ケータイ女子
よしなしごと【気まぐれ選11】
出張でほぼ終電の「のぞみ」で東京から新大阪に帰ってきて、ほぼ終電の在来線に乗り継ぐ。車内は私も含めてほぼ疲れはてた空気で満ちている。そこに若い女性の場違いでテンションの高い声が響いている。
・・そうそう、そうなんや、いつも言ってる、
・・え、違うよぉ、あの人は新入社員の時からやねん・・
車内で誰かと話しているのかと思ったが、相手の声が聞こえない。
信じられないがケータイの会話だ。(注:2008年の日本である。携帯電話の会話はお控えいただいている)
・・それで、シミズ主任にずっと可愛がられてたんやけど、
・・なんでかなあ、急にスイス行くって辞めやったんや、
・・え、ごめん・・それでね・・それは違うわ・・
3駅ほど過ぎる間にほぼ彼女の社内事情は個人情報も込みで把握できた。
私は自分の降りるべき駅で電車を降りる。
まだ話声は聞こえている。
ホームを歩きながら振り返ると、そのケータイ女子も降りてきていた。同じ駅だったのか。ホームを小走りに、私を追い抜いてしゃべるしゃべる。階段を転げ落ちるように駆け降りながらしゃべり続ける。
・・で、その子が言うには、どうしようもないねんて、それで・・。
急にパタッ!と声が途絶えた。トイレに入ったのだ。話の続きが気にならないわけでもないが、出てくるのを待つ勇気もなく根気もない。
【よしなしごと0264・2008年4月 9日 (水)掲載】
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