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クリスマスの感動がうすれてきた6歳娘の成長がうれしい

こちらは、「稀人ハンタースクール Advent Calendar 2023」に参加するために書いたエッセイです。カレンダーをクリックすると、「クリスマス」をテーマにした書き手のnoteを見ることができます。

クリスマスを迎える6歳娘のテンションが、1年前、2年前よりも低い。

去年は毎日のようにサンタさんのために折り紙を折り、その前の年はクリスマスツリーを見ては「いまサンタさんはどこにいるのかな?」と尋ねるなど、クリスマスに対する圧倒的なわくわく感を表現していたのに、今年はクリスマスに向けて特別な振る舞いをしない。

クリスマスツリーの準備をする時も手伝いに来なかったし、飾りつけも作業のようにとりあえずつけるだけだった。

唯一反応があったのは、クリスマスツリーを使って、邪念樹に取り込まれた戸愚呂兄のまねをした時のみ。クリスマツリーに絡まれながら、「くそォォ なぜだ〜……」と苦しそうな声を上げたら、「ひゃひゃひゃひゃ」と笑っていた。やはり富樫は神。メリー・クリスマスではなく、メリー・トガシマスと祝った方がいいのかもしれない。

『幽遊白書』 15巻

一応、ほしいプレゼントを尋ねると「プリンセルエルちゃん!」とハイパークリエイティブアニメ「ひろがるスカイプリキュア 」のおもちゃを所望する声が返ってきた。

とりあえずはホッとしたが、すぐに「もう6歳だから!」と意味深な言葉を付け加えてきて、「おっ、おう」と結局モヤモヤした気持ちになった。

もしやクリスマスの真実に気づいてしまったのだろうか……?

こういう場合、つい真意を確かめたくなる。

ある日の晩、「サンタさんは空飛ぶ練習しているのかな?」「サンタさんが来たら、一緒にプレゼント奪おうか?」とクリスマスの話題に持っていこうと試みた。

しかし、返答はなし。娘は、瞬きもせずにおしり探偵を映すテレビを凝視し続けるのみだった。その様子を見た妻はチッと舌打ちを鳴らして「ふー」とため息をついていた。なにか深い陰謀のようなものが家庭内で渦巻いている気がする。

陰謀がなくカラリと晴れていた去年のクリスマスに食べたメシ

別の日に妻に意見をうかがうと、光るクリスマスツリーを見ては「ただの電球」と評する冷たい心臓を持つ妻らしい回答を得ることに成功した。

「クリスマスは、サンタさんがいようがいまいがプレゼントをもらうための日。現実を知るのがいつかはわからないけど知らないふりを続けないと。わたしは6歳の時にはサンタさんがうさんくさいと思っていた」

さすが! 子どもの頃からクリスマス・キャロルに出てくるスクルージみたいに疑り深い……!

ちなみに、クリスマス・キャロルとは、1843年にイギリスで出版されたクリスマスを題材とした小説。カネにがめつい主人公のスクルージが現在・過去・未来を旅をしながら心を改めるという話で、めちゃくちゃ感動する名作だ。

その中で、「外部の暑さも寒さもスクルージには影響を及ぼさなかった」という文章があるのだけど、普段なにごとにも動じない妻を見ては、「季節のイルミネーションもイベントも彼女には影響を及ぼさないかった」と心の中でナレーションをしている。

この日の回答を聞いた時も、パッとこの言葉が思い浮かんだ。カネにがめつくないのに、冷え切っているという部分で共通するのはすごい。

でも、妻が言わんとしていることはなんとなくわかる。自分の過去を振りかってみると、6歳くらいからクリスマスの幻想は薄れていった記憶がある。

それまでは、「サンタさんと目に見えないコミュニケーションを取り、想いを馳せる」ことを楽しんでいた。

でも年長くらいになると、1年に1回しか貰えないゲームに喜び、友達の家で集まって遊ぶことがクリスマスの醍醐味に変化していた気がする。ゲームを貰い、その喜びを誰かとわかち合うという体験が大切だった。

サンタさんとのイベントに対する想いの比重はどんどん減っていった。

小学6年生の時に、父親がいきなり部屋のドアを勢いよく開けて、「サンタさんは終わりだ!」と討ち入りみたいにクリスマスの閉幕を宣言した時も、「なぜ、この人は鉄砲玉みたいな話し方を……?」と疑問に思ったものの、クリスマスプレゼントがもらえなくなること自体には、納得だった。

ただ、その後、「来年からおばあちゃんの分だけでもお年玉をくれ」と言った時に、「それは無理だ」と断られたことには、納得できなかったし、いまでも納得していない。

よくよく考えると、娘もサンタさんへの想いが減ってきた時期なのかもしれない。

以前は、家庭と保育園の世界しかなかった。見るアニメもひとつ、ふたつだったし、絵本も読めなかった。いまや友達もできて、アニメも3つ、4つ見るし、児童書も自分で読もうとする。保育園でみんなと太鼓を演奏するイベントが12月にあるので、それも楽しみにしている。

世界が広がり、日常の楽しみが増えた分、クリスマスやサンタさんに対する想いへの比重が減っているのかもしれない。そう考えると、娘がサンタさんを信じているかどうかはどうでもいいように思えてきた。

これからは自分の世界を広げていってほしい。

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