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大垣で『奥の細道』を走る ” 旅先で『日常』を走る ~episode19~ 岐阜編 ”

前回のあらすじ

敦賀で『他者の日常』を走る

” 自分と他者の日常がオンラインで常にシェアされる。そして、時にはふたつの日常がオフラインで重なりあい、互いの日常の解像度がより一層高まっていく。これは、とてつもなく豊かなことではないだろうか? "

大垣で『奥の細道』を走る

名古屋のベッドタウン。
岐阜に対して私が抱いていたイメージはこれに尽きる。あながち偏見ではないと思う。なにしろ私は2005年度の一年間、名古屋で暮らしていたことがあっての印象なのだから。
一方、「岐阜県といえば」というお題で私がまず思いつくのは、県庁所在地や市街地ではなく飛騨高山や下呂温泉といった観光地だ。私が仕事以外ではじめて岐阜県に足を踏み入れたのも、この地域である。

2016年12月、私は転職をすることになり、有給休暇を消化していた。当時48グループ(AKBとか)の劇場公演にハマっていた私は、ここぞとばかりに全国各地に点在する各劇場の公演に応募しまくっていた。ちなみに当時の倍率はAKBで三桁、地方グループでも軽く二桁はあった。そのような状況下で、なんと奇跡的に『中二日』で名古屋のSKE48と大阪のNMB48の劇場公演を立て続けに引き当てたのだ。さっそく名古屋から大阪まで三日かけて移動する旅程を組んだ。
当時は映画『君の名は。』が社会現象になっており、ご多分に漏れず私も4回ほど映画館で鑑賞していた。聖地巡礼なることを一丁やってみようかと思い立った。いざ飛騨高山へ。

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こんな感じで高山観光を楽しみつつ、甥っ子が高校受験というタイミングもあったので、三葉の実家である神社のモデルである『日枝神社』まで出向いて、合格祈願のお守りを購入した。

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また、以下の通り飛騨の白壁土蔵が立ち並ぶ街並みや、下呂温泉の柔らかな湯質を堪能した。

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ちなみに甥っ子は第一志望の高校に無事合格した。やったね。

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時は変わって2019年9月、私は再び岐阜県に降り立つことになった。

たびたび48グループの話になり恐縮ですが、当時私が全力で推していた沖田彩華という名の(元)アイドルが、卒業一周年を記念して大阪でライブを開催する運びになった。なにしろ一年ぶりに彼女が舞台に立つのである。もちろん私は東京から参戦することにした。
業務上の都合により、滞在は一日半となった。当時の私は『日本全国47都道府県を走る』ことに燃えており、東京から深夜バスで京都に向かい、そこから →奈良(ラン)→大阪(ライブ)→滋賀(ラン)→岐阜(ラン)→名古屋(ナナちゃん)→東京(仕事) というかなり無茶な旅程を組み、決行した。

上記の通り決行したのだが、この無茶な旅程の中で最もとばっちりを食ったのが岐阜であった。前日宿泊した滋賀県から新幹線に乗車する名古屋へ移動する道中で途中下車し、滞在60分という制限下で無理やり走ったのである。
岐阜駅を降りると急いで公衆トイレを探して着替え、コインロッカーに荷物を預けてバスに飛び乗る。長良川沿いのバス停で降車し、河川敷に降りる。

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『高橋尚子ロード』 かのオリンピック金メダリストが常に走っていたコースを走った。河川敷に敷設された陸上トラックにスタート(&ゴール)地点があった。走り出して数百メートルも進まないうちに舗装は消え、ダートに変化した。土とはいえ、かなり踏み固められた路面であり、走りやすい。快調に進む。
ただし電車の時間の都合があるため、1.5km地点で折り返すことにした。結局、計3kmのランとなった。

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さすがにこれではあまりにも岐阜に失礼なので、もう一度岐阜を走ることにした。幸いにも隔週で京都出張をしているので、このついでにもう一度岐阜を走ろうと計画を練ることになった。奇しくも去年と同じ時期だ。詳細は後日noteにアップするが、せっかくなので岐阜県だけではなく滋賀県と奈良県も走ることにした。

2020年9月20日、私は京都から電車に乗って滋賀県甲賀市信楽町にある美術館『MIHO MUSEUM』に向かっていた。そこに収蔵されている美術品に興味があったというよりも、その建築物や敷地内のレイアウトなど『場』としての存在に興味を持ち、足を運ぼうと思い立ったのだ。道中「少し予習しておこうかな」とスマホでMIHO MUSEUMのサイトを開いた。そこで初めて明らかになった衝撃の事実が!

なんとチケットは予約制であり、今日の分はすでに売り切れていたのだった。

動揺せざるを得ない緊急事態だ。しかし旅慣れた私は焦ることなく、その場で翌日のチケットを取り、次の駅で電車を降りた。ホームのベンチに腰掛けて「さて、今日のこのあとの予定はどうしたもんかな?」と策を巡らす。本来明日は午前中に長良川の『高橋尚子ロード』を、今度こそはフル走破してやろうと計画していたのだった。
しかし実は今夜、福井県敦賀に行かなければならない用事がある。とても大事な用事だ。人と約束をしているのだ。岐阜まで行って走ってから敦賀まで移動するルートを取ると、岐阜滞在は90分くらいになってしまう。岐阜駅から長良川まではバスで片道10数分といったところで、『高橋尚子ロード』の往復5kmを走る時間やバスの待ち時間や着替える時間などを勘案すると、かなりタイトなスケジュールになる。違うルートを検討した方が良さそうだ。

いつも地方の土地を走るときに参考にしているサイトをいくつか参照する。関ケ原・木曽川・揖斐川etc… ただ走れればよいわけではなく、走ることによってなにか得るものがあったり、楽しみを見出せなければ意味がない。このことは、前回岐阜を雑に走ってしまったことに対する反省点として持ち帰った教訓だ。さあ、この状況下でどこを走るのが最適解なのか?

奥の細道むすびの地

ん? 松尾芭蕉が俳句を詠む旅をした奥の細道とは東北地方ではなかったっけ? 調べてみるとそんなことはなく、芭蕉が奥の細道の旅を終わらせた地がまさに岐阜県大垣市であったのだ。
折しも私が所属するPLANETS CLUB内で俳句(しかも芭蕉世代の)がちょっとした盛り上がりを見せていたこともあり、これは大垣を走るしかない! そう確信し、私は上り方面の新快速に飛び乗った。

14時過ぎに大垣駅に到着した。すぐに走ろうかとも思ったが、私はまだランチをとっていなかった。とりあえず食事からにしよう。さっかく中部地方に来たので、名古屋名物『世界の山ちゃん』で ↓ のような「名古屋名物ぜんぶ乗せ」的なメニューをオーダーし、堪能した。

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腹ごしらえが済んだところで、さっそくトイレで着替え、荷物をコインロッカーに預け、入念に準備体操をして走り出す。

駅前ロータリーを抜け、商店街を進む。地方の商店街は日曜日に店を閉めるパターンが多いが、ここは珍しく営業している店舗が目立った。頃合いのよいところで右折する。ここから水門川沿いを走るかたちになる。

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街中の川にしては水質がきれいなように感じた。市街地から一本入っただけで閑静な雰囲気になり、所々に木が植えられて、心なしか空気も澄んでいるような気になる。
道なりに左折すると遊歩道『ミニ奥の細道』に合流した。路面が整備されており、とても走りやすい。おろしたてのシューズがクッション強めなこともあって、まるで雲の上を走っているような感覚を感じる。学校からの帰り道をスキップしながら進む小学生のような感覚を久々に思いだした。
1kmほど進むと『奥の細道むすびの地』に到達した。

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突発的に決めたランだが、思いのほか充実したひとときだった。
完。

というわけには行かない 笑。奥の細道はここで終わっても、私のランはまだ続くのだ。この道の先を道なりに右折し少し進むと『奥の細道むすびの地 記念館』が現れた。せっかくだから休憩がてら、ここに入るとしよう。

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なんと、この一帯は『聲の形』のモデルになった場所らしい。今知った。
京アニが製作した映画を数年前に観て、しばらくいろいろと考えさせられた良作だ。ちょっとした聖地巡礼もしていこうか。

再び走り続けると、200mくらいで聲の形の聖地である『美登鯉橋』に到着した。

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思ったより短い橋だった。この橋から飛び込んだり、この橋でストーリーが動くようなあれこれが起こったんだな。
おっと、あまりゆっくりとはしていられない。私に残された時間には限りがあるのだ。また走り始めよう。

橋を渡りしばらく進んだところを左折して、しばらく進むと大垣公園に至った。

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公園の端に『大垣城ホール』なる建物を発見した。外から観察するになかなかの廃墟感だ。大阪城ホールと一文字違いなのに。
公園に入ると、家族連れを中心にかなりの賑わいを見せていた。ベンチに腰掛けたり、芝生にテントを張って寝転んだり、バドミントンやキャッチボールに興じたり。衰退しつつある地方都市にしては珍しい賑わいだ。

公園を走り抜けると、そこに大垣城がそびえていた。

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塀の中に入り坂道を登り、天守閣の前まで進む。大垣城の沿革について記された碑を見つけた。どうやらこの天守閣は昭和20年の空襲で焼失し、戦後に再建されたものらしい。天守閣には登らず坂道を下った。

大垣城を後にして、大垣駅に戻る。ただ最短距離を辿るのもつまらない。まだ走り足りない感もある。幹線道路に出て、逆時計回りに駅に戻るとちょうど5kmになる算段だ。ここからはペースアップして進む。

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なかなかの廃墟感があるロケーションだった。線路の手前を左折して駅に向かう。駅まであと500mくらいの地点で思いがけないものに遭遇した。

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ああ、ここが起点だったのね。

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突発的に決めたランだが、思いのほか充実したひとときだった。街中に廃墟が点在しているのが気にはなったが、大垣公園を中心とした市街地は活気にあふれ、奥の細道関連もしっかりとお金を掛けて整備されている様子が見受けられた。岐阜県の中でも、西濃地域は比較的景気が良いらしい。名古屋をショートカットして三重県の工業地帯と繋がれる立地が功を奏しているのだろうか?
都市と都市の間に挟まれ、新幹線が停まらないくらいの規模の土地にも、実際に降り立ってみると意外な発見があるのだと感じた次第である。

今回は『君の名は。』『オリンピック』『奥の細道』の三題噺でお送りしました。以上!

次回予告

滋賀で『廃墟』を走る

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