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心療内科の診察券を、隠す私と

ベッドの上にい続けて、二日くらいでさすがに涙が枯れた。 動けるフリだけしていた会社のチャットは、たぶんもう異変に気付いている頃。本当にどうしようもないくらい動けなくなってしまったので、心療内科の予約を入れる。全身の力が抜けてしまって、幽霊のような動きしかできない。重力に十分逆らえない体を引きずるようにして、玄関に置いてある財布を目指す。 学生時代にもらってから、一回も買い替えていない、黒の長財布。使い込まれた、というよりは、ケアのないまま使って放置したから、ゆるゆるになっ

    • Twitterという暴力装置の話

      メンタルが、絶不調である。 先週一週間、精神の調子が荒れ狂っていた。体感は、昔の東映の映画のオープニングみたいな感じ。静かな空間の背後から、波が現れて、岩にぶつかり、「東映」の白い文字が迫ってくる、あれ。ざっぱーん、どしゃーん、ぐわあ。これがエンドレスに繰り返される。適応障害になってこのかた、ぐるぐる回っている、という表現をよく使うのだけど、それよりずっとひどかった。極め付けに、金曜日の夜から体調を崩した。人生と同じで、「おや、おかしいぞ?」と思った時にはだいたい時すでに遅い

      • 私の適応障害とにんにくチューブ

        GWが終わる。 感染症の影響もあってろくに外出しなかったが、なんだか連休が終わってくれることにホッとしている。 休職から明けて、そろそろ1年になるが、私はまだ全然本調子で働けていない。 突然、どん底に落ちるような落ち込みと熱や頭痛がきて、祈るような気持ちで心療内科の薬を飲む。だいたい効かず、副作用でぐるぐる目の前が回っているような感覚になりながら、ベッドで伏せる。現世で相当な悪事を重ねてきた自覚があるので、ただ自分だけ呪って、自分が傷つけた人に謝る。 そんな感じなので、世の

        • 変わらないAVジャンルと、いつからオトナ論

          「気づいたら27歳なのやばくない?めっちゃ大人じゃん」 最近、いろんな友人と会うたびにのぼる話題の上位に食い込んできた、「いつからオトナ論」(「気づけばオトナ論」とも)。 年齢による衰えを感じないでもないが、聞いていたほど急峻ではないし、私自身が元から容姿が若く見られがちだったこともある。結婚もしていないし、休職を経たため、仕事面でも“昇って”いる感覚がほとんどない。 平日5日間朝起きて、働いて、仕事が終わってご飯を食べて、テレビを見て、風呂に入って寝る。休みの日に、学生時

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          震災から5年後、三菱重工の説明会でこみ上げた私の怒りについて

          あの震災から10年がたった。 埼玉県出身の私にとって、東日本大震災はどこか他人事だ。 揺れは経験した。計画停電で、ロウソクを灯した。ACジャパンのCMを覚えている。「絆」がしきりと叫ばれたことを覚えている。 でも帰宅難民にはならなかった。期末テストが終わっていたから、遊びにいけないだけで特に生活は変わらなかった。震災や津波被害の痛ましい映像を、テレビ越しにまるでSF映画でもみるようにして見ていた。 テレビといえば、マンション最上階の自宅で母と揺れを経験したのだが、ものす

          震災から5年後、三菱重工の説明会でこみ上げた私の怒りについて

          72時間『“多国籍団地”のゆく年くる年』

          「ただ日本の国、好きじゃないよ 食べ物から、もの、箸から、あとお皿から同じ 日本を好き 気持ちも 日本語下手けど、でも、寝るときね、日本語夢見るよ」 涙が溢れて溢れて止まらなくて、自分の胸のあたりがずっと熱かった。 NHKドキュメント72時間『“多国籍団地”のゆく年くる年』を観た。 日本に来て38年のラオス人のご夫婦。 家賃の安い、古い団地の彼らの部屋には、いっぱいの日本の漬物。 奥さまが、日本のテレビを見て、作り方を覚えたという。 取材スタッフの「美味しい!」の

          72時間『“多国籍団地”のゆく年くる年』

          「たなごころ」

          「同じ手なのに、握れば拳、開けば掌(たなごころ)。掌とは手の心って意味だ。わかるか?いつかおまえが俺の前で自分でこの拳を開いてくれる日がくると信じてるよ。」  ずっと昔に見たドラマで、こんなセリフがあった。手の内側、つまり手のひらを指す言葉として、たなごころという言葉がある。手のひら、と聞いて、ふとドラマのセリフを一緒に思い出した。  去年の春、世界が新型ウイルスで停止する中、私はベッドの上から動けなくなった。リモートワーク用のレッツノート、会社から支給されたiphone

          「たなごころ」

          【鬼滅の刃】煉獄杏寿郎と吉田松陰(コテンラジオ)

          ※鬼滅の刃、コテンラジオに関する内容を躊躇なくネタバレしていきます。 「てかさー、結局煉獄さんって、上弦の鬼一人も倒さずに負けちゃってたし、あんま大したことしてなくね?」 は? 感染拡大の止まらない年の瀬。人を待つために入った中目黒駅近くのスターバックスコーヒーで、強烈な違和感を覚えた隣席の会話がありました。ちらりと視線を送ると、20代中頃の男女が漫画「鬼滅の刃」、その映画である「劇場版鬼滅の刃 無限列車編」について話している姿が見えました。 本題に入る前に少し説明を

          【鬼滅の刃】煉獄杏寿郎と吉田松陰(コテンラジオ)

          プロフェッショナル田中みな実と自己肯定感

          「相手が望む以上のものを安定的に供給できる人」 NHKの人気長寿ドキュメンタリー番組、プロフェッショナル仕事の流儀 田中みな実の回をみた。45分がものすごくみていてきつかった。そして、大変な勇気をもらった。 冒頭の「相手が望む以上のものを安定的に供給できる人」というのは、番組で恒例の「あなたにとって、プロフェッショナルとは?」と言う質問に対する彼女の回答。スガシカオのprogressを聞きながら、私は、彼女ほど才能や美貌に恵まれた、不幸な人間を知らないように思った。 番

          プロフェッショナル田中みな実と自己肯定感

          【未完成】適応障害になった私が、ダウンの波がきた時にやってよかったこと(個人的)

          ※以下、120%個人の感想です。ただ、「自分がこうやると一気に落ち込む波から抜けられる」ということを記録しておくことは有効であると思います。 ①即効性×実施ハードル低・掃除をすること  トイレ掃除がもっとも効きました。理由は、掃除対象が狭く限定されており、汚れが取れたことを実感しやすいから。 掃除は、 ・無心になって体を動かし、 ・誰かの役に立ち(当時同棲していたため)、 ・目に見える形で成果を実感でき、 ・掃除をしたことで後悔をする、ということが限りなく考えられず、 ・思

          【未完成】適応障害になった私が、ダウンの波がきた時にやってよかったこと(個人的)

          あいりん地区から見る貧困と福祉のあり方

          (2017年8月の西成あいりん地区) 白波瀬達也の『貧困と地域』、副題は『あいりん地区から見る高齢化と孤立死』。大阪西成地区が、敗戦後のスラム街から日雇い労働者の町、そして福祉の町へと変貌していく歴史と実情、そして将来展望を分析した本。 今回は、あいりん地区に関する書籍から生活保護、福祉と政治について考えてみたいと思います。 
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あいりん地区には、今から三年前と五年前に一回ずつ訪れたことがあります。 いずれも大阪旅行に行った際、大学生の頃のことでした

          あいりん地区から見る貧困と福祉のあり方

          改憲のための国民投票はいつが妥当か?

          #国民投票 反対派は反対に投票すればいいじゃんという意見がだいぶ目立つけど、勢いに乗って国民投票でEU離脱決めてからずーっと混乱し続けてた国を見ていなかったのか。憲法を変えるべきポイントはどこなのか、国民の多数の理解や意見が醸成される必要がある。 それが本当に今? 先日、上記のツイートをしたところ、とあるTwitterユーザーから「じゃあいつやるの?70年間変わらなかったけど」というコメントをいただきました。(失礼ながらコメントをいただいたユーザの過去の投稿を確認したところ

          改憲のための国民投票はいつが妥当か?

          中村文則『R帝国』と分断の時代

          『教団X』で話題をかっさらった中村文則の『R帝国』。 近未来ディストピア政治小説。平成令和の日本版『1984』と言えるかもしれない作品です。拙いSFやこれいる?と正直思ってしまったメロドラマの部分など疑問符が残る描写もありましたが、一読の価値はある作品だと思います。(ポジションを明らかにする意図で書きますと、私は中村文則の結構なファンですが、『R帝国』は『教団X』より明確に劣ると思っています。) === ここ半年くらい、同棲をはじめた彼女に政治の話をする機会が増え

          中村文則『R帝国』と分断の時代

          カネコアヤノが感動したもの

          コロナが日本に拡大したのと同じ頃、仕事を休職していました。 世界から置いてけぼりを食らっているような日々のなかで、「カネコアヤノ」というアーティストに出会いました。どこか懐かしいメロディと繊細な言葉選び、そしてどこまでも通るような力強い大きな歌声。 他のどんなアーティストにもない本物の魅力にやられてしまい、以来四六時中聞いています。その魅力を伝えるために、私なりの解釈の仕方をまとめてみようと思います。 アルバム「燦々」より、「ぼくら花束みたいに寄り添って」 ぼくら花束

          カネコアヤノが感動したもの

          【サカナクション】山口一郎さんのバンド飯レシピ、トンテキ作ってみた

          自宅療養・自粛生活の楽しみとして、今まで一切手を出していなかった自炊にチャレンジして2ヶ月。 5月13日にTOKYO MXの音楽番組『69号室の住人』にて、ロックバンド『サカナクション』のボーカル、山口一郎さんが紹介されていた「トンテキ」を作ってみました。 このメニューは上京して間もない頃によく作っていたというバンド飯。お金がなく、牛肉を食べたくても食べられなかった当時、お腹いっぱいお肉が食べられるメニューとして考案したそうです。 CM・ニュースのテーマソングに起用され

          【サカナクション】山口一郎さんのバンド飯レシピ、トンテキ作ってみた

          適応障害1週間目、『ツレがうつになりまして』を観て

          こんにちは。 『ツレがうつになりまして』 今から10年くらい前、2011年に宮崎あおい、堺雅人主演の映画。 適応障害と診断されて1週間、Amazon Primeで観てみました。 ◆『ツレがうつになりまして』_あらすじ堺雅人演じる「ツレ」は、ソフトウェアパッケージの小さな会社に勤務する会社員。口ダカの「高橋」ではなく、ハシゴダカの「髙橋」であることにこだわる真面目な性格で、業務はPCソフトの問い合わせ対応をしている。零細IT企業やB2Cの仕事のご多分にもれず、理不尽でバ

          適応障害1週間目、『ツレがうつになりまして』を観て