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【詳報】ピリカグランプリに招かれて

 お読みいただき有難うございます。皆様は「ピリカグランプリ」というnoteにおける私設大会をご存知でしょうか。
 
 募集の対象は、或るお題に沿った800~1200字までの掌編小説です。これまでに開催された 3回(2021年6月、2021年12月、2022年6月)は、それぞれ百花繚乱の100を超える作品が集まりました。お題は開催順に、睡眠、あかり、かがみ、でした。
 
 当方は、2回目に灯作 -TŌSAKU-、3回目に暮れ鏡、を投稿しました。どちらも拙稿の中では、アクセス数が多かったようです。後者は、ハンサムな賞で男を上げていただきまして、審査員の方の書評が今も心に残っています。
 グランプリの大海へ、次回も精力的に航行するつもりでしたが――
 
 なんと! この度の「春ピリカグランプリ2023」は、ゲスト審査員としてお声が掛かりました。僭越ながら、ご応募いただいた作品を実直に審査いたします。新たな挑戦で、少しばかり緊張しています。
 
 お題は「ゆび」に決まりました。審査員は 9人です。10本の指に例えるならば、1人足りません。
 おやおや、運営さんのミスでしょうか。
 
 いえ、違います。我ら兄弟航路は、実の兄弟の 2人組ですから。
 粋な選出と理解しています(笑)。半人前の 2人できちんと話し合った上で、1人分の審査結果をお出しします。
 この点に注目するなどの、明確な指標を持ち合わせていませんが、心構えとして、手短にお話ししたいことがあります。
 
 皆様の中には、群像、新潮、文學界などの、著名な文学賞に応募されたことがある、という方がいらっしゃるでしょう。応募作は1500~2500程のようです。類い稀な才能がない限り、ごく当たり前に落選するのですが、自信作であれば、読まれていないのではないかと疑ったり、恨んだりします。自分の力量は過大評価しがちです(笑)。
 当方も、そんな経験がありますから、似て非なるものと考えず、審査員として参加する以上は、すべての応募作を必ず読む、とお誓います。もちろん流し読みではありません。首を傾げれば再読します。書き手の皆様お 1人ずつと、まず指切りを交わしたい気持ちです。
 
 そして、お祭りと捉える、楽しむ気持ちもあります。気軽に書かれた作品もあるでしょう。グランプリの軽やかな語感と字面が示す通り、それは大いに歓迎されています。
 初めて小説を書いてみようと、執筆に指を染める方もいらっしゃるかもしれません。
 
 うぶな初体験であっても、言葉選びに悩んだなら、その苦しみは立派な文学です。指導とするか、指南とするか。掌編は選んだ言葉が際立ちます。
 当方は、微妙なニュアンスを汲み取れるように努めます。
 
 春のグランプリということで、季節感のある作品であれば風情を感じます。暦の上ではもうじき夏ですが、天文学的にはまだまだ春です。
 光る風から薫る風に変わる頃――
 良い時期を春とするならば、5月初旬は春真っ盛りです。
 
 作品の中で、指はどんな使われ方をするでしょうか。
 人差し指は、塩嘗め指とも言います。薬指は、紅差し指とも言います。フランス語の小指は、耳の(auriculaire)という形容詞が当てられているようで、要するに耳かき指と訳せます。
 いずれも平凡な指使いを示していますが、話の流れで平凡なそれを秀逸に見せる活かし方があるかもしれません。フィクションならではの、斬新な指捌きにも期待しています。
 
 ご応募に際して、高価な万年筆はお飾りです。原稿用紙を買いに行く必要もありません。
 貴方様も是非、その指先で小説を書いてみませんか。


【募集要項】春ピリカグランプリ2023
 指定された文字数と募集期間にご注意ください。
 

 最後に、金子みすゞの「けがした指」という詩をご紹介します。

白い繃帯ほうたい
してたら、
見てもいたうて、
泣きました。
 
あねさまの帯借りて、
あか鹿の子でむすんだら
指はかはいい
お人形。
 
爪にお顔を
いていたら、
いつか、痛いの
わすれてた。

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