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フグタ社長業務日誌『偽か信か』

このシリーズは2007年9月~2008年9月まで1年にわたる、福田康夫総理の「首相動静」を基にしたフィクション(パロディ)です。※巻3は自2007年12月1日~至12月31日。

フグタ社長業務日誌(巻3-7):12月12日(水)

 「業務日誌」という割には、「ほとんど晩飯のことしか書いてないね」というご意見を頂戴した。もっともである。したがって、今日はしっかりと「業務」について余すところなく記すよう、秘書に強く指示した。

 午前7時47分、東京・野沢の自宅発。
 午前8時16分、出社。同18分、4階大会議室へ。海外営業強化会議に出席。始業時間前のいわゆる早朝会議である。
 私以下、社長室長、外務部、財務部、経済産業部、文科部の各取締役が出席し、「中東に対する海外営業強化について」との議題で議論。今後さらに貿易・投資上の関係強化等を図っていくことで一致した。

 午前8時54分、大会議室を出て、同55分、社長室へ。
 午前9時30分から同10時21分まで、資源エネルギー課長、経済産業部係長、産業技術環境局長からの業務報告。
 午前10時26分から同36分まで、情報企画室事務課長、生活局長と打ち合わせ。
 午前10時37分から同51分まで、科学技術担当役員、総合科学技術会議議員、社長室係長補佐から業務報告。
 同52分から同11時4分まで、消費者生活担当、生活局長。
 同5分から同37分まで、グループ本部の忘年会担当委員長、副委員長と余興の打ち合わせ。大阪支社の余興に若手のタレント弁護士を呼ぶことにする。

 午前11時55分、社長室を出て、同56分から同59分まで、大会議室前で業界紙各社のインタビュー。
 「きのうの金平堂との社長会談で何を話したのか」に
 「トップ会談というか経営者同士の会談。久しぶりだからゆっくりやろうということで、特にテーマも決めず、いろんな話をしました。経済や政治情勢も話しましたけどね」。
 午後0時、社長会議室へ。出前の弁当をかっ込んで同20分、同室を出て、同21分、社長室へ。

 午後2時26分から同51分まで、外務部アジア大洋州局長。
 午後2時57分から同3時27分まで、グループ本部の元忘年会幹事長と隠し芸の相談。
 午後3時28分から同46分まで、某有力企業名誉会長が来社、年末のご挨拶とのこと。
 午後3時47分から同4時28分まで、財務部長、事務課長、主計局長、理財局長。
 午後4時29分から同58分まで、次世代マーケット確保について少子化対策担当と調整。
 午後4時59分から同5時9分まで、本社への上納金の件で愛知県の代理店社長が泣きつきに来る。
 午後5時10分から同22分まで、農水事務課長から業務報告。

 午後5時40分から同6時23分まで、社長室課長と明日のスケジュール調整。もう少し予定と予定の間に余裕が欲しいと頼む。今日みたいなスケジュールだとおちおちトイレにも行けない・・。

 午後6時41分、社長室を出て、同42分から同49分まで、役員応接室前で業界紙各社のインタビュー。
 「今年の漢字に『偽』が選ばれたが、来年はどんな漢字の年にしたいか」に
 「どうも今の調子だとやっぱり『信』ですね。来年も信を追求しないといかんですね」。
 「近い将来、社員に信を問うことになりそうか」に「うまいこと言うね」。

 午後6時50分、退社。今日はどこへも寄らずまっすぐ帰る。同7時16分、自宅着。
 13日午前0時現在来客なし。以上。

※今日は省略なしで、しっかり書きました。尚、本日のタイトル「偽か信か」は「うそかまことか」と読んでください・秘書注。

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注:
日本漢字能力検定協会は、毎年1年の世相を表す漢字を募集し発表している。年末に京都・清水寺のお坊さんが大きな筆で、えいやッと書き上げる漢字である。ちなみに2023年の一文字は「税」であった。
2007年の文字は「偽」。圧倒的多数の得票で選ばれた。
理由は、産地、原材料、賞味期限改ざんなど相次ぐ食品関連の偽装問題。名門や老舗と呼ばれる有名どころの不祥事など、様々な業種で「偽」が目立ったこと。さらに(これはまあ毎年のことではあるが)政治がらみの数々の「偽」が相次いだことによる。
「偽」の影響は日本漢字能力検定協会にも及び、設立者らが法人の会計を私的に利用していたことが問題となり、理事長と息子の前副理事長が背任の容疑で逮捕される事件となった。「偽」恐るべしである。
※『フグタ社長業務日誌:偽か信か』は、ブログ『tanpopost』に2007年12月13日 付けで掲載したものです。


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