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【推薦図書】コンドウアキ著『ゆめぎんこう』

 <あらすじ>
 ゆめぎんこう(夢銀行)は、夢の飴を専門に扱う特殊な銀行です。お客様から夢を買って、夢の飴に替えて売ります。店主はぺんぎんの”ぺんぺん”。相棒はバクの”もぐもぐ”です。怖い夢を買っていく変わったお客さんもいます。
 ある日、とあるおじいさんから依頼が来ます。夜道、おじいさんの家へ向かいます。おじいさんが眠るのを待つと、じきに楽しそうな夢がたくさん出てきました。多すぎて、もぐもぐは夢を食べきれません。夢の途中までで、ふたりは銀行に帰ります。

 翌朝、おじいさんがやってきて、本当に飴にしたかった夢について語ります。それは、かなり前に亡くなってしまった妻との夢でした。もぐもぐが食べきれなかった後の夢だったのです。
 けれど食べきれなかっただけで、もぐもぐは夢の断片を覚えていました。若い女性と男性の姿。女性はきれいなリボンを髪につけていましたことを伝えました。いつのまにか、おじいさんは泣いていました。
 
 ぺんぺんは祖父から受け継いだこの仕事をあまり好きではありませんでしたが、たまにやっていてよかったと思えるのでした。


<わたしの感想>

 本書は、児童むけの絵本です。水彩画のような淡いタッチで優しい雰囲気です。登場人物は可愛らしくとても魅力的です。単純な線画のなかに温かな命を感じます。また、妻と死別した夫の思いを描いており、残された者たちへの命の継承を汲み取ることもできましょうか。人生の来し方を思う、それだけで大切な人や出来事が立ち現れて、悲しさだけではない前向きな気持ちになれます。
 本書では過去と今をつなぐ役割を”飴”が担っています。夢を飴という形で残して、他者と共有できるアイデアはとても面白いと思います。物語のなかでは”飴”ですが、”言葉”や”文字”に置き換えられるかもしれません。子どもの頃、「こんな夢をみた!」と親や友達と話したことがあったでしょうか。私は中年になった今でも、妻や子どもとみた夢について話します。
 歳を重ねても、楽しかった思い出はずっとのこしておきたいものです。今この瞬間も”飴”となっていくのかもしれません。未来に味わうその飴はどんな夢をみせてくれるのでしょうか。


本書表紙、自宅にて撮影

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