見出し画像

花束みたいな恋をした

レビューが遅くなりました。
大好きな坂元裕二さんの脚本。
「Mother」「それでも、生きていく」「最高の離婚」「カルテット」などなど、過去に放送された坂元作品が大好きで、この作品も上映前からとても楽しみにしていました。
noteを書くのが遅くなりましたが、結局3回観ました。本当に良かった。

以下、ネタバレを含む感想です。


◆カルチャーに関する価値観

坂元裕二さんはカルチャー(映画、本、音楽など )に対する価値観をとても大切にされる方なのだと思います。
過去のドラマ作品でも、カルチャーに関する価値観の相違が別れの決定打となる描写が見てとれます。

【カルテット】
・映画を観ている時に「この人悪い人?」「これってハッピーエンド?」と繰り返し聞かれて、話に集中できない
・勧めたお気に入りの詩集を一向に読んでくれないばかりか、咄嗟にパエリアの鍋敷きにされる
・「ちょっと遠いけど新しく出来たカフェ行かない?」という提案に「コーヒーなら淹れるよ」と返される

【最高の離婚】
・お父さんが亡くなったとき心の支えになった、音楽への夢を抱いて何千回と聴いた、お気に入りの曲を「安っぽい花柄の便座カバーみたいな音楽」と評される

それに対し、本作のカップルはカルチャーに対する価値観が一緒。
お互いの大切なものを大切にし合えるカップルです。
また「大切にしているカルチャー」がちょっとマイナーであるため、価値観が一致したことに運命的なときめきを感じます。

ですが、「花束みたいな恋をした」というタイトルから推察されるように、この二人の恋は別れの結末を迎えます。
カルチャーに対する価値観が「元々ずれている」カップルではなく、「段々とずれていく」カップルが描かれるのが本作です。

「就職」をきっかけにして「ずれていった」ようにも見えましたが、カルチャー以外のものに対する価値観は、元々二人違っていたのかなとも思います。
「始まりは終わりの始まり」と考える絹ちゃんと、人生の目標を「絹ちゃんとの現状維持」とする麦くんなので。

二人の価値観のズレが顕著になってきたときの麦くんの言葉。

「また何かして欲しいことあったら言って、映画とか」

私はこの言葉がすごくショックでした。
観たいわけではない映画に付き合ってくれる麦くんは優しいまま。
だけど、映画は「二人で一緒に楽しむカルチャー」ではなく、「絹ちゃんを喜ばせるサービス」に変わってしまったんですね。

◆一時の恋愛と、日々の生活

同じタイミングで別れようと考える二人ですが、麦くんは途中から「別れる必要はない。このまま結婚しよう」と言い出します。

「喧嘩ばかりしてたのだって、恋愛感情が邪魔してたからでしょ?」

と「一時の恋愛」ではなく「日々の生活」であれば僕たちは上手くやっていけると訴える麦くん。
私、3回目に観たときここの場面が一番刺さりました。
個人的な話ですが、夫婦関係で色々思うところありまして…
「2人の時間をもっと作って欲しいのは私だけ?」とか、「恋人から夫婦になった途端色々変わってしまったなぁ」とか。
それって全部恋愛感情に依るものなのだと思います。
割り切って生活のためのパートナーとして接すれば、そんな悩みは無くなるなぁと思いつつ、それはそれで悲しい気もして…
結論は出ませんでした。

◆花束みたいな恋とは?

この映画「恋人と観ると別れる」的なジンクスがあるらしく、少し笑ってしまいました。
私はむしろ「夫にもこういう過去があるんだろうなぁ」と思い悲しくはなったものの、今一緒に居られることにちょこっと感謝しました。

「花束みたいな恋」とはどんなものなんでしょうね?
「花束とは?」で考えてみました。
花の一番綺麗な時期を切り取ったもの、鉢植えと違い根差していない(生活とは違う?)とか?

色んな解釈があるかと思いますが、私は絹ちゃんの台詞を加味した解釈をしています。

「女の子に花の名前を教わると、男の子はその花を見る度に一生その女の子のことを思い出しちゃうんだって」

「見る度に一生その女の子(男の子)のことを思い出しちゃう」ものが、街中に溢れているってことじゃないかなと勝手に思っています。
ミイラ展、ガスタンク、イヤホン、映画の半券。

誰にでも、そういう「ものと結び付いた思い出」ってあるんじゃないかな?
私と夫はもう「恋」ではなく「生活」にシフトしているけど、たまには2人でそんな思い出を振り返るのもいいかもしれない。
そんなことを考えた映画でした。

長い文章読んでくださりありがとうございます!



いただいたサポートは、好きな小説を買うのに使わせていただきます。購入した小説はnote内で紹介します!