうすぐ今日の終わりを告げようとしていた。僕は黙ってミーヤンの写真を見ているだけ。
「あれは6年前だったかな。やすとしが小学校を卒業したすぐだった。お祝いにみんなで車で家族旅行に行ったんだよ。けれど、私は仕事で急に呼び出されて。旅行の途中で先に帰ることになってね」
ミーヤンのお父さんはそう淡々と語り始めた。僕はただその言葉に耳を貸すしかなかった。
「妻の喜美江は免許はもっていたけれど、あまり運転はしない方で。旅行を取りやめようかともおもったけれど、やすとしがどうして